胃切除から1年半以上経過/なんと北海道に住み始めました

 今回は、タイトルの通りです。

 一応前回書いた術後1年の記事を置いておきます。

◆北海道に移住する決意を固めました

 胃切除からちょうど1年経ったころ、胃切除からくる不調があまりにひどくて完全に鬱になりまして。(上記のnoteを書いたあたりのころです)
 そんな時に北海道に住んでいる実家の親が「何か手伝えることがあったらするから」と言ってくれた時に、ふと思ったんです。「そうだ、北海道に帰ろう」と。

 もう心療内科にかからないと本格的にやばいというところまできていたし(胃切除からくる鬱があまりにひどくて、死にたい気持ちが半端なかった)、他に胃切除から歯を悪くした話も書きましたが歯医者を3か所たらいまわしにされて歯医者だけで3か所も通い続けることにも疲れたし、あとそもそも胃切除の手術をした病院の主治医に何を話しても「胃を切ったからね~」ですませられることへの不満などもありました。
 で、なんで北海道に帰ろうと思ったかというと

●東京より病院の予約が全然取りやすい
 これはもう言うまでもないです。東京だと「次は2か月先まで空いてません」とかなるのが、北海道なら1~2週間とかが普通です。むしろ2週間だと「すみません…2週間先まで取れないんです…」みたいな対応されます。こちらとしては「いえいえ!2週間なんて全然平気です!」くらいです。

●実妹が通っていた心療内科がある
 実妹も10年前くらいに鬱になって北海道の実家に帰っていたのですが、その時に通っていた心療内科がすごくよかったという話はずっと聞いていました。心療内科はとにかく合う先生を見つけるのが大変という話はよく聞きますし、実妹が合ったからといって私が合う保証もなかったのですが、それでも東京であてもなく心療内科をウロつくよりも最初の取っ掛かりとしてはまずそこに通ってみるのがいいかなと思いました。特に東京では心療内科の初診は数か月待ちが普通ですが、こちらはやっぱり精々2週間程度です。

●田舎なので街がこじんまりしている
 電車に5~10分乗れば中心部に出れて、駅歩含めて20~30分あれば大体どこにでも行けるという気楽さ。これは多少住む場所にも左右されるのですが、そういう場所を選びましたので、実際今電車で5分乗れば中心部に出れますし、自宅は最寄り駅から駅歩3分ですし、東京ではこの暮らしをするのは厳しいですね。できなくはないけど、しようと思えば築年数とか広さが犠牲になる感じかと思います。

●食事への不安が払拭できる(はず)
 胃切除以降食品添加物がダメになってしまったため、ファミレスとかに一切行けなくなりました。ですが、我が家の周りは住宅街だったので、ガストやサイゼリヤ、デニーズ、マクドナルドといったファミレス・チェーン店・ファーストフード・コンビニは多かったものの、店主が手作りのご飯を出してくれるようなところが全くといっていいほどありませんでした。必然的にご飯は、ご飯を食べたくもない私が自炊でご飯を作るしかないという、悪循環でした。その点北海道は(住む場所にもよりますが)個人店も多く、チェーン店でも工場で一括で作るとかじゃなくお店で手作りしているところが多いです。(そういうエリアを選んでそこに引っ越せば良い)そこらへんは私自身元々北海道の出身ですし実家も北海道(北海道北海道いっていますが、つまりは札幌です)なので、温度感がわかっていました。

 ……と、こんな感じで、とにかく「もう東京で療養するなんて無理!実家に帰る!」となったわけです。最初は私だけ札幌の実家に帰ろうかと思ったのですが、旦那もフルリモートですし、娘はフリーターだったので、「ならもう家族全員で北海道に引っ越すか!」となるまで、多分2~3日かかっていなかったです。即断即決の我が家らしい実行力……。
 私だけ3月にひとあし先に北海道に帰り、しばらく実家に置いてもらいまして、旦那と娘は東京で引っ越し準備。5月には東京を完全撤収して、最初に引っ越した家は内覧なしで決めているため少々不満が多く、北海道にきてからきちんと内覧してもう一回近所で引っ越しをし、今現在も家族3人で北海道に住んでいます。

