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1年で300日ガッツリ着れる。Gジャンを推す3つの理由

 人生の半分以上、趣味も仕事もアメリカン・ヴィンテージ・クロージングとその復刻にドップリ。それでも過去、Gジャン=デニムジャケットは何となく「しっくりこない」と避けてきた存在だった。そんな僕が気づけばこの1年、盛夏を除く300日以上Gジャンを着倒している。いったい何が僕を「Gジャン愛」に駆り立てるのか。

昨今のGジャン事情

 ここ数年の間で、Gジャンの価値が見直されて、間違いなく認知度が高まってきている。その発端はやはり古着業界から始まった、ヴィンテージ・ジーンズへの回帰。’90年代のヴィンテージブームと少し様子が違うのが、ジャケットに対しても研究のメスが入り、当時よりも造詣が深まったことだろう。メインストリームはやはりリーバイスで、コアなマニアが所蔵するヴィンテージピースを集めた書籍までが発行されている。

 ちなみにこの書籍の初版が出版された当時、リーバイスから記念モデルとして「S506XXE」のサイズ46インチが限定発売され、それをさらにキム〇ク様がCMでお召しになったおかげで、トンデモないプレミアムアイテムとなってしまった。結果として一般のファッション市場でもGジャンの人気が再浮上して、古着ギョーカイ➡復刻ギョーカイで盛り上がったところで、ファストファッションギョーカイがマネタイズするのはいつもの流れ。まあ、認知度が高くなるということはハードルが低くなるということなので、Gジャンの良さを知ってもらうには絶好の機会、とポジティブに捉えよう。

Gジャンの消極的な要素をポジィティブに変換する

 認知度が高まっているとはいえ、Gジャンを着こなすのはなかなかに難しい、というのがこれまでのイメージ。確かにプロダクトとしてのデザインはすこぶるカッコいいし、歴史的な背景もそそられる。程よく色落ちして陰影が増したGジャンの佇まいもイイ。じゃあGジャンの何が着こなしを難しくさせるのか。そこを炙り出すと同時に、ポジティブに変換するメソッド、そして押さえておくべきポイントを講じてみようと思う。

1.デニム上下のセットアップがダサい

 世代にもよるが僕の場合は子供の頃、デニム・オン・デニムが眩しかった世代。それがティーンズになる頃には「前時代的なダサいコーデ」の代表格となり、ギャグのネタにまで落ちぶれていく姿をリアルタイムで見てきた。特にウエスタン系に振ってしまうと生キャラメルなあの人、とステレオタイプなカントリーマン路線に。仮にテンガロンハットを被らなくても、緯糸まで染まってベタなデニムでセットアップしてしまうと、その空気は淀んで周囲を重苦しくさせる。

➡解決策:挿し色イでカントリーマンを回避!


デニムのセットアップは「昭和のカントリーマン風味」を払拭することが必須だ。被りモノはニットキャップ、Gジャンのインナーには挿し色の赤や黄色をベースとしたプリントTシャツで、スケボーでもやってそうな西海岸ヴィンテージ兄貴の空気を放出してみよう。足元もヴァンズの赤スニーカー、オニツカなら黄色がベスト。ブーツを履くなら絶対的にウエスタンブーツは避け、スウェードのペコスあたりで力を抜きたいところ。要は昭和のフィルターを介したウエスタン調にキメてしまうのが一番アウトなのだ。

2. 春と秋しか出番がない


 Gジャン、ジージャン、デニムジャケット、ジーンジャケット…と呼び名はいろいろあるけれど、デニム生地を切った貼ったで縫い合わせた上着。ライニング(裏地)はないのが定石だ。冬用にブランケットライニング付き(後述)も存在するが、こちらもヘヴィーアウターと呼べるほどの保温力は期待できない。ゆえにアウターとして、春と秋の短い期間しか活躍できない=いらない、となる。

➡解決策:Gジャンの役割りはアウターだけじゃない

 Gジャンをアウターとして扱うなら、その活躍のピークはちょうど今頃。長袖サーマルの上にスウェットシャツやスウェットパーカ、ワーク系ネルシャツのレイヤリングが限界値と言える。本来ならここで「来春までバイバイ」だが、これからの季節はGジャンの下に着て、ミッドアウターの役どころを与えると、水を得た魚のように活躍してくれる。初冬は長袖Tシャツの上に着てその上からレザー系フライトジャケット、本格的な冬はN-1デッキジャケットやピーコートなどのヘヴィーアウターを。ヒネリを入れてハリスツイードのハンティングジャケットの下にもイケる。僕の場合はほぼ手持ちのアウターのレイヤードに対応できる万能選手になるというわけ。ボトムスはいつもの5ポケットジーンズでOK。

 他にもミッドアウターと化したGジャンが万能だと言えるのは、たとえば私服で働ける環境なら温かいアウターを脱ぐオフィス空間や、カフェで読書やレストランでの食事などやはりアウターでは動きづらく、かといってインナーでは心もとないシチュエーションでサマになるっていうこと。

