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商業出版する方法#84〜自分の主力ビジネスがそのまま本にならない・・・てのが「商業本」の手強いところ

元KADOKAWAの編集者でビジネス・実用書出版コンサルタントの渡邉です。

出版企画書を書いてもなかなか出版社とのコンタクトが取れない。出版が決まらない・・・という人の中には「なるほど、そりゃ難しいなあ」と感じる企画内容になっていることが多いです。

例えばこちらの本なども↓↓
『玉の輿にのれなかった崖っぷち女が 年収1000万円になった 黄金の大逆転ルール』(伊藤宏美・著/すばる舎)

伊藤さんが私にコンサルをご依頼された理由が「企画書を送ってはいるのだけど、なかなかうまく結びつけなくて・・」ということでした。
別の出版塾で活動をされていたわけですが・・・。企画書を拝見すると「企画書を丁寧に書き切るスキル」は非常に高いと感じました。
いわゆる出版企画書を書ける技術は教えてもらっていて、書き方については問題がない。

ただ課題に思ったのは「出版市場においてはあまり需要が乏しい」テーマで頑張っていた、ところかな、と思います。

伊藤さんは、女性向けの起業スクールを運営、集客コンサルタントとしてSNSをはじめとした界隈で知名度のある人です。
雑誌やテレビにもすでに出演されていて、その筋で名前はよく知られた人でした。

しかし出版を考えるにあたって、お打ち合わせの中で感じたのは「企画のテーマが、出版市場において需要が薄いんじゃないか」という点。

伊藤さんは、ビジネス上でも主力でもある「SNS(Facebook)集客」「SNSマーケティング」に特化した企画書に仕上げていました。
ただ、これが・・・出版を長引かせていたわけです。

ぶっちゃけ言うと、集客に関するビジネス・実用書の本は「店舗集客」がほとんどであり、SNSの集客やマーケティングに関する本は極めて少ない傾向。おまけに「女性向け」ときたら、なおさら希少部類に入ってくると思います。

よってニーズが希少すぎて、出版社も「こういう企画は売れないからなあ・・・」という感覚だったのだと思います。

それくらい、自らのビジネス上における「顧客」の考え方と、出版市場における「ニーズ」の意味合いは違います。そしてこれはしょっちゅう起こる事実です。

要は、自分のビジネスやサービスが結構売れているからといって、それがそのまま出版市場においても本としてパッケージングして売れるのか・・・、というのはちょっと違う話なのです。
明らかに「SNSマーケ」「Facebook集客」といった形の本は、類書がそんなに多くないといっても等しいので、これは明らかに市場が薄いとみました。

そこで私は率直に「ご自身の得意だったり強みでもあるSNS集客やマーケティングに関する本の企画もあってもいいですが、別の切り口も考えたほうがいいですね」とお伝えしました。

この流れの中で、「ある情報」を提供いただいたことが、伊藤さんの商業出版化への道を一気に加速させます。

それは何かというと、コンサル時に「自己紹介として・・」と送られてきた、ブログ記事でした。

そこには単なるプロフィールが簡潔に羅列されているのではなく、自分がたどってきた道・自分史のようなものが書かれていました。

それを読んだ時、めちゃくちゃ衝撃を受けたのです。

伊藤さんが、女優になりたくてもなれなかった挫折時代があったということ、玉の輿に乗りたい!と本気で思って住まいの関東→兵庫県の芦屋まで行って「お金持ちにナンパされたい・・」と意気込んでいた事実(結果全然無理だった)。
借金も500万作って、ブラック企業にもしんどい思いしながら勤めていて・・・。
そんな事実がありながらも、前を向き続け、様々な模索を重ねながら今は女社長として収入も幸せも爆あがり!したエピソード。

見目も麗しく、今はイキイキと輝いて仕事をしている女性からは想像もつかないような驚きエピソードでした。

この文章を読んだ時、ビビビ〜っときました。

「面白い!!」

ということで、伊藤さんが得意で主力事業としてる「SNSマーケティング」をテーマにした企画もさることながら、伊藤さんの「手痛い」半生も交えつつ女性が真に自立できる手法を交えた「自己啓発系の出版企画」も考えることに。
その意味では伊藤さんも「2種類」の企画書をご一緒に作っていったわけでし。

結果的にこの狙いは功を奏しました。1社からすぐに連絡がきて「企画会議にあげたい」と。そして1週間後にはあっという間に企画通過のご連絡。
ちなみに、決まった企画は。。。

はいそうです。自己啓発本の企画でした。
担当の編集長も、伊藤さんの手痛い半生が載ったブログを読んで「これは面白い!」という結果となり、出版化に至りました。
ちなみに、手痛い半生が綴られた伊藤さんの自己紹介ブログは、リライトの末本のプロローグに収められています。

発売されるや否や、反響も大きくすぐに重版し、今なお話題のほんとして販売がなされています。

というように・・・。
必ずしも、ご自身のビジネスが順調だからといって、それがそのまま「出版市場で受け入れられるわけではない」というお話でした。

こういうケースはよくあります。
その意味でも、「出版の世界で売れる本と、ビジネスで受ける商品(コンテンツ)は違うのだ」ということをよく覚えておいてもらえると、もっと出版の活動もしやすくなるのではないでしょうか。

大事なのは、出版の世界で売れる本(商品)を作ること。その点を愚直にリサーチして、企画をたて、企画書に落とし込むことに他ならないのです。


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