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ゆうやけ蜘蛛がメラメラと

空が燃えていた。本当に真っ赤で、蜘蛛のシルエットがかっこよかった。それで、カメラを取りに30秒くらい窓際から離れたら、空はもう半分の赤さになっていた。さすが、秋の日はつるべ落とし。

蜘蛛は、あれからずっと、わが家のベランダを拠点にしている。そして、わたしが「ぎゃー、2匹に増えとる!」と大騒ぎしたアレは、脱皮後の抜け殻だということがわかった。その証拠に、日に日にカサカサに乾き、縮み、風にゆらゆら揺れている。

蜘蛛の寿命はどれくらいだろうか。こうして風に吹かれながら、最期までここで過ごすのだろうか。

先週末、一日中雨が降った。蜘蛛が濡れているだろうと思って、見に行った。雨の雫の重みで巣が揺れて、抜け殻だけがチラチラと揺れていた。本人はどこだ?とキョロキョロして探したら、巣から降りて、軒下に置かれた古タイヤの上でじっとしていた。一応、避難したようだ。そして翌朝、また同じ位置で、風に吹かれていた。餌がかかっているところを見たこともないし、捕食しているところも見ていない。飄々と風に吹かれているだけで、どうやって生きているのか。

しかし一方で、巣は確実に頑丈になっていく。横糸は細かいし、巣自体が何層にも増えている。わたしの目には見えないが、小さな虫が糸にかかっているのだろうか。1匹も取りこぼさないように、緻密な図形が中空に描かれる。

巣が拡張されていくと同時に、ベランダの手すりや物干し竿に糸が張られるので、こちらの物干し領域が狭くなる。毎朝、毎夕、態度がでかくなっていくようにも見える。共存共栄、といきたいところだが、やがてこちらの領域を主張しなければならない時が来るだろう。

夕焼け空の中空に、キラキラと銀色に輝く糸が映えている。



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