胃がん患者が、胃切除から一年経って残す記録

2021年1月6日に早期胃がん(スキルス)にて胃を2/3切除した日から一年。
この一年、体調に非常に様々なことが起こりましたので、記録を残します。
あまり体調が良くないので、手短に。
あと、ぐっちゃぐちゃの文章ですが、そこは許してください。

・自己紹介
46歳、女性、家族は旦那と、成人になった娘が1人の3人家族。旦那はコロナ禍からずっと在宅勤務の会社員。娘は接客業で、毎日帰りが遅い。私は基本在宅で働くフリーランス。たまに仕事で遠くに取材に行く。

・胃切除後、添加物で吐くようになった
これはしばらく気がついていなかったというか、自分も家族も意識が低すぎた。
胃切除後、一部の食べ物や飲み物で吐き気がしたり、実際に吐くことがあったので、一度気持ち悪くなったものは食べないことにしていたけれど、それ以外のものは一切気にしていなかった。
旦那は在宅とはいえど会社員なので忙しい。娘も仕事。私はご飯を作れる体力と気力がないので、ついコンビニですませていたけれど、退院から10ヶ月もの間、コンビニのたまごサンドひときれやおかゆを少量すするくらいしか食べられない生活が続いていた。
そのあたりで栄養指導にて栄養士さんに怒られて、多少無理してでも自炊をするようになり…そこから体調は上向き。今は完全無添加ではないけれど、極力無添加に近いものを素材から調理している。少し食べられるようになって、元気になってきた。
あまりよく聞く症状ではないけれど、日頃からアレルギー体質のひとは、こういうことも起こるという覚悟が必要。私はどうやら他にも食物アレルギー(これまでなにもなかった)を起こしている気配を感じるので、近いうちに改めてしっかりアレルギー検査をします。
ちなみに現代社会において添加物と無縁の生活を送るのは厳しい。私は一部のペットボトル飲料ですら吐くので、スポドリとかすら飲めない。インゼリーも添加物だらけですが、食べても吐かないので、体調がやばい時は飲める量だけ飲んでいる。そうでないとカロリーも栄養もなにもとれなくなるので…。
多分私のは極端だとはおもいますが、貴方もある日突然卵アレルギーを起こしたりするかもしれません。内臓を取るとは、そういうことです。

・歯の悪化がやばい
胃切除者はご飯を大体1日5〜6回、だらだら食べますが…それが何ヶ月も続くと、虫歯になりにくい体質の人でもほぼ虫歯になるのでは。(しかも嘔吐したりすると、更に歯へのダメージUP!)
そういう私も入院直前に虫歯全部治したのに、たった9ヶ月ほどで一部の歯は根管治療になるレベルにまでなっていた。
なにこれ、聞いてない。外科で「歯に注意してね」とかなにも聞かされていないんだけど…!?
当然ですが、歯周病もめちゃくちゃ悪化する。
わたしは今、歯の方が悪くて悪くて食べられない。食欲はあるのに歯の治療や歯茎のことで食べられないのはまた辛い。あと銀歯のせいでどうも金属アレルギー起こしているかもという…。もうこんなのどうしろと???
結局金属アレルギーの不安が大きいから、銀歯をオールセラミックにすることにした。14本の銀歯全部セラミック化。あとはお察しください。年始から14本の歯の置換ですわ。
あとは恐らく歯周病から出ている膿のせいとかで、喉の詰まりもやばい。喉の詰まりがやばいから尚更ご飯が食べられない。
とにかく歯は大切に!!!
味覚障害も起こしていてあちこちでみてもらっていますが、原因不明。婦人科、耳鼻咽喉科、歯科、どこでもあまりまともに取り合ってくれない。今のところ歯周病が怪しいと思っている。
胃切除者は1ヶ月に1回はメンテナンスしたほうがいいぞ。

