自作を宣伝しまくるラノベ作家に言いたいこと。批評を許さないラノベ作家に言いたいこと。

最近、Twitterでラノベ作家の自作宣伝を目にする機会が多いです。

作家に限らず、編集者やレーベルのアカウントでも作品を宣伝しています。

中には作家兼バーチャルアイドルを名乗って面白動画を投稿するアカウントも存在します。

ラノベと全然関係ない猫やトカゲといったペットの写真をツイートして、その直後に作品の宣伝ツイートをするような方法を行うアカウントも見つけました。

「1巻の売れ行きが芳しくなく、このままでは2巻が出せないです。買ってください」とはっきりアピールしている作家も見かけました。

「ファンの皆様へ。ぜひ肯定的なレビューをして、通販サイトの平均評価を挙げてほしい」と呼び掛けた例も見ました。(なお、これは通販サイトの規約違反に当たる行為です)

「売れていないのは宣伝不足」 「もっと宣伝すれば売り上げも伸びるはず」

このような理論は正しいと思いますし、作者や編集者がそう考えるのも当然だと思います。

ですが、そんなクリエイター達に言いたいことがある。


そもそも作品の質が悪いから売れないのでは、と。


宣伝は大事だと思いますが「つまらない作品は売れない」という理論も正しいはずです。

買った作品が面白かったら読者は高評価、または宣伝をします。続きが出てほしい、または同じ作者の新しい作品を読みたいと思うのでそれは当然です。

逆につまらなかったら何もしない、あるいは低評価をする。実本ならば売却するという選択肢もあります。

発売してまもなく古本屋の棚やフリマアプリ、ネットオークションの市場に大量に並ぶ作品は「つまらない」「手元に置いておく価値が無い」と高確率で言えます。これは私の経験から来ています。

とある作家が自分の作品がフリマアプリに出品されているページのスクショをツイートして「〇ね!」とコメントした例がありました。
(伏字にしていますが実際の文章は冗談めいたもので、そこまでキツい言い方ではなかったです)

ある漫画家が「自分のサイン本を古本屋で発見してショックを受けた」というツイートをして話題になったこともありました。

ですが、つまらないと思った作品でも一生大事にしなければならない義務が読者にはあるのでしょうか。

面白いと思った本、読み返したいと思った本なら読者は手元に残します。自分の作品が可愛いのは分かりますが「次の作品は絶対本棚に並べさせてやる」と考えることは出来ないのかと言いたいです。

SNSで宣伝する時間があるなら「どこがダメだったかを見直して次の作品のクオリティを高めよう」と考えてほしいのです。


続けて、作者と編集者に言いたいことがあります。

「つまらない作品、売れなくて当然の作品を「買ってください」と宣伝してどうするのか」ということです。

宣伝はもちろん必要ですが「つまらない作品でも宣伝力が強ければ売れる」という現象は市場にとって好ましくない現象のはずです。

何より「つまらない作品があたかも面白い作品かのように宣伝されること」によって発生する弊害があることも知ってほしいです。

小学校の頃、クリスマスシーズン。私は両親にあるゲームをプレゼントしてもらう約束をしました。

PS2は叔父に貰ったもので、新品のゲームを買うのは初めてでした。

買ったゲームは『聖剣伝説4』。

スクウェア・エニックスのゲームだから、名作シリーズだから、と安心して買った人も当時多いと思われますが、

私が買った理由はCMを見たからです。両親に直接「これがいい」と伝えることが出来たからです。

買ってもらって、プレイした感想は「つまらない」の一言でした。同じ感想を持った人が多いことを後になって知りました。

これは極端な例、そして私の運が悪かったという話ではありますが、当時の私が「面白そうに宣伝されていたゲームがつまらなかったことに絶望してゲームが嫌いになった」というのも事実です。