◆北海道に移住してどうだったのか

 はっきり言って、大正解でした。とりあえずその色々を挙げていきます。

●いきなり一人前食べられるようになった
 北海道に移住して1か月が経つ頃には、普通にほぼ一人前のご飯が食べられるようになりました。あんなに食べられなくて苦しんでいたのに…。一人前が食べられるようになった要因はよくはわからないのですが、やはりご飯が美味しいこと、添加物などに頼っていない店主手作りの味が味わえる安全な個人店が多いこと、東京からの解放とか、多分色々あるんだと思います。

●普通に外食ができるようになった
 胃切除者の天敵であるラーメン(中華麺)だけは1年半以上経過した今でも怖くていまだに全然チャレンジしていませんが、カレーからパンケーキ、お蕎麦にハンバーグ……外食は普通にしています。オーガニック系のお店も結構ある地域に住んでいるので、テイクアウトも困りません。北海道は異常におにぎりやさんが多いのですが、どこも店内で注文を受けてから握ってくれるので、ご飯が本当に美味しいです。もちろん自炊も普通にしています。

●病院に通いやすくなった
 やっぱり病院はとても通いやすいです。今は歯科(大学病院)、消化器外科、心療内科に通っていますが、どこも通いやすいし東京より全然予約もとれるし、特に消化器外科は東京にいたころはCTは別日に別の連携病院で撮影してその1か月後に主治医の診断、とかだったのに、今じゃ朝8時半に病院に行って、血液検査、CT、エコー、先生の診断、会計まで含めて11時半くらいには終わります。

●胆嚢は悪くなりました
 残念ながら胆嚢はやっぱりだめでした。このnoteを書いたあと、11月に胆嚢全摘手術を受けることになっています。北海道にきてからも2回救急車で運ばれて、胆嚢炎からくる膵炎と肝炎を併発しているようで、とにかく一時期は緊急手術が必要かもというところまでいったのですが、何とか持ち直してくれました。その胆嚢も、東京ではふわっと「多分胆嚢」みたく言われただけだったのですが、こちらでは胃カメラエコーという、CTとかでもわからない胆嚢の様子を見る検査をすごく丁寧にしてくれて、本格的に胆嚢がアウトでこのままにしておくと膵臓と肝臓もダメになることがわかりました。もう絶対内臓手術はしないと決めていたんですが、ここで死んだら私のために北海道に引っ越してくれた家族に申し訳がないので、こちらとしても三度目の内臓摘出手術を受ける決心がつきました。そういう意味でも、前向きに手術を受ける気にさせてくれたのは北海道に引っ越したからだといえるかもしれません。

●歯周病なんてなかった
 東京の歯医者でいくつも歯周病が……と言われてきて歯医者を転々としていたのですが、北海道の歯科がある大学病院に転院したところ、歯周病なんて全然進んでいないと太鼓判をもらいました。むしろ年齢を考えたら口内環境は良いレベルだそうです。こういう言い方はアレですけど、お金稼ぎのために大げさに言われていたみたいです……。ひどい話です。でも歯周病なんてなかった(正確に言うと、歯周ポケットは正常)とわかって、心底ホッとしています。

●気持ちが元気になりつつある
 本格的に心療内科にかかれるようになったので、毎日一日中「死にたい」と思っていた気持ちが大分なくなりました。今はかなり元気です。ただやる気だけは相変わらず日によって違ったり、睡眠の質がなかなか改善せず、薬を試行錯誤しながらの日々です。でも東京にいたころとは雲泥の差で元気です。

●口の中の違和感は相変わらず治らない
 これは心療内科の先生とまだ治療中の段階です。ただ、東京にいたころは胃切除の後遺症にあわせて口の中も気持ち悪くてとにかく食べられないという状態だったのに、今は口の中が気持ち悪くても食べること自体には支障がありません。あくまで口の中が気持ち悪いのが一日中続いているだけなので、なんとかなっています。

●味覚障害が治りました
 多分心療内科で治ったと思うんですが、はっきりはしていません。ただ鬱の治療を本格的に始めてから、味覚障害は完全になくなりました。私の味覚障害は更年期でも亜鉛でもその他でもなく、鬱からきていたようです。今は術前と全く同じ味覚に戻っています。

