Scaffold ちょっとしたお手伝い
みなさんは、Scaffoldというのを聞いたことがありますか? オーストラリアの教育現場では、よく聞かれる言葉です。学校では、生徒の現在の力量と、生徒がやるべき次の活動とのギャップを考えて、その部分を補うよう、手助けをすることなんですが…。これって、人生において、大人でも、どこでも、なんにおいても、結構大切だなと思うのです。
唐突ですが、今日、とうとう、芝刈り機を買いました。そして、うちの前庭、裏庭、ボーボーに伸びた芝をガリガリと、刈りました。引っ越して、ほぼ5週間、雨もじゃんじゃん降って、そのあと晴れて、草も、キノコも、Welcome!だった庭。(Scaffoldには、後で、話がつながっていきますので、読み進めてくださいませ。)
ベッドルームのカーペットの臭い問題と同程度、懸念材料だった芝刈り。15年ほど前に、田舎に住んだときは、近所の人が、一回いくらかで、自分の芝刈り機を持ってきてくれて、安く刈ってくれていたので、今回も勝手にそうしようと軽く考えて、庭のある家に引っ越しました。(というか、田舎なので、庭のない家を探すのは難しい。)しかし、引っ越してから、同僚に聞くと、この町では、たいていの人は、自分で、芝刈りをするとのこと。それか、専門の業者に頼む人もいるとのこと。でも、専門の業者に頼むと、もちろん、お金がかかりますから、10回ほど頼めば、そこそこの芝刈り機が買えてしまいます。
それで、芝刈り機を自分で買って、自分で刈ってみるかと、一念発起しました。しかし… 今まで、全く芝刈りなんてしたことがない。日本でも、そんな芝を敷き詰めたような庭の家に住んだこともないし、オーストラリアの大きい都市ですんでいる時も、アパートはタイルのベランダ、タウンハウス(同じような家が立ち並んでいるところ)もせいぜいレンガが敷き詰められた小さい庭に、50㎝程の幅の植物を植える土エリアがある程度。手で草抜きができます。先ほども書いたように、唯一、庭のあった家も、芝刈りは、人任せで。なんなら、私の人生において、芝刈り機の1メートル以内に入って、じっくり眺めたことさえない。
わからないものは、聞くに限る。私は、いつもそれで、何とか、切り抜けています。それで、同僚に、聞きまくりました。どの芝刈り機が良いのか。しかし、人によって、答えはいろいろ。芝刈り機は、結構くせもので…。庭の大きさや、坂の有無、雑草の多さや背の高さで、必要になるサイズや機能が違うのです。しかも、ガソリンのエンジンで動く芝刈り機と、充電式の芝刈り機があり、最近は、充電式が人気とか…。
雨の後、草がみるみる伸びていくので、ホームセンターに行き、芝刈り機売り場を見てみるんですが、どれがいいのか、さっぱりわからない。どこをどう比べていいのかもわからない。
そうしているうちに、突然、職場の上司が、「家に芝刈り機が2つあるから、一つ、使ってみぃーっ。」と、週末、うちへ、中学生の息子さんを連れて、芝刈り機を持ってきてくれました。上司の芝刈り機は、ガソリンエンジン式。使い方は、ガソリンを入れて、取っ手のレバーを前に倒して、エンジン部分にあるひもを思いっきり引っ張って、エンジンをかけます。上司が、説明しながら、エンジンをかけてくれます。そのあとで、私も、ひもを引っ張ってみます。小柄な私には、ひもが長くて、後ろにのけぞるほど引っ張ります。
次は、中学生くんが、芝刈りのお手本を見せてくれました。芝刈りの高さの調節の仕方や、どういう時に高めに設定するのか、低めに設定するのか…。続いて、私も芝刈り機を押して、芝を刈ってみます。重たいなーーと思っていたら、上司が、ストップをかけ、刈った芝が入る入れ物がパンパンになっていて、すかさず、刈った後の芝を、捨ててくれます。
しばらくすると、ひもを引っ張るも、エンジンがかかりません。というか、ひもが重くて、ひけません。上司が、スイッチをオフにして、芝刈り機をひっくり返すと、芝刈り機の刃の部分に、湿った刈られた芝がびっしりはりつていて、上司が、それを手でとってくれました。湿った草を刈ると、そういう風に、刃や周りにくっついて、刃の回転部分が動きにくくなるのだと、説明して、必ず、オフにしてから、手を入れるようにと注意もくれました。
もう、驚きの連続です。上司が、芝刈り機を貸してあげると言ってくれていた時、「申し訳ないから、おうちにまで借りに行きます。」とえらそうなことを言っておりましたが、これ、借りてきて、自分でやっていたら、めちゃくちゃ立ち往生です。
私の知識と技術と、芝刈りの活動に必要な知識と技術との差が、あまりにも大きすぎて…。
息子さんのスポーツの試合が午後からあるにも関わらず、親切に、二人で来て、芝刈りを教えてくれた上司と息子さんに、大感謝です。
これ、まさに、Scaffoldingです。例を見せてくれて、「ああ、こういう感じかあ。」とわからせてくれます。
