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小説「まなざし」

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交通事故で聴力を失った女性、瞳美と彼女と生きることを選んだ恋人の真名人。音のない世界で、彼女のまなざしは何を語ろうとしていたのか。 普通の恋人と同じように愛し、すれ違い、味わうこ…
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#サークル

まなざし(13) 異変

まなざし(13) 異変

「編集サークル?」

彼女がそのサークルの名を口にしたのは、大学一年生の後期授業が始まって一ヶ月が経った、11月1日のことだった。

「うん。『陽だまり』っていうサークルなんだけど、週に一回集まって文章を書いたり、文芸誌や雑誌をつくったりするの」

秋も深まるこの季節に文化的な営みに励みたいと思うのは、人間の性だろうか。
雨宮さんは、色づく街の並木道や、遠くの山を見ながら俺にそう言った。ちょうど、

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