・他の臓器もだんだん悪くなる
胃を取ると他の臓器も悪くなりがち。
私は今年の健康診断の腹部エコーで、これまで一度も引っかかったことのない胆嚢、肝臓、腎臓で、要精密検査。
3ヶ月前くらいに腹痛と嘔吐と意識混濁で救急車で運ばれていったときの感じからも、どうも胆嚢はやばげで、石まではなっていないけど、泥がたまっているよう。こんなふうに、たいして食べてもいないのに、どんどんいろんな所がじわじわと悪くなっていく。(一年検診のCTのときにここもみてもらうけど、まだガンかどうかは不明)

・ここまでして生きたいか?という地獄
ここから先は私の持論なので、不快感を感じる人は読まないでください。

正直言って、この一年、いいことなんてなかった。仕事は楽しいけど、胃の不快、食べられないことによるモチベーションの低下、味覚障害でこれまで美味しかったはずのご飯が美味しくない、これまで食べられていたもので吐く、そこに24時間ついて回る歯の悩み。
歯の悩みは本気で解決したいなら、自由診療しかない。特に私は金属アレルギーが出てしまったので、アレルギー反応と思われる口の中の症状も相当に厳しい。

まあここからは小娘の戯言なんですけど、胃を取ってきて一年、「胃切除してそのリハビリさえすればいい」と思っていたのにあまりに後遺症が多く、こんなに後遺症が多い上にこれまでなかった添加物アレルギーまで発症するだなんて、こんなことなら胃切除をしないで、ただ粛々と終わる命を受け入ればよかった。最後はホスピスで医療麻薬で眠り続ける日々を送りたかった。ということに尽きる。

アルファクラブという、胃切除者友の会がありまして、そこに非常に貴重な資料がありました。

●術後3年以内のアルファ・クラブ会員の方々319人に「告知されてから今日まで」の状況についてアンケートを行いました。青木照明本会会長に、その結果報告と分析・解説を書き下ろしていただき、会報『ALPHA CLUB』第271号から276号に連載しました。術前術後の患者サポートの参考にしていただきたく、全編を以下に公開します。
http://alpha-club.jp/questionnaire/

その中に更に目を留めていただきたいのは、胃切除の後遺症のお話です。

⑸胃術後障害の現状 「22年前と比較してその変化は? 」
部分切除(幽門側・噴門側・胃体分節)の方だけでみても、重症者が30%を超え、22年前の24%を大きく上回っています。まだまだ、医療者側が原病に対する根治性に満足し、その後に新しく発生する「後遺症」に対する関心の低いことを物語るもので、手術前の説明と理解に対する努力が、医療者側・患者側双方に不足しているという結果とも相関しているものと考えられます。
http://alpha-club.jp/questionnaire/questionnaire_05/

医者は「取れば治る」とか簡単に言いますが、現実の数字として友の会にもこれだけ重い後遺症に悩む人々が多いことは知っておいてほしい。治るというのは、ガン細胞がなくなることでしかない。元の生活は戻らない。(戻る人もいます。個人差が大きいです。ただ私がみている限り、戻れていない人のほうが多いです。良い例を見て安心しないでほしい)
胃という重要な臓器なこともあり、社会復帰が難しいことも多い。私は幸い在宅メインのフリーランスなのでどうにかなっているが、セミリタイア組も多い。なんとか復帰できても、理解のある職場で働ける人ばかりではない。
私は「良い結果を見て楽観的に受け止めることも大切かもしれないけれど、あとになって現実に打ちのめされるよりも最初から最悪の状態を知った上で決断するべき」だと思う。
私はいくつかの胃がんコミュニティに属しているが、実質胃がんによるセミリタイア(30〜40代)は95%くらいと感じる。それくらい、胃がんでの社会復帰は厳しい。 

胃切除して。後遺症に苦しんで。美味しいものを食べるなんていう普通の楽しみを無くして。旅行にもいけるような体のじゃなくなって。セミリタイアして。稼ぎもなくて。医療費ばかり嵩んで。具合が悪くて寝ているばかり。家事も家族任せが多い。これが数日ならお互い様だけど、自分は一生このままなのだ。こんな自分を家族にただ介護させるだけの日々が、私はとても辛い。ただの穀潰し。こんな自分は、早く死ねばいいとすら思っている。先の見えない後遺症に、多分誰しもが数回はそんなことを考える。(考えても言わないだけ)
だから私は「こんなことならばガン宣告から一年くらいは好きなものを美味しくたらふく食べて、たくさん仕事して、たくさん思い出作って、そのあとは最期を迎える準備に入ればよかった」と感じます。

