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32才、まだ夢を見ています。あるインディーズアーティストへのラブレター

久しぶりに心が震えた

す、す、すごいインディーズアーティスト(兼総監督)を見つけたので、その感動を書きます!!!まず、プロフィールを簡単に紹介するとこんな感じの方👇

spoon+
2010年春、「世界を驚きで楽しくする」をテーマに、 あこちゅあを中心に活動。ライブ演出や映像/楽曲制作、衣装製作などをはじめ、 アートワークを全てあこちゅあがセルフプロデュースしている。独自の表現力をもとに国内外にファンを持ち、フランスのケーブルテレビ「NOLIFE」ではリクエストランキングで殿堂入りするなど海外にも活動の幅を広げている。

私の大好きなMVは、まずこれ!!騙されたと思ってクリックあれ!!!

・・・かわえええ。かわゆすぎる・・・!!!ダンスも、演出も、歌詞も・・・可愛すぎる。

いや、かわいいという言葉ではもはや不正確!「可愛い」って、本当に心をうっとりさせたり見るものを見つけた時に、全然足りない。

誤:かわいい
正:イチゴの妖精とその世界に、魅了される。

・・・め、めんどくさくて、すみません。でもこの世界観、高級制作スタッフ総動員で作るディズニーの実写版、顔負けじゃないですか?

しかし、このメルヘンな空想の世界を実写化したMV、制作インタビューとか読んでみると、とても手作り。めちゃくちゃホームメイドで、後ろで動いているケーキは中に入っている人たちが歩くことで、人力で動いているんだとか。。。

そして、そんなキュートネス爆発とは別に、こんな神秘的で静謐な世界観も表現できる多彩さ👇

上ふたつは結構前の曲なのだけど、一番新しい、この曲も・・・

最初のプロフィールにあっさりすぎるくらいあっさり書いてあって、でももう絶対忘れていると思うのでもう一度言うのですが、「あこちゅあ」のすごいところは、歌うだけじゃなく、作詞作曲と衣装の製作も全部、自分でやっているところ・・・!!!!

アイマイベイビにいたっては、MVの監督も自分でやったらしい。そしてなんと、自分の部屋で撮影したらしい・・・!!

曲も詞ももらって、プロデューサーもついてこれですって言っても十分才能あるねって感じだけども、言葉や音、衣装や動きっていう全部のカケラをここまで結晶にして集結させられるって、凄まじい才気。

感動すると身近な人にシェアせずにはいられない私は、もう一人にSpoon+の音楽を見せてみた(聴かせてみた)。 

すると、「ホント、数年後には武道館でライブしてるかもね」。ウンウン!Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅと並んで全然遜色あるように見えないし!!!

しかし、実はですね。ミュージックステーションに出ててもなんの不思議もないように見えるSpoon+ですが、実はこのイチゴオンザショートケーキが出されたのは6年前と、結構前のものなのです。6年経っても古さのかけらも感じないのってすごいけど、こんなオリジナリティ溢れるMV、日本中でバンバン流れてほしかったな・・・。だがだが、spoon+はイチゴオンザショートケーキだけの一発屋に非らず!

あこちゅあはその後もマイペースに活動を続け、2017年にはDressという4作目のアルバムが出ます。

そのアルバムの制作費とワンマンショーの費用は、なんとクラウドファンディングで集めたらしい。クラファンをした理由は?と聞かれたインタビューで、「お金がなかったからです!」と明るく答えるあこちゅあ。うう、インディーズ切なす・・・。しかし、そんな逆境をも彼女の世界に染めれる魔法使い、あこちゅあ。🧙‍♀️

その時のお礼も、センスに満ち溢れた見ていて楽しくなるようなものばかり。ちょっと紹介させてください!!!

世界一ドキドキできるクラファンのお返し

たとえば・・・「爬虫類好きを公言するあこちゅあが、都内の爬虫類セレクトショップにて、あなたのかわいい家族探しをアテンドします!」

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ちなみにあこちゅあは爬虫類好きで、「ボールパイソンとレオパとフトアゴとアオジタとクレスとニシアフと暮らしています」らしい (by Twitter)。

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「ボールパイソン?レオパ?フトアゴ?アオジタ?クレス?ニシアフ???」をググると、ニシキヘビ・トカゲ・ヤモリ・・・

そんな彼女のSNSには日常的に彼女との家族のお写真がご登場。

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わ、私は爬虫類は好きではないので、ここはさらっと・・・。汗

でも、蛇はパスでも大丈夫。他にも、「あこちゅあと一緒にカラオケをしてみよう!地獄のカラオケプラン」とか

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他にも、「あこちゅあがあなたの小物をかわいくリメイクします」とか、もう、全部アイディアにセンスを感じるものばかり。そして、こういうクラファンの素材イラストも、Illustratorであこちゅあが作ってるんだと。フォントも絵もかわいいよぉ。ウェブデザイナーかよ・・・!