その体験が「1本で6800円のゲームに手を出すのは怖い」と思って小説を読み始めた契機にもなっています。

本来売れるべきではない「つまらないラノベ」が宣伝されることによって似たような事態が発生するのではないでしょうか。


「ラノベって読んだこと無いな。オススメの作品だと宣伝されているから買ってみよう」

「面白くないな」

「もうラノベはいいや。つまらなかったし」

つまらない作品でもとにかく宣伝すれば売れる!という販売方法を繰り返していてはこのように、新規層が入り口で引き返してしまうだけではないかと私は危惧しています。

「そもそもラノベは初版の伸びが悪ければ打ち切られる。宣伝が7割」と思う人もいるかもしれません。

私はラノベを含めて、本を人並み以上に読みます。週に一度、新刊情報をチェックします。

タイトル、表紙、あらすじ、特設ページ、試し読みを見て「これは面白そうだ」と思った作品はチェックします。主に「購入確定」か「レビューを見てから購入」の二種です。

30分もあれば終わる作業ですので欠かさずにやっています。

そのようなラノベを趣味とする人間にとって、発売後に宣伝ツイートが流れてきても「じゃあ買うか」とはなりません。いくら宣伝しても無駄です。

同じような人も多いのではないでしょうか。そもそもSNSで宣伝して売り上げに貢献するのでしょうか。

そんな時間があるのなら新作を、あるいは既刊の外伝なりを執筆して公開して欲しいと思うのです。宣伝と評価はつながりません。売る為の宣伝ではなく、評価を変えるための行動をしてほしいのです。


ここまで読んで「つまらない作品は宣伝するな、というのはあまりに暴論だ」と思った方も居るかもしれません。

確かに暴論かもしれませんが、合わせて伝えたい下記の文章を読んでから判断して頂きたいのです。

もう一点、合わせて作家の皆様に言いたいことは「読者に作品をつまらないと評価する権利を与えてほしい」ということです。

作家や編集者は「これなら読者が面白いと思ってくれるはず」と自信を持って作品を世に出していると思います。

親として自分の子供である作品が可愛いというのはわかります。

とはいえ、好みの差はあるにせよ読者にとって「つまらない作品」というのはどうしても出てきます。

そして、つまらないという感想を自分の胸だけに留めておく義務が読者にはあるのでしょうか。

SNSに、通販サイトに、アンケートハガキで、同じ消費者に、または作者や出版社に感想を伝える、それのどこが悪いのでしょうか。

そう私は思ってはいるのですが、今ではそういった批判、批評を許さない空気になっています。

「作家は思っている以上に繊細です。水を与えなければ枯れてしまいます」

「心無い読者の批判で筆を折る作家がどれだけいることか」

「ラノベを批評したら作者に個人情報を晒された」

「合わないと思った人は何も言わずにブラウザバックしてください」

「ラノベレビュー動画が削除された」

「ライトノベルに評論家など不要」


ネットで検索すると出てきたページの見出しの文章です。とにかく今は批評を許さない空気になっている。それはとても恐ろしいことだと私は思っています。

どんな作品でも「これは面白い!」と作者は、編集者は、出版社は宣伝しています。

編集者は営業も仕事の一部、宣伝をするのは当たり前です。作家もその宣伝に追随するのは当然です。それはわかります。

それに対して、作品を買った者が「面白かったです」と返すことしか許されないなんて余りにも寂しいと思います。

せめて消費者間では「これはイマイチだった」「これは人を選ぶ」と様々な感想を言わせてほしい、購入する以外の方法で市場に介入できる方法を与えてほしいのです。

前述した私の買い方で「レビューを見てから購入」と分類された作品は購入直後にチェックをするのですが、最近はただ「面白かった。☆四つ」という大味すぎるレビューしか見つからないことが多く、参考にならないのです。

詳しいレビューが存在しなければ購入も見送る形となります。博打として買うくらいなら購入確定と判断した作品を優先します。

「ここが良かった、ここが悪かった。こういう展開が好きな人には合うけど。こういう要素が嫌いな人には合わない」というレビューがあっていいはずなのに、最近のレビューは「ここが悪かった」「こういう要素が嫌いな人には合わない」と言う部分が削られているように思えるのです。

私自身もラノベを趣味とするものとして、「ここはよかった」「ここは不満。こうした方が良かった」「この展開には納得できなかった」と買った作品のレビューをあるブログに細々と投稿しています。

(この投稿によって自身のブログを宣伝する気はないのでそのブログの名は伏せます)

先日、ブログに対して「批評をやめてほしい。私が好きな作品が30点と評価されているがその評価はあまりに的外れだ。ちゃんと読んでいない。貴方のレビューのせいで売り上げが落ちたら続きが出なくなる」というコメントをいただきました。

仮にそのコメントした者が同じラノベを趣味とする人間ならば「貴方が100点満点でした。続きが読みたいですとレビューすればいい。私もそのレビューを参考にして作品を読み返すかもしれません。そして評価を改めるかもしれません」と返答したいのです。

作者のコメントであるのならば「見つけていただけで嬉しいです。私なりに批評させて頂きました。駄文ですが参考になったら幸いです。次こそ面白いと思える作品を作ってほしいです。待っています」と返答したいのです。

