【short ver.】かわさきジャズ2019 まらしぃwith初音ミク、鏡音リン piano acoustic live

1人のピアニストがにこやかに力強くピアノを奏で、2人のボーカロイドがハーモニーを重ねる。
11月17日、「かわさきジャズ2019」最後のプログラム、「まらしぃwith初音ミク、鏡音リンpiano acoustic live」での光景だ。次元を超えたコラボレーションに会場が魅入った。

まらしぃがソロで登場した第一部。可憐な『メルト』のイントロで開幕を告げると、1曲目から強いタッチと緩急で観客をボーカロイドの世界に惹き込む。

ピアノライブでは珍しいペンライトの使用も歓迎したまらしぃは、自己紹介もそこそこに曲数をこなしていく。連打が激しい『ロ一リンガール』、身体でリズムに乗りながら演奏した『エイリアンエイリアン』、右手が高低を行き来する『マトリョシカ』と勢いのある3曲を激しく繋げる。観客の手拍子も加わると、まらしぃは笑顔を見せた。

『からくりピエロ』をしっとりと弾き始めたまらしぃは、ふと客席に顔を向け、嬉しそうに「本当に綺麗」とサイリウムの海を眺める。お洒落なメロディーが熱を帯び、そのまま『ウミユリ海底譚』へ。ボーカロイド曲との相性がいい、鋭い高音のオクターブが会場に響いた。

「コンサートのタイトルにジャズが付いているのに、僕ジャズ弾けないんですよ」と笑いを誘ったまらしぃは、それでも1曲くらい、とジャジーにアレンジした『シャルル』を披露する。落ち着いた雰囲気を持ちながらも時々入る強いアクセントが情熱的だ。曲終盤になるにつれ、大人っぽさのあるアレンジは高揚し、激しく会場を震わせた。

『砂の惑星』の複雑な構成がピアノ1台によって見事に絡めとられる。人気ボカロ曲の数々が彼のピアノ1台で見事に演奏されることによって高まった熱は、原曲の疾走感を更に増した『六兆年と一夜物語』によって第二部に繋げられた。

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休憩を挟んだのち、幕が上がる。3Dモデルとなって映し出されたミクとリンが見えるや否や、歓声が湧く。自己紹介を流暢に行うと、リンは一旦消え、ミクが『cat's dance』を披露した。猫をモチーフにした楽曲を、猫を真似た愛らしい仕草をしながら伸びやかに歌っていく。平坦な機械らしさはなく、少しのふくよかさを帯びた声は滑らかに音程を紡ぐ。猫の鳴き声を甘く真似ると、まらしぃ含め会場中の頬が緩む。

画面越しのミクに会いたい気持ちを曲にした『空想少女への恋手紙』では、披露前からまらしぃは大喜びである。時々まらしぃの方を向きつつ、柔らかく歌うミクは、嬉しそうに目を細めていた。
“一生のお願いが ここで叶えられるなら 君に届け 出会ってくれてありがとう”。まらしぃがミクに向けて書いた歌詞が、ミクによってまらしぃや観客に向けて届けられる。夢が叶った瞬間だった。

興奮冷めやらぬまままらしぃが弾いたイントロは『チョコレイトディスコ』。ミクにより振り付けがコピーされる。キュートな振る舞いに会場は見入った。

ボーカルの役目をバトンタッチしたリンは『天照ラセ』『炉心融解』『ロストワンの号哭』を連続で披露。
ピアノとボーカルのシンプルな構成にも関わらず力強いリンの歌声が無邪気に駆け抜ける『天照ラセ』からしっとりとアレンジされた切なげな『炉心融解』。ぐっと会場を惹きこみ、『ロストワンの号哭』でまらしぃの弾く高音とリンのボーカルが混ざり合う。

再び姿を見せたミクと3人で『千本桜』を顔を見合わせながら楽しそうに演奏する。息を合わせてフィニッシュをし、ボーカルの2人は光に消え、ピアニストは大変満足そうに去っていった。

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熱っぽく鳴る手拍子に迎えられ、まらしぃとミクがアンコールに姿を現した。まらしぃの新曲、『霖と五線譜』を披露するにあたって、曲ができた経緯を説明するまらしぃ。そのMCをミクが頷いたり微笑んだりとリアクションを取りながら聞く。アコースティックでナチュラルなピアノの音色が、ミクの歌う話し言葉のような歌詞にマッチする。この日を思って作ったという新曲を目の前でミクに歌ってもらうことができたまらしぃは満面の笑みを浮かべていた。

「本当に最後の曲です」とミクに告げられ、最後に披露されたのはまらしぃが初めて作曲したボカロ曲、『夢、時々…』だった。途中からリンも混ざり、2人の声が重なってピアノに乗る。透き通る高音をコントロールするようにして手を動かすミクとリン。しっとりとした曲調は、高揚しながらも繊細な、幻想のような空気を紡いだ。

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まらしぃとミクがステージからいなくなると、歌い足りない様子のリンはアカペラで『アマツキツネ』を歌い始めた。ゆったりと、息継ぎをしながら伸びやかに歌う。途中からはまらしぃがピアノを重ねていく。
しっとりと、それでも力強く歌い終えたリンが光に消え、夢のような時間は幕を閉じた。