そして、次の週、芝刈り機を購入すべく、ホームセンターへ。上司に、「他の同僚が充電式のほうが絶対いいって言ってるよー。」と言われ、見てみたものの、充電式も、18Vだの、36Vだの、充電時間も、電池の強さも、サイズもいろいろ。ガソリンエンジンのも、値段が色々あるのはわかるけど、どう違うのか、さっぱり。店員さんに聞いてみたら、充電式はパワーが弱いから、長い草には使えなくて、頻繁に芝刈りをしないといけないから、ガソリンエンジンのほうがおすすめと言われ…。でも、同僚は、充電式がいいといったし…。
そこで、町にある、他2軒の芝刈りや重機の専門店にも行き、話もきくも、やっぱり、どれがいいのか、分からない…。ネットで、おすすめトップ10も調べるも、書いてある説明もピンとこない…。どのブランドが、定評があるのかとかも、全然わからない…。
結局、ホームセンターで、芝刈り機の知識が豊富な店員さんの名前と彼がいる時間を調べて、今朝、再度、ホームセンターに出向き、いろいろと質問して、教えてもらって…。
雑草がすぐにボーボーに伸びる我が家の庭のために、超平均的、初歩的なガソリンエンジン式の芝刈り機を買いました。ガソリン式のは、ガソリンを入れ、オイルも入れ…。まあ、車と同じようなしくみ。それゆえ、ガソリンの管理もあり、オイルもオイルゲージを見て入れなくてはいけないし…。1年か1年半に一度は、メンテナンスもしなくてはいけない。かたや、充電式は、メンテナンス、一切なし。同僚が、充電式を強く推したわけが、やっと、ここにきて、分かった感じです。
で、意を決して、購入した芝刈り機。箱、開封。説明書を読むも…。同じ会社のいろいろな型の芝刈り機用に、一気にざっくり書いた説明書と、私の買った芝刈り機は、絶妙に、部品や形状が違います。??? 結局、箱の芝刈り機の写真を見ながら、部品を、見様見真似で、組み立てて、やっとこさ、完成。これも、上司の芝刈り機を使わせてもらっていたので、作りもそれなりに理解できたから、なんとなく、こんな感じかなと思って、組み立てましたが、その経験がなかったら、組み立てられなかったかも…。
さあ、芝刈り 開始!
高さを調整して、レバーをオンにして、エンジンをかけて、さっそうと、庭を駆け回る私。しかし、すぐに、刈った芝を入れる入れ物はいっぱいになり、刈ってはゴミ箱へ、刈ってはゴミ箱へ。そして、詰まってとまると、レバーをオフにして、刃のあたりに、べったりくっついた湿った草を取り除き…。エンジンがかからなくなったら、ふたを開けて、ガソリンを補給し…。全部、上司に教えてもらった通りにしました。ほぼ3時間で、なんとか、全部、刈り終えました。充電式だったら、電池は30分だから、絶対もたなかったわ。笑
さっぱりとした庭。清々しい気分です。でも、芝刈りの高さを、高めに設定して、長い雑草を刈ったので、低い雑草は全く切れずに、そのまま。来週、ゴミの回収が来て、ゴミ箱が空になったら、もう一度、低い高さ設定で、刈る予定。そういう判断ができるのも、上司が、高さ調整の方法と、刈り方について、教えてくれていたから。
昨今は、ネットやYouTubeで、いろいろ検索できることも多いものの、今回の芝刈り機のように、自分の中に、全く知識や経験のないものは、人に、実際に見せてもらって、細かく、状況に応じて、どうするのか教えてもらって、「ああ、こんな感じなんだあ。」と分かったうえで、やることの重要さを感じます。
私のように、「わからないことさえ、わからない」レベルでいる状態の時は、簡単なつまづきも、とっても大げさな挫折になってしまいます。芝刈り機が止まったときに、詰まった草をかきだすだけで解決できるなんて、自分では、全く思いつきません。きっと、とんちんかんな予想をつけて、不良品の芝刈り機を買ったと判断するでしょう。
海外で暮らすと、その国で生まれ育っていないがために、その国の人が、育っていく上で、自然と身についている知識や技術を、全く知らない、想像もできないという事案は結構あるのです。
海外暮らしの話だけでなく、仕事などでも、新しいことに取り組むとき、「何がわかっていないのか、わかっていない」ことが、私自身も、周りの人を見ても、結構多いのです。私は、とってもラッキーで、新しいことをしなくてはいけないとき、自然と、誰かが、Scaffoldして、教えてくれることが多いのです。
時間を使って、教えてくれる人、惜しみなくいろいろなものをシェアしてくれる人、感謝、感謝です。逆に、他の人のために、Scaffoldして、お手伝いをしようと思う時、お手伝いする人が、何がわかっていないのか、何を身につけないといけないのかの見極めは、案外、難しいものです。そう思うと、今回の上司のScaffoldingは、見事でした!本当に助かりました。
みなさんも、誰かに、そんな感じで、ちょっとしたお手伝いしてもらったこと、また、お手伝いしたことがありますか。
追伸:私の愛車、シバ―くんです。
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