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エッセイ | 卒業の記憶 | #シロクマ文芸部
卒業の記憶を辿る。
残業ながらどの式典中の記憶もほとんどないが、帰り間際の何とも言えない切ない気持ちだけははっきりと覚えている。
小学の卒業は、ほとんどメンバーは変わらないのに、小学生から中学生になり制服を着ることになる恥ずかしさ、新たな友人ができるかの不安。小学校の校門を出てしまうと、帰り道を一歩一歩、思いを踏みしめながら歩いた。
中学の卒業は、同窓生たち、仲の良い友人たちと道が分かれていく寂しさと不安が押し寄せた。そして好きだった男の子の後ろ姿だけを見ていた。彼には彼女がいたし、もし彼女がいなかったとしても告白なんてすることはない。自分は自爆するのはごめんだ!というタイプだからだ。さようなら。この道を歩くのもサヨウナラ。
高校の卒業は、あまり好きではなかった学校をやっと卒業できる、やっと学業から抜けだける嬉しさが一番だった。三年間好きな人はいなかった。正確には前半は中学のときの好きな男子への想いを引きずっていた。
卒業式が終わり、正門前のちょっとしたアプローチに集まる卒業生と在校生たち。私は友人と二人だけで二階の自分たちの教室の窓から、その光景を見下ろしていた。
全生徒の一割しかいない男子の中でも、サッカー部の格好良い男子たちはモテモテで、後輩たちから学ランのボタンをくださいと言われているのがわかる。前ボタンが全て無くなり、いよいよ袖口の飾りボタンをちぎりはじめ、ワイシャツのボタンまでちぎっている男子もいた。ボタンがなくなり、とうとう学ランそのものをあげている男子がいたことだけ目に焼きついている。
寒いだろうに、あの子あんなボロボロの格好で帰るんだな…とそんなどうでもいいことを二階の教室で思っていた。
卒業証書はどれも捨てていないはずだ。
筒に丸まって入っている。
しかしそれを開くこともない。
今の卒業式ではスマホで写真をパシャパシャ撮って、友人との最後の日が鮮やかに残っているのだろう。
でも私は今の時代の子でなくて本当によかったと思っている。醜い姿を写す写真は大嫌いだった。
心の中に残っているだけの絵はいつまでも美しい。友だちの笑顔も、好きだった男子のむすっとした顔も、永遠に心の中にある。
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小牧幸助さん
いつもありがとうございます。
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