しかし、オールナイトのカラオケ3万円で3人まで友達連れていってよくてカラオケ代金込みとか、良心的すぎませんか?!?!?!私がお金と暇を持て余しているおじさんだったら(おばさんでも)、30万でもそんなカラオケしたいですね。蛇は嫌いだけど、どうせならあこちゅあさまの愛蛇も連れてきてもらって一生の想い出にしたい!あ、その日のビデオ撮らせてもらえるんだったら、もはや60万でもおかしくないですね!あこちゅあさん、商売っ気なさすぎでは・・・!汗

えっとですね、あこちゅあの独特の世界観とこのセンスを伝えたくて話が逸れちゃいましたが、そうして作り出されたアルバムは、軽快なエレクトロテクノポップではじまり、後半はバブルガム・ベースの意匠も加味したドリーミーな歌声で幻想的な音世界に連れていってくれます。特に後半の“クローゼット時間”“チャイム”から押し寄せる壮大さに感動……。

・・・ってこれ、パクりました。だって、あの感覚を言葉にする言葉持ち合わせてなかったからです。タワレコのレビューを見て、あまりにも「言い得てる!!!」と思ったので堂々と引用!このレビュー書いた音楽ライターさん、すごいと思います!元文はこちら↓

“間にシングルは出ていたものの、フル・アルバムとしては2014年の『eat』からけっこう久しぶりな4作目。幕開けの“カンフーガール”から毎度のマイペースで才気を爆発させる彼女ですが、歯切れのいいエレクトロ~テクノ・ポップにバブルガム・ベースの意匠も加味しつつ、今回はドリーミーな歌声で幻想的な音世界を描いたような印象です。なかでも後半の“クローゼット時間”“チャイム”から押し寄せる壮大さに感動……。” 轟ひろみ

(バブルガム・ベースの意匠って、なんのこっちゃ!って感じですが、聴いて文字を見ると、なんかわかる感じがします)

後半部分の押し寄せる壮大さって、ホント、そうなんですよ。自分の好きな曲だけつまんで再生しがちで、あまりアルバムを順番に聴いたりすることのない私ですが、初めて曲の並びにアーティストの意図を感じて、それらが連れていってくれる世界観に浸りました・・・。

あこちゅあの声って、幻想的なメロディかあるいはすっごいかわいいポップスにどハマりするということがめちゃくちゃよくわかる、ラスト3曲です。MVの制作やアルバムの見た目とかはもしかして以前の方が凝ってたのかもしれないけれど、最近のアルバムの方が、音楽としての集大成感がすごいです。

最近では、Dressのラスト3曲をよくかけて夜を過ごしています。それ聴きながら野菜とか切ってるだけでも、幸せになれます。。。zzZ

はぁ。あこ様への愛が長くなってきて、もうここまで誰も読んでないんじゃないかって気もするけど、しかし止まらないので書きます!

夢を喰って生き、自費で制作し続けるってそう楽じゃない


私がこのアルバムに感動した理由は、ふたつ。一つは、これがイチゴの曲から5年後にインディーズで(つまり、制作と宣伝費のすべてが自己負担で)作られたアルバムだということ。

5年て、ながいよ。評価されて、サポートされてつくり続けられるのは普通のことだと思う。(もちろん、どんな環境でも良いものを作り続けることは、難しいことだけれど)

でも、インディーズのアーティストの活動なんて、レーベルもプロデューサーもついて、PRも売り出しもしてもらって自分は必死に自分の音楽と向き合えばいい──なんて整えられた環境のど反対。「制作」って、純粋に音楽作ることにかかる費用だけじゃなくて、それをする機会費用だって必要。音楽や芸術で生計を立てることの難しさなんて今さらだけど、「作ったものでまた作る」を音楽一本で回せるのは、本当に一握り。インディーズなんて、バイトして生活費を稼ぎながら、制作費貯めて、「これこそは・・・!」って思って、CDを出して。そしてそれをプロモーションするのも自分の費用・・・それがインディーズ。

あこちゅあ、これまた手作り感溢れるトーク番組みたいなのをYoutubeで配信していた時に、「音楽といえば」のパネルで、「ポップス・学校・びんぼう」って書いてたくらいだし・・・(涙)


あこ様のSNSやYoutubeチャンネルを年代遡って追いかけると、自分の芸術をゴリゴリ貫くだけじゃなくて、こういうトークコンテンツも含めて一生懸命発信する工夫も沢山してきたことが見えるんです。で、でもこのPVの再生回数ろくじゅう何回とか、なんか、いろんな意味で、せ、せつないです。。。

別にこれが千回再生されるべきコンテンツだなんて思ってないけど、これ以下にくだらない全国ネットの深夜番組とか、いくらでもありそうじゃないですか・・・。

アーティスティックなあこ様も、人の子なので、作ってりゃ幸せってほどおめでた人間ではなく(そんな人間いないと思うし)

“だれにもわかってもらえなくても ぜーんぜん平気 なほど
クリエイティブする ということに対してストイックにもなれない”
“でもやっぱりドキドキすることをやる、好きなことをやるなかにしか救いはない”

とたまにNoteやTwitterやつぶやきながら、それでも、アルバムのレビューにも使われていた形容詞ごとく、マイペースにあこ様は制作を続けます。

そうして32歳を迎えたあこ様が作ったアルバムDressのラストソングは「32才」というのですが・・・

私は、クローゼット時間・チャイム・からのこの曲がアーティストあこちゅあの真骨頂だと思います。ドリーミーで幻想的な音世界で人の心の柔らかいところに触れるような曲の後に、ポップで、だけどロックなこの曲で締めるところが、なんとも!

