【食べものエッセイ】疲れたときはカップうどんの出汁を飲もう。
うつ病ドン底時代、料理なんてできず食事に対する意欲もドン底だった。
ご飯なんて、食べるなんてどうでもいい。考える気力がない。
それでも何か食べておこうかと思ったある日の昼、家にはカップ麺かレトルトカレーくらいしかなかった。
寒いからカップ麺にした。
正確にいうとカップうどん。
お湯を注ぎ、ぼーっとして、気づくと待ち時間はとっくに過ぎていた。
ふたをあけると湯気がほわっと顔にかかった。
あたたかい。
しばし湯気を顔にあびる。
ちょっと生きてると感じる。
両手でカップを包み込んでみる。
熱い。湯気とは比べ物にならないダイレクトな熱さが手に伝わった。
この熱さを感じたくて最初に汁を一口飲みたくなった。
温かい手で容器を持って口をつけてぐっと一口。
瞬間ビビビッときた感覚。もはや舌よりも脳に先にきたのかもしれないと思うくらい。
おいしい。
おいしい。
おいしいなぁ。
鼻がつーんとなる。まさか涙がでそうだ。
長い期間ご飯が食べられなくて何日ぶりにご飯にありつけて、がむしゃらに食べながらありがたい、とかではなく
ただ美味しくて、温かくて。泣けた。
カップうどんだから、和食の出汁とかよりも濃いだろうし塩分も高いだろうし出汁というよりはそのまんま「カップうどんのスープ」かもしれない。
でもそのときの私は確かに出汁の美味しさに感動して泣いたのだ。
数年後である先日、お昼ごはんに「お椀カップ麺」を食べることにした。
最近出ている、自宅のお椀で作るやつ。
袋に入った麺とスープなどをお椀に入れてお湯を注いで食べるもの。ミニサイズでちょっとした汁物にちょうどいい。
そのシリーズにはカップヌードルとかうどんもある。
そう、私はまさにあのときのミニサイズのうどんを食べた。
あの頃のことを思い出した。
フラッシュバックというやつかもしれない。
その日も少しメンタルが落ち気味で、やはりしみた。
うめぇ…と思いながらやっぱ出汁だよな!!と確信した。
私は炊き込みご飯が大好きなんだけど、そのときにはいつも味噌汁を作るようにしている。
それが何と美味しいことか。
世の中の争いをしている人たちに、一度座って出汁(もちろん粉末だしの素)たっぷりの味噌汁と炊き込みご飯を食べてほしいと思う。
何人かは戦意喪失するのではないか。
一度立ち止まって空を見上げてしまう力があるんじゃないかと思う。世界を救う力だ。冗談ではなく本当にそう思っている。
味噌汁が無理ならカップうどんを。
疲れたとき食べたらきっと、ちょっと呼吸がしやすくなる。
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