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📖読書記録📖『がらくた屋と月の夜話』

読書紹介記事を書く青沼りんです📗

今回は、仕事も恋もうまくいかないことに悩むOLが飲み会の帰りに道に迷った先で骨董品屋と老主人に出会ったことで『モノ』に対する価値観が変化していく一冊をご紹介したいと思います


●今回ご紹介する本『がらくた屋と月の夜話』

著者 谷 瑞恵
発行 株式会社 冬幻舎
2015年7月31日 第1刷発行


●あらすじ

「ついてる人生を送れますように」と名付けられたが、現実は仕事も恋もうまくいかずついてない人生を送っているつき子。

ある飲み会の帰りに道に迷ってしまう。その先で見つけたのは、夜の公園でひっそりと開いていた骨董品を売るの露店だった。

そんな中、つき子は不注意で骨董品を壊してしまう。

さらに運の悪いことに、つき子が身につけていた指輪をなくしてしまう。

大切な商品を破損してしまった罪悪感と指輪の捜索のために、つき子は河嶋骨董品店の手伝いをしに夜の公園に通うようになる。

しかし、トランクに入っている商品は、古い時刻表、レースの切れ端、椅子の脚といったどこをどう見てもガラクタばかり。

こんなものが本当に売れるのか疑問を抱くつき子だが、老店主の河嶋曰く、どんなガラクタでも誰かに必要とされている大切なモノで、それに秘められた物語がある。それを売るのがこの店の役割だと老店主はいう。

ある夜は母親との関係性に悩む女性を、またある夜は対人関係に悩む工業高校の生徒を。

彼女たちは半信半疑ながらもわずかな救いを求めて骨董品を購入し、河嶋から語られる『物語』を聞く。

すると不思議なことに、忘れてしまった大切ななにかを思い出し、購入者たちは心が救われた気持ちになり前へと進めるようになっていく。


そんな中、つき子は近所の工業高校の教師で河嶋の息子と名乗る天地と出会う。しかも天地はなぜかつき子を知っているようで…。

河嶋骨董品店に関わっていくうちにつき子は、折り合いの悪そうな河嶋と天地の親子関係からさらに複雑に絡み合った過去の因縁に足を踏み入れてしまう。



本作の主人公であるつき子は、世の中とは少しズレていて生き辛さを感じていました。
ところが河嶋骨董品店に出会ったことで『ブロカント』というものに興味を抱くようになります。

ブロカントとはフランス語で「古道具」という意味で、アンティークとまではいかないものの、長年使われてきた食器や家具、生活道具などを指す言葉。日本語では「がらくた」という意味に近く、蚤の市のようにヨーロッパでは「物を大切に、長く使う」というひとつの欧州文化となっています。

日本でも「モノには心が宿っている」という物を大切にするという考え方があるので、『ブロカント』についても受け入れやすいと思います。

にせものもガラクタも要らないものはなにひとつないと言ってくれているような1冊だと思います。


また、物語によって救われていく人がいる中でつき子がなくした指輪はなかなか見つかりません。

その指輪は、月子にとって見つからなくてもこれもまた縁なのかもしれないと思いつつも探さずにはいられない、そんな執念を背負った曰く付きの指輪でした。

しかし、その指輪が人々の不思議な縁を導き、心を救うのでした。



●本作の名言

『にせもにでもガラクタでも、それは自分だけの物語を持っている。(中略)欠けたところも、傷も、自分だけにしかないしるし。だまされたり助けられたりしながらもまれて、新たな輝きや魅力を得たブロカントだ』(本文引用P273)


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