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吾輩はP患である

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精神治療の徒然。
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信仰のほどよき温度感

朝ドラ「虎に翼」がおもしろかった。 「法律はそれ自体がきれいな水が湧く源泉。そこに余計な色をつけたり混ぜたりしないように守るのが法律家」 といった寅子の言葉。 これって、宗教の経典でも言えることで、確立された経典を一言一句一切曲げてはいけないという規定がある。 キリスト教だと新旧約聖書。 牧師は聖書解釈がズレないように、聖書を読むために当時の歴史とか神学とか脈々と変遷していった哲学とかめっちゃ色々学んでその上で咀嚼して信徒に教える。 で、信徒は何をするかって言ったら、

精神の支援者が遠い?

「傘を差し掛けてくれる支援者より、一緒に雨に濡れてくれる支援者が良い」。 そんなtweetを見かけることが続きました。 私は ここについたいいねの数の多さに、治療者が自分の安全圏にいることに 違和感を感じる患者さんが多いのなのかなと感じました。 もちろん色んな場合があるのはよく分かります。 前提に そのぐらいの心の温かさがないとできない仕事であるし、職によっては「これが精神医療の支援者か?」と思われるようなハードな対応をする人もいるのは事実でしょう。 ただ、私は 心の温か

やっとやる気になってきた

今日はこちらのアーカイブを視聴しました。 素人の私にとってはボリュームたっぷりなので、申し込んでからずいぶん時間がかかりました。 患者が聞くべき内容ではないかもだけど、漫画描くためにも当時の自分の病状やカウンセラーの対応について振り返りたかったので。 あ あと一応対人援助職の経験者でもあるので… ただ患者として申し込んだわけでは…ないぞ…? 北川先生の講義は精神分析の歴史をしっかりたどって下さるのがおもしろいです。 それを踏まえての現代の治療の実際や押さえておくべきポイント

漫画を描くっていうことは…

これまで一応 漫画や小説を描いたことは…ある。 高校時代 当時珍しかった新選組のヲタだったんだけど、楽しめるコンテンツが少なかったので、歴史小説を自分好みに漫画に起したりしていた。 要は2次作。 あと学部の友達をモデルにして ふざけて書いたSFとか。 仲間内で話題になって結構楽しかったんだけど、「自分」は絶対登場させなかった。 オリジナル作品を書かなかった訳じゃない。 書こうとはした。 でもどんなに架空の物語を作っても「自分の心」が投影される。 それが嫌でたまらなかった。

一言で「毒親サバイバー」と言っても

私は毒親サバイバーの仲間を捜し求めてずっとずっとさまよっていた。 自助団体。 SNS。 デイケア。 地域のサポート支援。 私はどこにも属せなかった。 毒親育ち同士、互いに共感する仲間に恵まれる人もいる一方で、規格外の苦労をしながら自我を保っている奇跡のような人もいる。 そういう人はまるで人生そのものが人体実験のようで、 その人の経験からしか語れない、毒親育ち特有の回復フローを伝えてくれる。 こういう情報は治療者からは開示できない。 私の場合はそういった人たちとは全く

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不安神経症

子どものしもべ

心理学というものを知ったのは、もうかれこれ30年前。 「りんごちゃん、頑張れば読めるでしょ?」 といって、若い牧師から何冊か心理学や哲学書みたいな本を渡された。 上っ面だけでも聖書はとうに読破して何巡目かではあった。 宗教の話でなければ会話にならない子どもだったともいう。 安定した友達は6年生になる頃には1人もいなくて、かろうじて繋がりがあったのは教会だけだった。 牧師先生はよく分かっていた。 この子は普通の会話ができない。 逆に神様や心の話なら他の子よりはるかに深く会話で

毒親は単体で毒ではなくて…

毒親ってなぜか周囲の人間も毒に加担する構造になる。 毒親自体が、対人関係に境界線のない付合いをする。 それに耐えうる人々や元々ニーズが合う人々なんかと共依存になって、コミュニティを発展させる。 境界線のない付合いなんか、通常小規模にしか成立しない。 しかし、大規模な共依存国家を成立させてしまえるパワーと能力があるのが毒ファミリーなのだ。 子どもにとったら、実際の世間という助けに手を伸ばすまで、ものすごい距離がある。 正に城壁が出来上がるのだ。 私の実家的には、キリスト

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Der.毒母ちゃん-複雑性PTSDを少し-

ジャニーズのタレントへの心のケアの本質を精神科患者が考えてみた

私はジャニーズファンではない。 だから、ジャニーズの社名がどうとか、グループ解散がどうとか、そういうのは全然関係なくて、タレントとしての土台である個人が元気で幸せな状態って何かなと思って考えてみたくなった。 トラウマのある人々トラウマのない人というのも普通にいないんだけど、ジャニーズはとりあえず性被害者の救済が大きな部分として注目される。 はっきりと深刻な症状がある場合、しっかりしたトラウマ治療のためのお金と時間をがっつり補償してあげてほしい。 そうすることで、自分を回復さ

先生と呼ばれる毒親を持ったとき

毒親からの脱却はこのところ盛んで、SNSを通じても色々な場所から確かな助けを求めやすくなってきた。 良い時代だ。 だけど、いくら良い時代になっても、脱却に踏み出せない人たちもたくさんいる。 明らかにひどい目に遭っていて、助けが必要だと自覚していながら助けを求めきれない人たちは、いくら輝く光を指し示してもつかむに至らない。 とはいえ大切なのは、今その人達が生きるために必要な状況のバランスであって、その人が求めた時、求めた人がベストなんだと思う。 たとえ、効率は悪くても、その

患者というアイデンティティ

診察室と社会の間にある崖は簡単に人を死なせる。 こんなに社会に嫌われてるのは私だけかも知れないが、中には私のように感じた経験を持っている人もいるだろう。 心身共に健康で優秀な人でさせ「育休後に社会が一変してしまった」なんてよく聞く話。 それが精神疾患の闘病後だったら実にエグい。 中には福祉資源に恵まれてうまくいく人も居るだろうけれど、私の場合は元々無理して社会に合わせてやっと生きてたんだと言うことが、このタイミングで初めて分かった。 最初はただ、診察室と社会を繋ぐ福祉資源

逆転移が患者に与えるものとセラピストの心の傷

最初に言っておきたいのは、私に関わった治療者達を批判できる人間はどこにもいないと言うこと。 私の治療の足跡は私の人生であるし、研鑽を重ねてきた私の治療者達がすでに自分の心の内で決着をつけている問題を他者に問題視されたくはない。 読者自身の精神治療の場で起きる心の揺れに対して、私の感じたことが参考になればと思う。 精神科の診療やカウンセリングの現場で、治療者の自己開示はどうであるのが適切か・・・?という議論が先生達の中でもそれぞれに意見があるらしい事を知った。 私が参考にな

占いが外れやすい時とは!? ー4ヶ月で10人に占ってもらって分かったことー

「占い」信じますか? 漫画「shrinkー精神科医ヨワイー10巻」の解離性同一性障害の項でも描かれていますが、心の弱っている人って簡単に占いやスピリチュアルにのめり混むという事が多いそうです。 カウンセリングなどの医療サービスは、治療者に自分の状態を吐き出して、自分の中から答えを見いだすサポートです。 それに対して占いは、悩みを吐き出して空っぽになった心に 占い師からの全く別の情報を入れる行為です。 「間違っていても信じ込んでしまう」可能性がある。 さらに、自分で考える気が