フリーランス、不安。なんで大学院までいったのに、フリーランスやってんだろ。

現役で国立大学にはいり、大学院まで出て研究職になった。

元々は医者を目指していたが、断念。それでも医療に携わりたいと考え農学部に入り、ウイルスの研究をして研究職にまでなった。

当時の私はとても嬉しかった。医者は諦めたがこれで薬の開発や販売に携われる。安定性試験だってやれるし、医療の現場ではないが裏方からでも何かできるだろう。

医者ではないが、力になれることがあるさ。

キラキラとした23歳のサワキ少女、この時に初めて現実と向き合うことになる。

実際のところ、研究職は辛かった。楽しいなんてものではなかった。楽しい人もいるだろうが、私にとっては地獄だった。きっと職場環境が最悪だったのだ。自分の手際の悪さにも絶望した。毎日毎日仕事をしながら、「自分はこの職業に向いていない」とただひたすら考える日々。

研究職についてもこうだったのだ。きっとあの日医学部に受かって医者になったところで、私は向いていなかっただろう。

何も向いていない、仕事ができない。上司に怒られながら毎日23時まで仕事をし、次の日は朝6時には家を出て8時から仕事をする。お昼が食べられない日もある。辛い。会社に行きたくない。苦しい。帰りたい。

それでも、大学院まで行かせてくれたのだから、頑張らなければ

ずっとずっとそう思っていた。親にしてもらったことが枷となり、とにかく自分の心を痛めつけるドMなことを毎日のようにしていた気がする。

今思えば、何がしたかったのか。本当に医者になりたかったのかもあやふやだ。私は何をしたくて、こんなに毎日仕事をしているんだろうと、本気で思った。

向いてないし、先輩にも上司にもたくさん迷惑をかけている。別グループにいる同期はあんなに楽しそうに仕事をしているのに、どうして自分はこんなにできない人間なのだろう。毎日のように思っていた。毎日のように、トイレで泣いた。

ある日、失敗が立て続けに起こり、意気消沈していた時に全くその仕事と関係のない上司にこう言われた。

「こんなのもうクビだよクビ」

それを言われて、私は大学院まで出たのになんでこんな人間なのだろうと壊れ、実際に耳が壊れ、片耳が聞こえなくなってしまった。今は回復しているが、今思えばあれは鬱だったのかもしれない。今思えば、そうだと思う。

髪の毛は抜け落ち、はげていき、会社につけばまずトイレで吐き、階段を上がれないほどの腹痛に見舞われ、それでも立ちながら実験をし書類をまとめる。

毎朝同じ上司(クビ発言の上司)に大声で怒られる。書類を提出すればボールペンで書類を叩きながら怒られる。(そのせいでボールペンでコツコツ叩く音に敏感に反応するようになった。)始業時間まで2時間もあるのに仕事を進める。昼ご飯を食べていても仕事を渡される。帰ったら勝手に机の中を見られて、途中までまとめていた書類にチェックをいれられる。朝つけば、付箋がはられた書類が山のように机の上に置かれている。机の中にいれていた仕事もすべて。


それも全部、自分ができない人間だから。


どんどん仕事へのモチベーションがなくなり、パフォーマンスも悪くなった。普段失敗しないものでも失敗し、別の先輩にまで怒られる。悪循環すぎた前職での私は、ただひたすらこう思っていた。

大学院まで出たのに、私は何をしているんだろう

学歴とかそういうのは関係ないが、頭はただひたすらこれだった。親に申し訳ない、学費も出してもらったのに、こんなになってしまった自分が恥ずかしい。

しかし、当時まだ彼氏であった旦那は、気づいていた。このままじゃ私が自殺すると本気で思ったのだろう。彼が、「俺、今より年収高い職場に転職するから仕事辞めて、ずっとやりたかった文章書く仕事に挑戦してみなよ」と言ってくれた。

これがなければ、私は多分、本気で自殺していたかもしれない。

実際に旦那はかなり年収をあげてくれて、私はフリーランスで楽しく仕事ができている。しかし、フリーランスで働いている今もよく思う。

大学院にまで行ったのに、なんでフリーランスなんかしてるんだろう、と。

フリーランスという聞こえは良いが、最近の世間の事情を知らない人には、フリーターとだって言われる。模索しながら働いてはいるが、毎日不安が押し寄せるし。

あんなにお金をかけてくれた親に申し訳がないと、今だって思う。

それでも、今までしたことが報われなければ、生きていちゃだめなわけではないし、今までしたことが悪い影響を及ぼすわけではない。

きっと、自分が大学院に進んだことがマイナスに働くことはないのだ。

最近はそうやって前向きに思うようにしている。フリーランスは不安との戦いだ。今は良くてもいつ仕事がなくなるか分からない。毎日毎日その不安と戦っている。それでも、あの頃のように「頑張らないと、頑張らないと」という気持ちは消えた。「頑張らないと」という感情は、自分自身を苦しめるだけの言葉だと、フリーランスになって理解した。

きっと、いつかは。
あんなに頑張ったのに、という挫折が、あんなに頑張ったから、となるだろう。

私はずっと、そうなってほしいなと私に期待している。

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