マッチングアプリ体験談:5人目
5人目:生理的に無理な男
仕事:大手IT企業
年代:40代前半(年上)
アプリ:Omiai
初対面:和食コース料理@個室
私にはもったいない高スペ男性だった。高収入で多趣味、優しくて太っ腹。大手IT企業の部長さん。
顔があまり好きになれないのと、身長が私とほぼ同じなのが気になったけど、メッセージに嫌なところが一つもない。私の場合、中身を好きになれば見た目はどうでもよくなることが多いので、まずは会ってみることにした。
初回デートは彼が選んだお店で創作和食フルコース。個室&コース料理は、話が弾まなかったら逃げ場がなくて困る…。でも、私とじっくり会話したいと思ってくれているんだろう。うれしい。
会ってみた感想はこうだ。
悪い方向への「なんとなく」は大抵当たる。4人会って疲れていたこともあり、初回で違和感を感じたら即断りたかった。
でも、一度、一人の男性ととことん向き合ってみるべきだとも思っていた。結婚までたどり着く人たちは、インスピレーションに頼り過ぎず、長い目で相手の中身を知る活動をしているから。
彼は、プレゼントしたオイル漬けのチーズに目を輝かせてよろこんだ。その笑顔が可愛らしくて、もう一度会ってみたくなった。
2回目:焼肉
一ヵ月後、都内で焼肉を食べた。
「入り口が分かりにくいところにあるから、迷ったら迎えに行きます」
「お肉、焼けましたよ。はい、どうぞ」
「食べられないものがあれば、僕が食べますよ」
彼はどこまでも紳士的だった。
優しいだけではなく、たまに冗談を挟んでくる余裕がある。私がうまく話せないときは、最後まで黙って聞いてくれた。きっと、仕事でもこうやって部下の話を聞くのだろう。
彼は、今回も当然のようにお会計をしてくれた。
「この子、お財布出すかな?」と試す感じや、「男はお金かかってつらい…」という後ろ向きな感じ、「男なんだから当たり前」と見栄を張る感じはない。なんというか、カラッとしている。
収入的に余裕があるからというのもあるだろう。でも、彼は誰かとの時間にお金を使う楽しみを知っている人な気がする。そして、本当に払って欲しいときは、裏表なく「ここは出して」と言いそうだ。そういう人は好きだ。
LINEがストレス
出会って三ヵ月目。私は彼とのLINEにストレスを感じ始めていた。一向に距離が縮まらないのだ。
なんか、こう、以心伝心する回数が増えたり、少しタガを外した自分を見せる機会が増えたり、相手の素が見えてきたりしてもいいと思うんだけど、それがない。当たり障りのない話題で何とか会話を繋げている感じ。
映画、登山、仕事…、共通の話題はそれなりにあった。でも、それはただの情報交換でしかない。趣味友達とやればいい。上澄みを掬い上げているだけで、相手の本質に触れないやり取りだけなんて退屈だ。
会話を彼任せにせず、突っ込んだ話題をぶん投げてみたり、くずした言葉で話したりもした。それでも、素が見えてこない。仮面を感じる。
自分を出すのに時間がかかる人なのかもなぁ…。
3回目:映画館
焼肉から一ヵ月後、映画館へ行くことに。
気が進まない。でも、彼のことを知った気になるのは早い。もっと会って深堀するべきだよね。
彼は私がポップコーンを食べたがっていたのを覚えていて、一番大きいのを買ってくれた。バターがたっぷりかかったやつ。約束を忘れない人だ!