今まで私はラノベを評価して、時には辛辣な感想を述べたこともありました。それを棚に上げて「5000字近く書き上げたレビューなのに、ちゃんと読んでいないと言われて傷ついた」と言うつもりはありません。レビュアーがレビューのレビューを拒否することは許されないと思います。

ただ、このようなレビュー潰しの風潮が強まり、消費者間で意見交換できる場を奪うことがラノベ業界にとってプラスなのでしょうか。私はマイナスだと思っています。


まとまりのない文章ですが、今のラノベ業界に対して私の考えをぶつけました。


仮にSNSを使ってしつこく宣伝した結果売れたとしたら「本来売れないはずのつまらない作品が売れてしまった」という可能性がありうることを作家と編集者の皆様には理解していただきたいのです。

その「つまらない作品」か「面白い作品」をハッキリさせるためにも読者のレビューは受け止めて頂きたいのです。

過剰な宣伝によって「つまらない作品」を掴まされる読者も存在します。

私はつまらない作品を掴まされた失望を無駄にしないために批評をネットで公開しているのに「アンチに叩かれて心が折れそう」「モチベが下がる」などとクリエイター達に言われるのはこちらの方が心が折れそうです。

作家や編集者の心無い意見によって、読者の心が折られることもあると知って欲しいのです。


〈2020.8.1追記〉

この記事に対して様々なコメントが届きました。肯定的な意見もありましたが、否定的な意見の方が多数派のようです。

そもそも私の主張が伝わっていない、曲解されているのではという不安が浮かんだので改めてこの記事を要約します。(私の文章力不足のせいですが…)

1.ラノベ作家が自作を宣伝しまくる

2.宣伝の効果によって初めてラノベを買う人が現れる

3.初めてラノベを買った人が「つまらない」という感想を抱いたとする

4.つまらないという感想を抱いた人が「これは自分に合わないというだけなのか?それともラノベってこんなもんなのか」と疑問を抱く

5.その点を確かめる為にネットでラノベの感想や書評を検索する

6.検索して出てきたのは宣伝ツイートや好評ばかり。否定的な意見や詳細な批評が存在しない。

7.批評が無いために自分に合わなかったのか、それとも自分が買った作品がハズレだったのかが判断できない。

8.その結果、初めてラノベを買った人が「この程度のものなのか」と作品と読者層を含めた業界全体に対して悪い印象を抱いてしまう。たまたま質の悪い作品を引いた人がラノベ全体をつまらないものだと勘違いしてしまう

9.この現象によって新規の読者層が入ってこず、業界全体が衰退していく

私はこの現象を危惧しているために「ラノベ作家は宣伝に頼らずに作品の質で勝負しろ」「読者にも批評をさせろ」と主張しているのです。

6の段階で批判的な意見や詳しいレビューを発見したのであれば「たまたまこの作品がハズレだっただけか」「主人公が弱いパターンを好む人もいるのか。自分には合わないだけか」とラノベに見切りをつける事態は回避できるはずです。その為にも読者の批評は業界にとって必要なはずです。

この現象は初めてラノベを買う人だけでなく、普通の読者にも当てはまると思います。

「このラノベがすごい!」「本屋大賞受賞!」といった大々的に宣伝されている作品を買って「つまらないな」と思った人が「一押しの作品がこれなら全体のレベルは知れているな」と思うのではないでしょうか。

作品を売る為に宣伝が必要という主張もわかりますが、作品の質を捻じ曲げてしまうほどの行き過ぎた宣伝は悪であると思います。作家は自分の作品を売ることばかり考えずに作品の質を上げろ、宣伝は編集の仕事なのだから執筆に集中しろ、と私は言いたいのです。

作者が「作品が売れなくなるから否定的な感想は書かないでほしい、合わないと思ったら何も言わずにブラウザバックしてほしい」と批評を封じ込めるのは自分で自分の首を絞めているに等しいと言いたいのです。

改めて言いますが「宣伝によってつまらない作品が売れる」という現象は業界を滅ぼします。

「面白い作品が売れる」という健全な業界にするためにも作家や編集は行き過ぎた宣伝をやめるべきで、読者も「面白かった」「つまらなかった」とレビューをどんどん発信するべきだと私は思います。


それともう一つ。「読むだけで小説を書いたことがない人の意見」というコメントを頂いて悔しかったので実際に小説を書いてみました。

完結済みで約9万字です。次回から始まります。今までの文章を読んで不快な気分になった人はもっと気分が悪くなる小説だと思いますのでその点は事前に注意してください。

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