あこちゅあって、ふわふわ虹色キャンディーみたいな表層で包みながら、その奥にあるものすごくロックで。

32才、まだ夢を見ています

あこちゅあって、こんなに才能あって、もらった曲歌ってる以上にこんなにいろんなことができて、こんなに独自の世界観を表現してきて、存在にもこんなに魅力があって、有名大型アイドルユニットの一員だったら彼女の頭の先から足の先までの1センチ四方をどっかちょっと切り取っただけでもキャラ立ちできそうな個性を持っていて、それでも商業的な結果に恵まれてきたかというと、そうとは言いづらいアーティストだと思うんですね。

「32才」は、そんなあこちゅあがこれまでのアーティスト人生を踏まえてその上で歌う歌だからハートを撃ち抜かれる。

この曲は、多くを語らないミニマルな言葉で「社会」や「大人」に対する風刺やあこちゅあの信念が表現されていて、でもそれをアツく固くじゃなくて、こんなポップなメロディと音にくるんで、ふわふわと表現できちゃうのが、あこ様なんですね。

いや、これ、にじゅういくつのアーティストに言われても重みないけど、

夢もものさしも使い古された言葉だけど、

これだけオリジナルな表現活動やってきて、

これだけ才能あって、これだけ尽力して、それでも音楽一本で余裕で生きられるようにはならなくて、それをわかった上で32才の彼女が歌うから、重みがあるんですよ!!!!!!

32才。夢か、現実か?


”おなかはふくれない”ってこれまたかわいい表現をしているけれど、戦時中でもない時代の私たちは、ほんとうに「食べれるか、食べられないか」が基準の生活をしているわけじゃない。“おなかはふくれない”は、“お金はないけど”で、

30代になっての「お金」って、目の前の税金や家賃を支払えるか否かだけでもなくて──日々臨時勃発する不測の事態で老いていく親の医療費や介護費を払ってあげられるか、子供の教育費をどれだけ出してあげられるか、友人や親族の冠婚葬祭費用を不安なく出せるか、とかでもあって、「持ってるお金の額」はルミネで変えるものの範囲くらいだった頃から、家だとかこれから50年の人生の体感を恒久的に左右していくような買い物の話にもなりはじめ。

10代・20代だったら、若さと勢いと「未だ見ぬ可能性」をかざして「正しさ」を蹴飛ばすのもまだ簡単だけど。

そうやって長いこと「夢」を追いかけて、できること全部やって30過ぎて、
若さはずっとは続かないと悟り、自分を信じる勢いやエネルギーも無限には出てこないとも知り、「未だ見ぬ可能性」も、明日、来年孵ると信じ続けた可能性も、もしかしてずっと孵ることはないのかもしれないと思う現実の前に、人は「正しさ」の力に揺らぎだす。

究極の二択じゃないのが一番良いけど、「夢」を見続けたくても、みじめにならないことも大事で、安心や安定の価値もわかるようになり、生き方の帰路にもう一度立つのが、「32才」。

でもあこちゅあは言う、

“誰かの正しさに迷ったりもする”

それでも

“最後の最後に 残るものだけが好き”
“まだ夢を見ています”
“まだ夢を見ていたい”

***

「数年後、武道館でライブしてるかもね」と言った友達は、「34歳なの?それくらいまで熟成すると、プロデューサーの才能の方があるのかもね。そんなに色々できるんだったら」と言った。

そら、まあ言わんとすることはわからんでもないが、わかりたくないので、

「・・・ポップスって若くなきゃだめなの?」

と聞いてみたところ、

「現代アートとかだったら年齢とか関係ないけど、ポップスみたいなのだと、やっぱりそうなんじゃないのかな?」

との、現代アートを愛する彼らしいお言葉が。


でも、違うの。


彼女のMVや彼女の歌声に心奪われているファンとしては、あこちゅあがプロデュースした他の誰かじゃなくて、あこが楽曲提供した他の歌手じゃなくて(それも良いけど)、あこちゅあによるあこちゅあが、まだまだ見たい!!!!!!

でも、壁に向かって作品作り続けられるアーティストなんて、いないから。

だから、彼女の創作への心の炎が守られるよう、世間の雨風の中で消えてしまわないよう、彼女のアートがたくさんの人に見てもらえることを願う。ひっそりと。


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