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【連続note小説】日向食堂 小日向真司21歳

「兄ちゃん、おれ大学に行きたい」
歳之がおもむろに言い出した。
「いいじゃないか、頑張れよ」
「すごくお金がいるんだ、うちにお金ないよな」
「お金なら何とかするよ」
真司は安直に答えてしまったが、この時一体どれほどのお金が必要なのか知る由もなかった。

後で聞いたことだが、不良仲間と縁を切った歳之は猛勉強をした。
成績はどんどん伸びて、高校での成績は群を抜いていたらしい。仕事に追い回されて、弟の学校の成績のことまで気にかけてやることができなかった。
歳之もそれがわかっていて、何も相談できずにいたが、さすがに真司に黙って大学を受験するわけにはいかなかった。

真司の安月給と文枝のパート代を併せてもたいした額にはならない。
真司はどうすればいいのか考えあぐねた。
“たかがお金のことで夢を諦めさせるわけにはいかない”
“歳之が立ち直ってここまで努力したんだ”
真司は文枝にそうしてもらったように、一心不乱に働こうと決意した。


▼関連エピソードはこちら

真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く…>

<前回のお話はこちら>

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