3. デニムのセットアップは色合わせが難しい


 デニム・オン・デニムのカントリーマン化を回避できたとしよう。次に立ちはだかるのは、Gジャンとジーンズの色味が合わないという問題。1年穿き続けて良い感じに色落ちしたジーンズと昨日買ったばかりのGジャンは壮絶的に合わない(画像はその逆で、Gジャンは1年半着たものだけど、ジーンズは穿き始めて1ヶ月)。またジーンズの方が歩いたり腰掛けたり、ポケットの中身を出し入れしたりと運動量が多く、また男子ならソソウもあるので洗濯の頻度がおのずとジージャンより多くなる。ゆえにデニム上下の色落ち格差は広がりこそすれ、歩幅が揃うことは難しい。

解決策:リジッドのGジャンを冬から育てる

 最良なのはリジッド(未洗いもしくはワンウォッシュのインディゴブルー)のGジャンとジーンズをよーいドンで同時に着用し始める。重要なポイントは、なるべく同じブランドでセットアップとして作られたモノ同士、要は同じデニム生地を使っているカップリングで始めること。先にも述べたがGジャンの色落ち速度はボトムスのジーンズより遅い。その速度を可能な限り近づけてくれるのが、2で述べたレイヤード。着る機会が増えることはもちろん、脱ぎ着のアクションやヘヴィーアウターとの摩擦が加わるので、色落ちのスピードが加速するのだ。これにより、ジーンズと洗う頻度がより近くなる。ジーンズは洗わずともニオイがさほど気にならない(気になるレベルは相当汚いわけだが)が、Gジャンは顔に近い分、ニオイも気になる。ある程度のアタリが出るまでは頑張りたいが、それ以降は頻繁に洗うよう心掛けたい。その作業を繰り返せば、再びアウターモードになる春頃にはこなれた色合いに育っていることだろう。

今買うならズバリ、なGジャン2択

 以上を踏まえたうえで、盛夏を除く300日をともに過ごす万能ワードローブとして選ぶべきGジャンのカタチ。オーセンティックであることが絶対条件だ。オリジナリティを出そうとして妙な装飾や意匠を加えた流行モノを選んでしまうとハズしのつもりが本当にハズれてしまった時に恥ずかしい。

 ではオーセンティックとは何かと突き詰めれば、デニム三大ブランドと呼ばれるリーバイス、リー、ラングラーに辿り着く。中でも狙い目はリーバイスが確実。リーバイスには大別して4つのタイプが存在する。1st.と呼ばれるLot.506XX、2nd.と呼ばれるLot.507XX、3rd.と呼ばれる557XX、そして4th.と呼ばれるLot.70505だ。以上の4モデルはいずれも過去のモデルで今やヴィンテージとして高値で売買されているため、古着マニアの領域。これらのオリジナルモデルを忠実に再現した、復刻モノを入手することを基本としたい。

その中でも1st.=Lot.506XXと4th.=70505は、今回あえて除外する。

1st.=Lot.506XXはGジャンのパイオニアとして、個人的には押さえておきたい1着だが、背面にサイズを微調節するバックルバック=尾錠が装備されている。これがヘヴィーアウターの下に着た場合、そのライニングと擦れたりバックルの針が刺さったりすることでダメージを与えてしまうので候補から外した次第。また4th.=70505は、3rd.=557XXのデザインはそのままに着丈を長く改良したモデルで、やはりレイヤードした際にヘヴィーアウターの裾から盛大にはみ出てしまうのがいただけない。

上2枚が1st.=Lot.506XX 下の1枚はLot.70505
両者ともヴィンテージだ。出典ともに:https://acorn-vtg.com/

 その結果、2nd.=Lot.507XXと、3rd.=Lot.517XXの復刻モノの2タイプが本丸として注目株となる。

2nd.=Lot.507XX

戦後の新時代を象徴するデザインとして、1952年に1st.のアップデート版として登場。バックルバックが廃止されてサイドにボタン留めのアジャスターを装備。胸ポケットが左右対称となる。ちなみに今回撮影したのは以下の復刻モデル。SNSを介して海外から人気が広まった逆輸入的なTCBの2nd. は、企画だけでなく裁断と縫製を自社のファクトリーで行うため、復刻ブランドの中ではコストパフォーマンスにも優れている。色落ちの良さは上の画像から見ても抜群なのだ。

3rd.=Lot.517XX

2nd.よりさらに時代が進み、ジーンズとともにGジャンが作業着からデイリーウェア、そしてファッションアイテムへと変貌していく時代に合わせ、1950年代後半に登場。身頃にV字状の切り返しを設けたデザインは、現在多くのファッションブランドが範とする完成度の高さを誇る。以下に紹介するWAREHOUSEの復刻モノは古着のリアルな色落ちを追求してユーズド加工を施したもの。最初から良い色落ち感で着れるのは忙しい人に福音となるだろう。このリジッドモデルも存在しており、糸の組成・染色から生地を織る旧式織機、インチ設定のミシンに至るまでヴィンテージを再現している。

まとめ

 いかがだっただろうか。以上のメソッドとポイントを押さえるだけで、ここまでGジャンが使い勝手の良いワードローブになるので、ぜひ1着手に入れて実践してみてはいかがだろう?

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