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【part10】ツレに対してついた「世界一どうでもいい大嘘」の話。

付き合いたてのころってどうも不要な気遣いばかりをしてしまう。2年以上前、私はツレに自分が行きたい場所もろくに提案できなかった。

誘い方が分からない

当時私はツレと付き合う前、「彼氏ができたら行きたいところ」とかそういう妄想も人並みにしていて、その中のひとつになぜかディズニーシーがあった。

正直アトラクションに関しては富士急ハイランドにあるものみたいなスリル満点のジェットコースターが好きだから、ディズニーシーだと少し物足りない。好きなキャラクターとかも居ないし興味ない。

それでも私が行きたかった理由は3つ。
・ディズニーシーの景色(街並み)が好きだから
・ご飯が美味しいから
・お酒が飲めるから

景色に関しては特に夕方。まだ日が落ち切らない時間帯の、各所ライトアップが始まってすぐの街並みは、なんだかマグリットの「光の帝国」みたいでとても良い。なんなら何もせずにずっとそれを見ていたいくらいには好き。

あとはレストランのご飯もだけど、軽食(特に浮き輪まんとかブラックペッパーたっぷりのスペアリブとか)も美味しいし、何しろビールが飲める。だからランドではなくてシーじゃないとだめ。

美味しいもの食べて、ほろ酔い気分で綺麗な街並みを見ながらぼーっとできるなんて、私にとってはなんとも素敵なことだ。そして好きな人が隣にいてくれるのであれば、さらにこの上ない贅沢だ。

ディズニーでも現実しか見れないタイプではあるけれど、他の浮き足立っている人に紛れられるのも良い。普段スカしている自分でもなんとなくハシャぐことができるような気がする、そんな場所。

とにかくその当時、私はどうしてもツレとディズニーシーに行きたかったのだ。



照れるんだもの

困ったのがその切り出し方である。

付き合いたてあるあるかもしれないけど、私はなぜか「誘ったらめんどくさいとか思うかな」とか「歩き回るの疲れるよな。付き合わせるの悪いかな」とかそういう、今考えたら本当に謎の遠慮を発動していた。

今なら「行こうよ」のひと言で誘えるのに。

つまり「自然に、相手も気を遣わず、何なら半ば強制的に、それなりにディズニーに行くことに対して大義名分がある誘い方」を私は模索していた訳である。

とりあえずある日のランチ中に、それとなくディズニー耐性を確認してみる。
「ねえ、ディズニーとか行ったことある?」
「あー、だいぶ前に行ったっきりかなあ。」

どうしよう表情から何も読み取れない。本題入る前に玉砕しそう。

「だいぶ前」が具体的に何年前でそのときは誰と一緒に行ったのか、それが楽しい思い出だったのかそうじゃなかったのか、なんてことも聞けない。
どうした、曲がりなりにも営業マンだろお前。

「ジェットコースターは乗るんですか?」
「うーん、そんなには乗らないかなあ。」
「そうなんですねー。」

どうしよう私、全然関係ないこと聞いてる。えいや!って誘えば良いだけなのに。

優しい人だから私が行きたいって素直に言えば絶対この人乗ってくれるのはわかってるんだけど
いや、でも、電車乗ってわざわざ舞浜まで行く労力も、
到着してから「どの順番で何見て回る?」とかいうそういうコミニュケーション自体もめんどくさいとか思われてたらどうしよう。
そして私でも歩き疲れる園内をこの人引きずり回していいのかしら。
もしかしてアフターシックスとかでいい人?
いや、クーポンの使い手であるツレとしてはフルで楽しまないともったいないとか逆に言いそう?
あ、どうしよう。

しばらくそうやって頭の中で軽くパニックになりながら、最終的に絞り出した私の誘い文句がこれである。

「か、会社の忘年会のビンゴでディズニーのペアチケット当たったんだけど、一緒に行ってくれません?」

ああ私、今世界一どうでもいい大嘘をいている。


ネタばらしは雑で結構

「終わり良ければすべて良し」とは本当その通りだな、と思うのだけど、ツレがディズニーシーでどんな顔してたかとか、楽しそうにしていたかとか、正直全く覚えていない。なぜなら、なんとも微妙な終わり方をしてしまったから。

結局そのときは昼過ぎに現地到着するように行って、行ったら行ったでちゃんとご飯も食べたしビールも飲んだ。アトラクションも二、三乗って、ちゃんとキャーキャー言ってきた気がするけど、さすが私というか、最後にそのポンコツぶりを発揮した。

夕方に差し掛かって、そろそろライトも付く頃かと思われたそのとき、なんといきなり閉園アナウンスが流れたのである。サイトを見て確認してみたら、その日は時短営業の記載。

普段22時近くまで花火だってバンバン打ってるクセに、その日に限って17時半には完全に外へ出ないといけないらしかった。

あーすごいもったいない!これからが景色が一番綺麗な時間だったのに!

私は何も言わずにとぼとぼ歩いた。帰りしな、ツレには追い討ちをかけるように「ちゃんと調べてからこような」って言われた。言ってることはその通りだし紛れもなく私のせいなのに、なんかすごい嫌な気持ちになった。

一番楽しみにしていた景色が見られなかったことも、嘘ついてまでツレに付いてきてもらったのにフルで楽しめなかった不完全燃焼感も、時短営業を知らなかった自分の計画性のなさに対する恥ずかしさも、なんだか一緒くたになって腹の中でうようよ、もやもや。

嫌な気持ちついでに、今回のチケットが景品だと言ったのは嘘だったことと、嘘ついてごめん、ってことをさっさと雑にツレに伝えて、それ以上はもう何も言わなかった。
もうその時の私は不機嫌で、わがままで、周りの声をシャットダウンするモードになっていた。


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多分私たちは、好きなものも性格も、そうやって少しずつ知っていったし、これからもそう。
基本的に好きなものは長く変わらない人種の2人でもあるけど、お互いが変化していったとしても、それを共有して受け入れ合うんだと思う。

ちなみにこのディズニーの一件から、私は2人で出かける際の段取りは、ツレにお願いすることにした。
ポンコツは下手に手を出さないに限る。

とはいえ今行ったらまた違う感じで楽しめる自信はある。ちょっくらひと声かけてみようかな。

今度は一緒にサイトを見ながら、2人でしっかり楽しめる日に。











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