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【連続note小説】日向食堂 小日向真司22 歳

歳之は国立大学の法学部にパスした。
真司は自分のことのように喜んだ。
文枝は歳之からの朗報を聞いて、床に跪いてうれし涙を流した。

何としても無事に歳之を卒業させなければならない。
あと4年。
気が遠くなる思いがしたが、真司は自分の青春の全てを投げ捨ててお金の工面をした。

この年、高校の同窓会が開かれた。
真司はお金がなかったから、飲み会には参加せずに顔だけ出した。
そこまでして同窓会に行こうとした理由は一つだけ。
立花あおいに会いたかったからだ。

旧友たちは真司の事情を知っていたから、またカンパして飲み会に連れて行ってくれた。
真意は後ろめたい気持ちがあったが、それに甘えた。
居酒屋でおあいの隣の席に座ることができた。
この時を4年も待っていた。
二人はスケートに行ったときのことや真司が真冬に短パンで体操をしていたことなどいろいろな思い出話をして、楽しい時間を過ごした。

“この時間よ、終わらないでくれ”
真司は心の中で願い続けた。
しかし真司には文枝を支え、歳之を卒業させるという責任がある。
心の奥に秘めた言葉は最後まで言えなかった。


▼関連エピソードはこちら

真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く…>

<前回のお話はこちら>

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