これはあくまで私の考え方であり、そして生き方なので、否定されるいわれはありません。私の命の価値は私が一番わかっていますので、他人にどうこう言われる筋合いもないです。
「それはおかしい!俺はそれでも生きる!」とおもうのならば、それでいいのでは。私は、覚悟を持ってその道に挑む方の生き方も、決して否定しません。それはそれで苦難の道です。その苦難の道を乗り越えようとする努力は、何よりも素晴らしい。それは絶対です。

ただ、もう少し「命の損得」は考えてみていいと思っている。あと2年しか生きられない。手術したら5年にのびるかもしれない。そうして得た3年が貴方の思う3年という時間ではなく、ただ苦しみで寝たきりになる3年間になるかもしれない。家族をも巻き込んで、苦しませるだけになるかもしれない。そういう後遺症のことや人生の先、金銭のことまで見据えて、それでも得る時間に価値を見出せるのか。それが大事なのではないだろうか。

・日本にも安楽死を
日本には安楽死の制度はない。日本は死に対して非常にネガティブな国。生きることだけが正義だと思っている。日本人が現状安楽死をするには、スイスにいくしかない。数100万円かけて、英語の書類を読んで、ようやく認められるかどうか。
でもこの状況下で生きていくことが辛い人もいる。
わたしはここで安楽死を選べたら「ポジティブな死」だと思っている。それに安楽死があればいつでも死ねるなら逆に「ならあと1日生きるか!いつでも死ねるし!」ってなったりする人だっているはず。
私は家族が好きだから、家族にぐっちゃぐちゃになった飛び降り自殺の死体とか見せたくない。だからこそ、これ以上は本当にダメだと思ったら安楽死したい。そういうことをなにもわかってくれないのが日本人の国民性。わたしは自分の人生の幕引きを自分で決めたいけど、自殺はいやだから安楽死にしてくれと言っているだけなのに。

…と、つらつら書きましたが、年末年始から体調崩しております。今日も無理やり主治医の診察取り付けました。でも主に胃の問題より歯の問題でした。
歯の問題も、本当に日本はいまだに保険適用のメタルフリー治療がないとか遅れすぎ。(CAD冠とか一応あるけどね。レジンもアレルギー物質なので信用していない)
そもそもメタルフリーが最初から保険でできていれば、こんなに体調もひどくならなかったのに。
ガン患者ただでさえお金かかってんのにガンとは直接関係ないからって、こんなお金取る?
ガン患者の歯には、メタルフリーの保険適用しろ!!!!💢

私は胃切除に伴い胆嚢肝臓腎臓と悪くしましたし、流れ的に多分90%膵臓もダメですし、二度と体にメスを入れない誓いをしているので、いずれ突発的に敗血症とかで死ぬと思う。
それならせめてガンの手術を受けずに、余命を知りながら生きたかった。

考え方はひとそれぞれです。わたしはポジティブに死を迎えたいのです。でも前述の通り、最後まで諦めないひとたちのほうがずっと立派です。
ただ、諦めない人たちがどれだけ辛い生活をしているかはTwitterとかで見た方がいいと思います。よく抗がん剤などをプロフィールに書かれている方がいますので、その上で自分の人生をきちんと正しく天秤にかけてほしい。

世の中には生きたい理由がたくさんあります。
一方で、生きたい理由のために生きたはずが、あまりの苦しみになんで生きたいのかわからなくなります。
それに耐えられるのは「生きたい」という強い意志だけ。
私にはそれがないのに胃を取ってしまった。これが最大の違いですね。

どうか、貴方に悔いなき選択を。

2022.1.6…に間に合わず、1.7になってしまった胃切除一年後の記録でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?