●仕事の収入は減らなかった
 自分でもちょっと意外だったのが、こちら。私はフリーランスのライターですが、東京を離れたら当然東京での取材仕事を全部断ることになるので、100%収入は減る覚悟でした。ですが、蓋を開けてみたら収入は全く変わりません。ただ、東京外でもできる仕事となるとほぼ全部レビューなので、一本ずつの仕事が割と重く、休みはそうそうありません。でも仕事が好きなので、苦痛ではないです。むしろ日々楽しいです。こっちにきてから東京出張にもいきましたし、大阪出張にもいきました。ひとり旅でも全然平気です。ただ、出張は交通費とかでないので基本赤字です(笑)。よっぽどやりたいものだけ赤字でもいいから行く、という感じですね。

◆北海道はとにかく暮らしやすい

 そんなこんなで、日々のんびり北海道で暮らしています。前述の通り仕事も普通にしています。もちろん旦那も相変わらずフルリモートで、北海道から東京本社の会社で働いています。娘も無事扶養から出ていってくれまして、家族3人で仲良く暮らしています。旦那と娘もとりあえずは北海道生活を楽しんでくれていますが、雪が降ったあとに同じセリフが出てくるかは不明です(笑)。

 とりあえず改めて強く感じたのは、
・住環境の重要さ
・病院との相性
・ガン患者と心療内科の在り方
 あたりでしょうか。

 さすがにガン患者がみんな北海道に移住すればよいなんていう暴論を吐くつもりは毛頭ないのですが、ただ自分の住環境が自分の体と合っているのかどうかっていうのはあるのかなと思いました。我が家の場合私も旦那もフルリモートが可能だったこと、娘もその時たまたまフリーターでしばられるものがなかったことなどが幸いしたのですが……例えば駅歩30分だったのを駅歩5分に変えてみるとか、そういう住環境を変えてみるっていうのはやろうと思って絶対無理という話でもないと思うし(我が家も持ち家でしたけれど、売って北海道にきました)、無理って思うから無理なだけだったり、実現可能な範囲でやれることもあるかなって思います。

 あと病院は、胃がんのほうは大学病院で診てもらうほどステージが進んでいないので父の紹介先の病院に転院して、そこで今胆嚢も診てもらっていますが、すごく良い先生です。添加物で吐くこともちゃんと聞いてくれて、入院病棟でも病院のご飯を食べられないので、家族からの差し入れと無添加レトルト食品の持ち込みを許可してくれました。(まぁ基本絶食だったので、あんま活躍する機会なかったですけれど)11月の入院でも差し入れと無添加レトルトに頼る予定です。すごくいい病院です。心療内科も実妹のおかげで良い先生に最初から当たりましたし、自立支援にもかかることができました。歯科に至っては大学病院なので当然利益とか一切ないため、毎回500円くらいしかかかりません。本当に必要な治療しかしないとこれくらいのお会計で済むものなのね、というのを実感しています。

 そして切実なのは、心療内科の先生との連携でしょうか。多分ガン患者って絶対心病むと思うんですよね。ステージが進んでいなくても私みたいに胃切除して食べられなくなって鬱がひどくなってとにかく死にたいことしか考えられなくなって、なんで胃を取ってしまったんだろうということばかりになって……。他にも将来への不安だとか、余命だとか、色んなことが頭を過ぎって絶対病むと思います。なので、もっと病院で精神科への紹介を普通にしてくれるとかあってほしいですよね。心療内科が混み混みなのはわかっているんですが、歯科がコンビニより多いくらいよりも、心療内科がコンビニより多いほうが絶対良いと思います。そしてガン患者さんたちも、自分たちの心が弱っているなって思ったらそれをガンのせいだけにして放置しないで、ぜひ心療内科にかかってほしいなと思います。いやほんとあんなに「死にたい」しかなかった人間が一瞬で立ち直るんだから、抗うつ薬とかすごいと思う。(語彙)

 と、胃切除から1年もの間まったく食べられずにうだうだしていたのに、たった半年の間に東京から北海道に移住したら、めっちゃ元気になっちゃった胃がん患者の記録です。どこかのどなたかのお役に立てれば嬉しいです。

 




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