【詩】甘い匂い、青い世界
甘い香りが肺を満たす。肺で感じる、甘い匂い。
青い景色を脳で感じる、脳でえがく、青い世界。
その甘い匂いは、誰もが嗅ぐことができて、でも、嗅ごうと思った、想ったときには嗅げない。嗅ぎたいときには嗅げない。
その青い世界は、誰もが描くことができて、でも、描こうと思った、想ったときには描けない。描きたいときには描けない。
ふとした時に香る匂い。砂糖のようでいて、ハチミツのようでいて、なんだか分からないけれど、甘い匂い。
知らない底を満たす青。絵具のようでいて、ラピスラズリの様子で、なんだか知りえないけれど、青い世界。
その匂いは、ふとしたときにやってきて、そしてあなたはその匂いにつられて、家を出る。
その世界を、ふとしたときに描きあげて、そして私たちはその世界に夢を見て、外に出る。
行き先は、ホームセンターでも、車の中でも、駅のホームでも、海でも、ビルの屋上でも。
好きなところに、誘われる。
好きなところを、描き出す。
その甘い匂いを求めて手足を動かす。何なら、家を出る必要もない。
その青い世界を彷徨い乾く眼を晒す。何時も、瞬きには魔法が宿る。
甘い匂いは、突然やってくる。徐々にくると思っている人は、普段から甘いものを摂取している人で、だからその甘さを知っている人。
青い世界を、必ずつくり出す。緩慢なままでいいという人は、苦労せず青い世界を創り出せる人達で、だからこそ青さを笑わない人達。
でも、これは味覚の話ではない。甘美である、ということ。
そしてこれは色覚の話ではない。青々生きる、ということ。
そこにはバウムクーヘンでできた屋根があって、窓枠は焼き菓子で、窓はチョコレート。ブッシュドノエルの煙突。
そこにはコンクリートで作られた屋上があって、縄は固く結ばれて、水底はチャコール。セーフティドアは未設置。
あなたとあなた以外が嗅ぐその甘い匂いは別物で、でもそれを同一だと勘違いして、そのことに腹を立てて。
わたしとわたし以外が見るその青い世界は格別で、でもそれを異質だと仲違いして、そのことに目を背けて。
甘いものを甘くないと考えて。
青いモノと蒼いモノを従えて。
この世界で、好きにすればいい。
励みを頂ければ……幸い至極です……