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IT企業の非エンジニアがエンジニアリング知識を学ぶための一冊 〜頼れる仲間と魔王を倒そう〜

IT企業で使われる専門用語はムツカシイ

こんにちは、JX通信社で人事を担当していますカワイです。
縁あって半年ほど前から現職のJX通信社にお世話になっているのですが、入ってこのかた、身に染みて実感しているのはJX通信社という会社がIT企業だということです。とにかく、これまでの人生で触れてこなかった単語が社内にあふれています。そして、その全ての意味がわかりません。

「Go」と聞けばポケモンを思い浮かべ、「ふらったー」という単語からはイカの揚げものを連想し、「ぱいそん」は新しい牛の仲間だと信じて疑いませんでした。これらが使い古されているネタだったら恥ずかしいですが、とにかく完全にポカン状態だったのです。とりあえず社内で使っているPCが「うぃんどうず」ではなく「まっく」であることだけは初日に理解しました。

とりあえず勉強しようかな

とはいえ私も人事の端くれです。働く会社がメーカーだろうがIT企業だろうが、会社がどんな仕組みでビジネスを進めているのか、どんな技術を使っているのかということくらいは抑えたいところ。フィルムを裁断する機械のことをスリッターと呼ぶことや、本にしおりとしてついているピロピロの名前がスピンだということも、これまでの会社で身につけてきた専門知識です。

どうやら社内では Python(ぱいそん)という言語で色々なサービスが作られている様子です。なるほど、これを勉強すれば社内の半分を占めるエンジニアの方と仲良くなれるかもしれません。やってやりましょう。かかってこい偶蹄目ウシ科。入社当時の私はそう息を巻き、社内の図書館に並んでいる『Python プロフェッショナルプログラミング 第3版』なる分厚い書籍を手に取り、机上にズンと設置しました。専門書の見栄えと大きさも手伝って、心なしか既にエンジニアになった気分です。

それから3ヶ月が経過しました。立派な本は一度も開かれることなく、ホコリをかぶっています。ちゃうねん。言い訳させて。もともと図書館に3冊あったから誰にも迷惑かかってないねん(そこじゃない)。私は誰もいない時を見はからい、そっと本のホコリをはらって図書館にしまいました。

プログラミング学ぼうは間違い

考えてみると、人事がプログラミングやるって言い出すのは、エンジニアが社労士取るって言い出すのに近いかも知れません。エンジニアの方から「今月は随時改定が発生するから被保険者報酬月額変更届を出さないとだね」って言われたら「そ、そうだね」と怖気づいてしまいます。

何事も餅は餅屋、それぞれの領域でプロフェッショナルがいれば良いのです。ですが先程も出てきたように、「会社のサービスにどんな技術が使われているのか」を知ることは、業界によらず、ビジネスを知る上でもとても大事なことです。

もしかしたら、IT企業に入社された非エンジニアの方で、私のように意気揚々と勉強を試み、すぐに挫折した経験をお持ちの方もいるかもしれません。そんな人にぴったりの本が社内図書館に入ってきたので、今回はそのご紹介です(前置きが長くなりました)。タイトルに「採用・人事担当者のための」とありますが、私はこの本をあえてIT企業の非エンジニア全員におすすめしたいです。

この本の効能

この本を読むと、こうなります。

before:コトリン…響きがかわいいなあ(ぽわわ)
after: Kotlin…それはAndroidのモバイルアプリを作るための言語。比較的新しい言語だが、経験が薄くてもJavaのスキルを持っていればキャッチアップするハードルは高くない

なんとなく伝わりましたでしょうか。上記は少し大げさですが、私たち非エンジニアがわからない、エンジニアの方々が使っている単語の意味が色々な観点から整理されてます。そのプログラムの書き方や使い方自体ではなく、「どういう時に使われるのか」「どんな特徴があるのか」がまとまっています。

わかりやすくゲームの魔法に例えましょう。メラとヒャド、ホイミとケアルの違いが分からない人に、それぞれの特徴を交えて丁寧に説明してくれるようなイメージです。余計わかりにくくなったらごめんなさい。

- メラは炎の魔法で、ヒャドは氷の魔法。同レベルの風の魔法にバギがある。これらを敵の弱点によって使い分けることが大事
- 同じ回復魔法でも、ホイミはドラクエの魔法、ケアルはFFの魔法。ゲームが違う

特にこの本が良いなと思ったところは「相対的」に理解できることです。上記の魔法でいうとメラとヒャドだけでなくバギの存在と特徴についても教えてくれる点になります。

自社で Python が使われている場合、非エンジニアがそれ以外の言語の存在について知る機会は多くありませんが、そもそもプログラミング言語は数え切れないほどあるわけです。よく使われるの言語の特徴を俯瞰的にざっくり把握したうえで、「自社がこんな特徴のサービスを提供しているから」「Ruby ではなく Python を使っている」んだと理解するのとしないのでは自分の業務の理解度も大きく違ってくるのではないでしょうか。

プログラミング言語の解説だけではありません。「スクラム」「PO」「コンポーネント」「技術的負債」といった、"職場でよく聞くけどあえて突っ込ま(め)ない単語"についても説明されています。

例えば「スクラム」について。開発の方法の一種だと薄々理解しつつも、ワールドカップの影響で、みんなで肩を組んでいる様子ばかりが頭に浮かびます。単語も聞いたことあるため知ったような気になりがちです。ですが、あなたがセールスチームにいたとして、同じプロダクトの開発チームがどんな流れで開発しているか、そもそもなぜ他の手法でなくスクラムで開発しているのか、理解したいと思いませんか?

少なくとも私は、スクラム以外の開発の方法をこの本を読むまで知りませんでしたし、自社でスクラムが採用されている理由が納得できるようになりました。どうですか?興味が湧いてきましたね!

頼れる仲間と魔王を倒そう

突然再びゲームに例えますが、エンジニアと非エンジニアはそれぞれのスキルを活かしながらパーティを組んで魔王を倒しに向かっているところです。仲間の魔法や技の特徴を理解しなければ戦いに勝つことはできません。「自分は理系じゃないし無理…!」そんな嘆きも聞こえてきますが、私たちが魔法使いになって術式を構築する必要はなく、メラとヒャドの効果の違いを理解できればいいのです。今回ご紹介した本はその解決に役立つことでしょう。

私がIT業界の外にいるときは、その中で日々何が行われているか、ちっとも知りませんでした。一歩業界に入ってみると、特にエンジニアの方の仕事の進め方が他の職種と一線を画し、独自に進化していることを実感します。それは決してネガティブな方向ではなく、新しい方法や知識をいち早く取り込み、論理的、科学的に良くしていこうとするものです。

その発展の中で、数え切れないくらいのムツカシイ英単語やカタカナ英語が続々と生みだされ、他の職種との間に超えにくい壁が築かれたようです。

自社を振り返っても、エンジニアと非エンジニアでは、当然ながら仕事の進め方や使われる単語にはそれぞれ職種上の特徴があります。ですが、チームの距離の近さはベンチャー企業の良いところです。良い点を吸収できる環境にあるのに、ちょっとの理解の差で滞るのはもったいない!社内でも、その壁を飛び越えられる人を増やしたいと思いました。

なおこの本には書かれていませんが、 Python はウシではなくニシキヘビのことだってことも、現在の私は習得済みです(ドヤ顔)。


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