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女子大生が1人でスーパー銭湯に行ったら人生が明るくなった話

心が疲れていたのだろう。

私はどうしても、温泉に行きたい衝動に駆られていた。

狂ったように温泉宿を調べ漁り、箱根草津に魂を飛ばす日々。

しかしどうしても超えられない壁があった。

それは私が永遠の金欠であるということだ。

車校、スマホ、歯列矯正、全て自分で払っている身としては箱根で湯に浸かっている場合ではない。1秒でも働け、という状態なのだ。

箱根は諦めた。

仕方がないのでスーパー銭湯に行くことにした。

小学生くらいまでは家族とよく行っていたけれど、もうかれこれ6年くらい行ってない気がする。

着替えをリュックに詰め、少しのワクワクを抱えて銭湯に向かった。

銭湯にて

大きめのリュックを抱えたすっぴんの女子大生はスーパー銭湯の施設に入った。

玄関でお風呂上がりの見知らぬおばあちゃんとすれ違う。

平日の昼間だし、人も少ないだろう。

意気揚々と衣服を脱ぎ捨て銭湯に足を踏み入れたところで、その考えが間違っていたことに気づく。

大きめのお風呂、小さめのお風呂、露天風呂に至るまでおばあちゃんで埋め尽くされていた。

Wow……

そうか、おばあちゃんは平日の昼間が1番活動的だと何かの文献で読んだことがある(?)

少しだけしょんぼりながら体を洗った。

体を洗い終え、湯に浸かる。

まるで鴨川名物等間隔カップルかのように同じ間隔を開けて座るおばあちゃん達に混ざり、端にちょこんと陣取った。

人が多すぎて、リラックスどころじゃないなあ。

体育座りで縮こまりながらしばらくそうしていた。

露天風呂にいこう。

立ち上がり外に目をやると、奥の方に一箇所だけおばあちゃんが1人たりともいない湯があった。

なんであそこだけ空いてるんだろう、私にしか見えてないのか?

疑問に思いつつそこに向かう。

割と大きめの湯なのに、本当に誰もいない。

では、思う存分1人で満喫してやるとしよう。

肩までつかり、ふうっ、と息をつく。

しばらく木々の擦れ合う音や鳥の声に耳を傾けてみる。

「……ふふっ」

声に出して笑ってしまった。

なにやってんだ、私。

おばあちゃんに紛れて、平日の真っ昼間に1人で銭湯にくる女子大生。シュールすぎるやろ。てか病みすぎやろ。

この状況がどうしたって面白くなってしまったのだ。

そういえば銭湯にくる前、妹に「1人で銭湯行くわ」とラインで送ったら「草」だけ返ってきた。

確かに草だわ。

状況の面白さにニヤニヤしながら湯に浸かっていると、病み成分が溶けて無くなっていくような感覚があった。

生まれて初めてのサウナ

湯に浸かってなんだか気分が良くなった私は、生まれて初めてサウナに入ってみることにした。

大海原へ大冒険に出かけるルフィばりのワクワクした気持ちを抱えて、平日の真っ昼間にサウナへ入り込む女子大生。

実に面白い。

「サウナは大人が入るもの」というイメージがあったので、恐る恐る足を踏み入れる。

小学生の頃は熱くてすぐに逃げ出してしまった記憶があるけれど、むしろ気持ちがいい温度だと感じることができた。

大人になったなあ。

……おっさんになったのか?

まあいい。

とにもかくにもノリノリでサウナに入った私。

外に出たらおばあちゃん達の真似をして水風呂に入ってみたりもした。

その後

暗い気持ちも後ろ向きな考えも、全部お湯に溶かしてサウナで汗にして、スッキリした。

超・ご満悦。

ニコニコしながら髪を乾かす女。普通ならTwitterに「やばいやついたwwwww」と晒されてもおかしくないが、ここはスーパー銭湯。おばあちゃんしかいないので問題ない。

心が軽い。宙に浮きそうなくらい。

鼻歌を歌いながら、家に帰った。


あれから1ヶ月が経った。

不思議なことに、スーパー銭湯に行った日から気分が全く落ち込まない。毎日病んでいた日々が嘘みたい。

宇宙まで飛んでいった心が、ゆっくりゆっくり戻ってくるみたいに。ずうっと心が軽いまま、少しずつ落ち着いてきている。

スーパー銭湯がこんなにも心を軽くしてくれた理由。

単純に気持ちが良くてリラックスできたからというのもあるけど、1番は「繰り返しの日々を一歩踏み外れた」からではないかと考えている。

毎日毎日パソコンに向かって課題して、課題が終わったら記事を書いて、一歩も動かない生活。

そこから踏み外れて違うことをした。

「スーパー銭湯に1人で行った」

たったそれだけのことだけど、自分の部屋に引きこもっていた私にとっては大きな変化で、大冒険だった。

大冒険から帰ってきたルフィは、部屋で引きこもって病んだりしない。

知らんけど。












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