触れそうな距離感が気まずかった。緊張からか?物理的に近づきたくないからか?後者だと分かっていたけど、私はその気持ちに蓋をした。
結婚に「好き」は要らないのか
もうLINEが億劫で仕方なくて、私は友人に相談した。
「ああ、返信しなきゃ…って思うんだよね」
「NG事項がなければ、また会ってみるべきだと思う」
「でも、なんとなく疲れるんだよ…」
彼はアプリで全然オンラインにならないので、他の女性とはやり取りをしていないだろう。次回のデートで告白してくると思う。困った、ちっとも好きになれない…。
「恋愛と結婚は違うよ。結婚に好きは要らない」
私は、よく聞くこのセリフが嫌いだ。
え、結婚に好きは必要だろ。好きでもない相手に一生メシを作れるか?子作りができるか?下の世話ができるか?(ずっと好きでいられるかどうかはさておき)
私は「幸せにしてあげたい」「大事にしたい」という意味で、結婚に好きは必要だと思う。ときめきという意味なら不要。
そもそも、私はときめき期間なんてさっさと終えたいタイプだ。キュンキュンなんて疲れるし邪魔。お互いのみっともない姿を見ても萎えない、むしろ愛おしいと思えるような、じんわり馴染んだ関係に早くなりたいと思う。
かたや、私の知人女性は、ときめいて恋に落ちることができたら「好き」であり、それは結婚に必要な感情だと言う。いくつになっても10代のような乙女心は大事なんだそう。
ネット上で「結婚に好きは必要か否か?」を議論している人たちを度々見かけるけど、こんな感じで言葉の前提が人それぞれ違うのだから、当然会話も噛み合っていない。相手が自分と同じ意味で「好き」という二文字を使っていると思うのは危険だ。自分の使う「好き」の意味が何なのかをちゃんと考え、分解し、具体的に言うべきだ。特に、ときめきという要素を含んでいるかどうかはきちんと伝えたほうがいい。
そういえば、外国人の友人に「結婚に好きは要らないって言う人もいるんだよ」と言ったら、「好きじゃない人となぜ結婚するの?おかしいよ」って言われた。真理だと思う。
4回目:ドライブ
さらに一ヵ月後の暑い日に、ドライブデートをすることになった。
車=個室、と考えるだけで憂鬱なのに、私は「なんか無理」という本能と、「相手を知るためにデートを重ねるのが正解」という理性の間で揺れていて、彼の誘いを断らなかった。
彼は納車したばかりの小さな車に乗ってやって来た。ターミナル駅から少し離れた駐車場に車を停め、駅まで迎えに来てくれたのに、汗だくの彼を見つけた私は労う気持ちより先に「嫌だ」と思ってしまい、そんな自分を心から恥じた。
でも、デートは前向きに楽しんだよ。お寺で抹茶を飲んだり、海鮮丼を食べたり、浜辺を散策したり。車内で、サントラから映画タイトルを当てる遊びもした。
彼は今まで一度も私に触れなかったけど、エスカレーターに乗ったときに帽子を褒めるふりをして、私の頭に触れた。
あ…生理的に無理…。
さすがにこの気持ちは無視できない。もう会うのはよそう。彼に失礼だ。
その後、彼は夕日の沈む海に私を誘導。しっとりとした雰囲気に告白の気配を感じる…。
結局、告白はされず後は帰るだけとなったが、彼が浜辺のレストランを予約していて、そこで食事をすることになってしまった。明日早いから夕食はなしでとお願いしてあったのに。
まぁいい、用意されたイベントは全力で楽しみたい。諦めの悪い私は、「まだこれから彼に興味を持てるかも」という一縷の望みをかけてディナーに参戦(?)した。で、結局、何も変化しなかったんだけど。
告白
翌日、LINEで告白され、私は正直に伝えた。
・〇〇さんのことを好きになりたくてデートを重ねてきたけど、恋愛感情が湧かなかったこと
・今後も気持ちは変わらないこと
彼は、「好きになれないまま付き合い、相手の女性を傷つけたことがあるので、気持ちは分かる」と言い、考える時間を二週間くれた。でも、考え直したところで何かが変わるわけはなく、またお断りすることに。
そのときの彼の返信はこうだった。
「二週間待ちました。私の時間も貴重です。会ってきちんと説明がほしかったです」
おおぅ…静かに怒っとる。怒るのはごもっとも。
でも、自分はLINEで告白したのに、会って説明を求めるのはどうなんだ?二週間の執行猶予を与えたのは自分では?って気がするけど…。
「最後に教えてほしいです。りんさんがアプリを退会したのは、私が断られたことと関係ありますか?」
私はOmiaiを一度退会していた。もう会いたい人がいなかったからだ。彼は、私が退会したことを「他に気になる人ができたから退会したのでは?自分はキープなのでは?」と思ったらしい。何だそれ。
私は正直な気持ちをすべて打ち明け、彼はそれを受け止めてくれたと思っていた。でも、心の中では別の理由を疑われていたのだ。言ったこと以上でも以下でもないのに、それを信じず深読みする人は苦手だ。経験上、常に笑顔で本音が読めない人や、嫌われるのを怖がる人に多い。
初対面で感じた、
は、こういうところだったんだな…。
なかなか好きになれなかったのは、私がこの違和感をずっと引きずっていて、彼を心から信頼できなかったからかもしれない。
とはいえ、今回は私に反省点が多い。自分の本音を無視して頭で恋愛しようとしていて何もかもがアンバランスだったし、映画デートが終わった時点で彼をリリースしてあげるべきだった。
彼は本当に優しくていい人で、絶対に頼れるお父さんになるので、素敵な女性を見つけて幸せになってほしいと思う。
この三つの教訓は、今後の活動で私の気の持ちようを変えた。こうすべきというしがらみから解放されて、もっと自由に自分らしく男性と会えるようになった。
婚活界隈で「好きって何?」「好きになれない」と悩む人をよく見かける。相手に対して興味を持つ努力はすべきだが、自分が自然と相手に興味を持てるかどうかも客観視してほしい。
そして、相手に興味を持てず、好きになれず苦しんでいるなら、その気持ちを素直に認めて次へ行こう。自分の気持ちを無視すると私みたいに遠回りしちゃうよ。
りん