商業出版する方法#82〜起業家・経営者にとって本は教材=ビジネスのツールかもしれないが、出版社や読者にとってはそんなこと露ほど「知らんわ」な件。
元KADOKAWAの編集者であり、ビジネス・実用書出版プロデューサーの渡邉です。
やっぱり、というかまだまだ起業家や経営者にとっては、ビジネス書や実用書の出版は「自らのビジネスを上手に宣伝(PR )できるツール」だという想いが強くあるようです。
で。そういう想いは、あなた自身はあっても全く良いわけなんですが、タイトルにもあるように、出版社や読者にとってはそんなこと露ほども「知らんわよ〜」って話なんです。
というのもね、まず第一の理由として、読者は「あなたの本だけを探して買って読んで」くれるわけではないからです。
割と本を出したい!と思われる方ほど、なかなかに「勘違いしやすい」点です。「競合」という意識が抜けているんです。
本屋さんへ行ったらお分かりでしょう。
ゴマンと本が並べられて売られてありますよね。仮にあなたが本を出したとしても、あなたの本だけが大切に大切に安置され、売られているわけではない。
それこそ、何十〜何百冊も類似した本がうわ〜っと周りと取り囲み「買って買って!」とカバーが主張しているわけです。
読者はそこでいきなり「あなたの本だけをみて、買ってくれるわけではありません」。
購買者の心理とその行動において、必ず「値踏み」「比較検討」をします。
タイトルを見て、帯のコピーをみて、ちょっと目次を読んでみる。
それで・・レジに持って買ってもらえるか!?というと、そうではないですよね。
「ふーん、そうなんだ」と思って、「これも良いけど、他にもっと面白そうなのないのかな」「他に、もっとためになる、勉強になるような内容が詰まった本ってないのかしら?」って、「周辺にある他の本」をどんどんと見ていく。そうやって「比較対象」をしていく上で、ようやく「あ、じゃあこれ買おっかな」って買っていく。
または、「うーんあんまり自分が欲しいものじゃなかった。買うほどまで行かないか」って、買わずに去る(→こういう状況の方が多いと思いますよ。最近は)。
そこに著者のビジネスがどーのこーのとか、ブランディングがどーのこーのとか、ましてや「教材だからいいね!」みたいなことで本を買う人がどこにいるでしょうか。って話です。
そういうあなたは、そんな感じで本を買っているのですか?という話です。
そうではないでしょう。
本質的な意味で、「ちょっと読んで面白そうだったから」「良いことを学べそうだから」「この本を読めば今の課題を解決できそう!」「この本を読んでワークなんかをやってみたら、モヤモヤしている自分とはまた違った新しい私に変われそう」というピュアな想いが引き金となって、「本を買って読もう!」になるはずなのです。
(あるいは、売れてるって聞いたし、SNSで見て気になってたし・・みたいな感じで興味をそそられて本を買う、っていう行動も最近では多いですよね)
その意味で考えてみてください。
自分のビジネスをもっと広め、ネットをしていない人に対してもリーチでき、集客にもつながる一ツールとして本があれば。
それも、商業出版として出版社から出されているという「お墨付き」が付加された本があれば、本屋やネット書店などでも売ることもできるから、楽で良いよな〜っておもいはあるかもしれません。
でも、そんな想いなんて読者には一切届きません。商業本はその存在の一つに「エンターティンメント」「嗜好品」としての商品性質があり、生活必需品ではないことから、読者があえて強く意識しないと購入まで繋がっていかない、という特殊なビジネス環境があります。
だからこそ「面白い」「買って楽しみに読める」「買って読んでワクワクする!」「本当にタメになる!」という心理を働かせていく必要もある。
ゆえに・・・あなたのビジネスの教材とやらをコンテンツとして本に載せるのかどうか、そういう内容だけでまとめて商品化し、出版社として責任を持って真に販売できるのか・・・という厳しいジャッジが入ってくるわけ。
そのジャッジに「合格点」を与えられたコンテンツ&ブックプランだけに、出版社もお金を投資して本にする!というビジネス行動を起こしているに過ぎないのですよね。
つらつらと書きましたが、結果として「バランス」です。教材として、自分のビジネスを広めるツールとして本にしたいな、というのはOKです。でも商業本は直接著者が読者に届ける商品を自分で作ることはできず、必ず「出版社」が介さないと、市場流通は行えません。
その意味では、出版社の協力を取り付けることは必須です。出版社は常に「出版市場」を観て、読者の動向を追っかけています。なので、読者ウケするものを商品化して出したい。
自分が出したいものと出版市場が本当に求めているコンテンツが「マッチした」ところを狙う、まさにバランス感覚がないと商業本は出せないし、あなたの本も思った以上に全然売れない、ということになりかねず、出版社にも読者にもクライアントにも「後ろめたい」気持ちになってしまいかねません(実際、本が売れなかった著者の中には、罪悪感をもつ人も多いです)。
出版社は、ほんとこれもシンプルな話ですが「良いコンテンツの商品」を本というパッケージとして売りたいだけ、です。それを売ってビジネスにしていきたいだけ、なのです。それだけで動いています。
だからこそ「本当に世の中に出していい、本という形にして、我が社が責任を持って商品化して流通・販売していっても良いのか」をシビアにジャッジしているだけですし、そういうシンプルな考えのもとに制作され売り出される本だからこそ、権威性やハクがつき、社会的にも「先生」と呼ばれるようになっていくわけです。
その意味でも繰り返しますが、商業出版は「あなたの本を出版します」では絶対ないのですよね。
社会公器のアイテムという側面も、実はあることをできるだけ忘れないようにしてもらえれば、と思います。
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