きびしさ

わたしは、「ブレスト」が好きだ。ブレーンストーミング、略してブレスト。思い浮かんだアイデアをなんでも言って、会議を活性化させる。
何しろ、ブレストには「自分の考えを規制しない」「人のアイデアを否定しない」という、心の弱いおばさんにとって夢のようなルールがある。思いつきで言ったことがどれだけバカバカしくても、実現不可能でも、絶対に否定されない。そりゃいいねー、でも無理だねー、と笑われても全く気にしなくてよいのだ。

だが、それはブレスト会議という枠の中だけの話だ。日常的にそれをやったら、単に無責任な人である。そしてわたしは昨日、それをやってしまった。

会議ではなく、気楽な感じで打ち合わせをしていた。そこでわたしが言ったことに対して(内容は専門的すぎるので割愛)、延髄反応の速さで返事された。

相手はニコニコしながら、「いいですね!でも、そうなったら、まずはりかよんさんがお手本をやるんですよ」と言う。「え?わたしが、ですか?」「そうですよ」「わたしが、ですか?」ともう一回言ったら、食い気味に「そうです!」と返事。
わたしは、その専門家ではない。自分がそれをやるスキルはないのだ。ただちょっと、言ってみただけである。こういうアイデアはどうですか?と。

「それをやるなら、まず自分から、こういうことをやらせてください、とやって見せて、もしよかったらそちらもやってくれませんか、というアプローチにしないと失礼です。僕は観る側の立場で単に『やって見せてよ』というやり方は、無責任で嫌いなんですよ」

ニコニコしながら言ってはいるが、目が全然笑っていない。これガチだわ。
わたしは考えなしのアホだと思われて、説教くらってるんだわ。アイデアを出すなら自分が責任を持ってやれ。それができないなら、口に出すな、と。

「そもそも、設備的にも無理ですし、うまくいくとは思えませんね」とトドメを刺され、「そうですね、おっしゃる通りです」とわたしが言って、その話は終わった。彼は明らかに怒っていた。

わたしの軽口に真面目に答えてくれた相手に感謝すべきであろうが、彼が「そんなことも分からんのかこの人は」と思っていたのではないか、と萎縮した。ペシャンコである。今後、軽口をたたくこともできないし、もう心のシャッターはガラガラガラ閉店である。

まあ、お手本をやるとなったら、彼がやることになるし「そんなことやってられるか、この忙しい時に」と思っても不思議ではない。この場合、わたしに非があるとは思うが、なぜここまで申し訳ございませんでした、という卑下した気持ちになってしまうのだろう。

やっぱり、自己肯定感。だいじ。育て、わたしのセルフエスティーム。



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