彼が待ってくれている話

そう、まさに今。

お風呂のドアの向こうでは、ずっと彼が待っている。彼は真っ直ぐな瞳でこちらを見つめている。どんなにあがるのが遅くても文句は言わない。私が飽きるほど長くお風呂に入っていても、急かすことなく待っている。

ずっとそこに座っている。白い影がたまに見える。

そう、白い毛の彼が、うちの愛犬がそこにいる。

でもさっきからクンクン鳴いててかわいそうなので、そろそろあがる。いつまでもは待っていてくれない。

今日は旦那が体調不良で先に寝たので、1人で子供のお風呂、寝かしつけをしてさっきお風呂に入り直した。

そして1人で晩ご飯。

一人暮らしをしたことがあれば慣れっこなのかもしれないが、私は実家を出て今の旦那が彼氏だった時に同棲、そのまま結婚したので、一人暮らしをしたことが無い。

気が向けば1人で外食へは行けるが、家で1人でご飯は寂しい。向かいにいる人がいないと、ご飯の味が半減する。テレビもつまらない。普段から一人暮らしをしている人は自由気ままで楽ちんなのかな。

一度くらい、一人暮らしをしてみたかったなと結婚当初は思ったものだが、もう今は無理だ。

旦那がいて、子供がいて、愛犬と暮らすのに慣れてしまった。

白い毛の彼はもう寝ている。いや、私以外もうみんな寝ている。今日は早く寝ようか。

前に、好きな人が元気ないと悲しいよねって言ってくれた人がいた。結婚している旦那のことを話した時に、大変だねじゃなくて、そう言ってくれてすごく嬉しかった。

私の旦那の体調については、また違う時に。

今日は白い毛の彼に寄り添って寝よう。

私も彼を待たなければ。