見出し画像

【057】なぜ大人は時間があっという間に過ぎるのか?

本当に大人ほど時間が早く感じるの?

今から一年前の日付である7月8日は、安倍元首相が襲撃された日です。「もう一年も経ったのか」と感じる人もいれば、「まだ一年しか経っていないのか」と感じる人もいるでしょう。時間の感覚は、人によって異なる主観的なものだからでしょう。

一般的には、年をとるほど時間の流れが速く感じられると言われています。時間が早く感じるようになると、年をとった証拠だなんて言いますよね。

確かに自分の体感としても、昔に比べると時間の流れが早くなったような気がします。一方で、最近は子供の頃のように時間が長く感じることもあり、体感時間を決めるのは、年齢だけじゃないような気もしています。

ということで「なぜ大人は時間があっという間に過ぎるのか」その理由を考えてみました。

(1)時間の長さは年齢と反比例にあるという定説

そんなわけで、ChatGPTに聞いてみたところ「ジャネーの法則」というものがあることがわかりました。19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネーと心理学者ピエール・ジャネーが提唱したこの法則では、感じられる時間の長さは年齢と反比例的に関係しているとされています。

10歳の人にとっての1年は全人生の10%ですが、50歳の人にとっての1年は全人生の2%です。脳のメモリ全体に占める直近一年のメモリの相対的なサイズは、年齢を重ねるほど小さくなるため、年齢を重ねるほど一年が早く感じられるという論は理にかなっているように思います。

科学的な根拠は確認できませんでしたが、個体差や他の要因によって感じられる時間の体験は異なるため、年齢は時間の体感速度を決定する唯一の要因ではなく、一つの要因と捉える説が一般的のようです。

(2)身体の代謝スピードが落ちるから

時間の感覚という観点から考えると、以前noteでも紹介した『ゾウの時間、ネズミの時間』という本を思い出します。

この本では、哺乳類の心臓の鼓動は全ての動物で一生に20億回と決まっていることを説明しています。また、心臓の鼓動だけでなく、呼吸の間隔や腸の動き、体内の異物の排泄なども、体が大きくなるほど時間が遅くなる傾向があります。つまり、大きな生物ほど時間がゆっくりと流れ、小さな生物はせっかちに命を消費しているのです。したがって、物理的な時計を基準に考えると、ネズミなどの小さな生物の一生は短く見えますが、物理的な寿命が短いからといって、一生を生き切った感覚はゾウもネズミも変わらない可能性があるという、興味深い論説です。

この理論は人間の成長過程にも当てはめることができるかもしれません。人間の幼児の心拍数は毎分約110回で、大人の約1.5倍です。幼児の心臓は大人よりも小さく、1回の収縮で送り出される血液量が少ないため、心拍数を上げて血液量を増やす必要があります。また、子供の基礎代謝や酸素消費量も多いため、さらに血流を増やして酸素供給を増やす必要があるのでしょう。

逆に高齢者は普段の活動量や酸素消費量が少なく、心臓が頑張らなくても済むため、心拍数も遅くなると言われています。年を重ねるほど燃費効率の良い身体になるのです。

これを考えると、子供時代はネズミ的な時間の流れで生きている一方、年を重ねるほどゾウ的な時間の流れで生きていると言えるかもしれません。だからこそ、大人ほど時間の経過が早く感じられるのかもしれません。

(3)脳が受ける刺激の量が減るから

人間は成長の過程で、さまざまな生活習慣を身につけ、それらがルーティン化されていきます。

幼児期は新しいことに挑戦し、常に脳が活性化される時期です。例えば、幼児にとってはパンツを履くことや歯磨きなども挑戦となります。小学生になると、通学路で道端にカタツムリを見つけたり、新しい道を探検したりすることもあります。子供時代は新鮮な出来事に溢れていて、脳には常に刺激が与えられています。

しかし、大人になると日常生活の大部分がルーティン行動で占められるため、脳のワーキングメモリを消費する必要のない行動が多くなります。言い方を変えると新しい記憶に残すような経験が少なくなり、子供時代のようにドキドキすることも少なくなります。

一年の記憶が、ルーティンな時間を差し引いたドキドキワクワクした新しい経験の集積によって構成されると考えると、大人になるほど一年があっという間に感じられるのでは?と考えることもできそうです。


では、体感時間を変えることはできるのか

時間が全ての人にとって等しく与えられるものならば、その体感時間をより豊かにする方法があれば、人生をより充実させることができるように思います。

逆説的に、以下の2つの方法が可能かどうか考えてみます。
(1)身体の代謝を高める
(2)脳が受ける刺激の量を増やす

(1)身体の代謝を高める、という方法は、医学技術的には実現できそうです。今だって既に、お肌の細胞の新陳代謝を高める美肌施術や、怪我を速く治すための細胞分裂を活性化する治療などの近しい施術は実現しています。でも「ゾウの時間、ネズミの時間」で説明されているように、心臓の鼓動は哺乳類全般で一律だとすると、過度な代謝の活性化は寿命を縮めることになりそうです。

次に(2)脳が受ける刺激の量を増やす、という方法は、日常生活の中で意識的に取り組むことができそうです。個人的に思いつくことでは、新しいレシピに挑戦してみるとか、いつもと違うブランドやお店で買った洋服を身につけてみるとか、新しいヘアスタイルやメイクに挑戦したりすることは刺激的な体験になるように思います。これまで関わりのなかったタイプの人と友達になったてみたり、旅行に出かけることで新たな刺激を得ることもできます。

直近の一年が長く感じられた理由

私自身について言えば、直近の一年は刺激の多い一年でした。
ちょうど一年前にサラリーマンを辞めて法人を設立し、同じ頃に上場企業の社外取締役に就任しました。独学でコーポレートガバナンスについて学びながら、社外取締役としての経験を通じて実践する機会も得られました。また、一人息子が社会人として独立し(つまり家を出て自立した生活を始めた)、自分自身も自由な時間を手に入れたため、プライベートでもさまざまなチャレンジをすることができました。同時に、悩んだことも失敗も多かったのですが、振り返ってみるとネガティブな記憶は薄れて、ポジティブな記憶ばかり鮮明に思い出されるので、脳のシステムの都合の良さを実感します笑。

これからの一年も「何もしない間に一年が過ぎた・・・」なんて言わなくていいように「今日、なに挑戦した?」を自分に問える毎日を過ごしたいなと思いつつ、今日の雑感は終わりにしておきます。

写真:2016年に会社をずる休みして訪れたロンドンのビッグベン
(撮影byじぶん)


この記事が参加している募集

#最近の学び

181,387件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?