見出し画像

BEST ALBUMS OF 2023

リホです。

2023年リリースのアルバム(EP含む)から年間ベストを選んでいきます。毎年同様で、16作品順不同とさせていただきます。


Janelle Monáe - The Age of Pleasure

近年は俳優業もめざましい、Janelle Monáeによる4枚目のアルバム。自身、パンセクシャルを公表している彼女は、以前から「愛」やセクシャリティに関連した楽曲を多数リリースしています。今作はアフロビート、レゲエ、カリビアン的な要素も織り交ぜながら、一層多様化した音楽性で繰り広げられる全員参加型パーティーアルバム。セクシャリティやナショナリティをも超越した、悦びを体現する多幸感の溢れる楽曲がシームレスに繋がっていき、まるでこちらも参加しているような感覚になります。

Doja Cat - Scarlet

何かと話題に事欠かないDoja Catの4枚目のアルバム。これまでのポップなサウンドから一転して、ラッパーとしてのDoja Catが光る、ヒップホップ色が濃く攻撃的な作品で少し驚きました。1曲目「Paint The Town Red」では、批判や炎上を一蹴して(むしろ糧にして)成功していくという強い意思表示が感じられますが、その通りヒットを飛ばしているから本当に強い。後半ではR&Bの要素も感じられる曲が多くなっておりますが、これまでのDojaの印象をガラッと変えるアルバムでした。

Asake - Work of Art

ナイジェリアのアーティストAsakeによるセカンドアルバム。アフロビーツをベースとしたサウンドに軽快で壮大な歌声が響きます。アートワークでは、現代アーティストのバスキアからインスピレーションを受けており、また、「Basquiat」という楽曲も収録されていますが、前作リリースからスターの道を駆け上がってきたAsake自身をバスキアに重ねた楽曲と読み取れます。アルバムの中では「Remember」をよく聴きました。

Troye Sivan - Something To Give Each Other

シンガー/Youtuber /俳優と複数の顔をもつTroye Sivanによるサードアルバム。クィアネスやLGBTQ+カルチャーのアイコンとして人気を集めるトロイが歌う、若々しさと愛に満ちた楽曲が詰まったポップアルバム。リード曲の「Rush」はアップテンポなパーティーチューンで、破茶滅茶なMVも見ていて楽しい曲。中でも、時間と空間を超えて人との繋がりを感じられるような楽曲、「What's The Time Where You Are?」がおすすめです。

Cleo Sol - Gold

9月、全世界の彼女のファンは歓喜だったでしょう。中旬にリリースされた「Heaven」に続きなんと2週間後という異例のスピードで4枚目のアルバム「Gold」がリリースされました。ここでは「Gold」の方を紹介しますが、ネオソウルを基軸にしたスタイルは一貫としており、最初は控えめに奏でられるドラムやベースラインが彼女の歌声と呼応して盛り上がっていきます。「Gold」の方がより、陽だまりの中で包み込まれるようなあたたかさを感じるサウンドプロダクションでした。2曲目「Reason」がおすすめです。

BJ The Chicago Kid - Gravy

シカゴ出身のアーティストBJ The Chicago Kidと、Doja Cat等の楽曲を手がけることでも知られるYeti Beatsとのコラボレーションアルバム。R&B/ソウルミュージックを定義し直す意味で付けられた、"Gravy"というタイトルにアーティストの愛を感じる作品です。オーセンティックでタイムレスなサウンドが広がっており、Earth, Wind & FireのPhilip Baileyを迎えた「Never Change」も収録されています。

JUNG KOOK - GOLDEN

2022年J-HOPEから始まったBTSメンバーのソロ作リリース。各作個性に富んだ作品に仕上がってますが、ここにきてまたレベルの高いアルバムが出たな、という印象です。Lattoを迎えバイラルヒットした「Seven」や、Jack Harlowとの「3D」もさることながら、マイケル・ジャクソンを思わせる「Standing Next to You」が圧巻。また、メロディアスな「Yes or No」も良い。とてもじゃないがK-POPの枠のみでは収まらない、世界的スーパースターの次のステージへの躍進を感じさせるアルバムです。

V.A. - Spider-Man: Across the Spider-Verse

映画「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」のサウンドトラック。プロデューサーMetro Boominが手がけた本作は、A$AP RockyやNas、Don Toliverなどヒップホップシーンから多数の豪華アーティストが参加。特に「Am I Dreaming」、「Hummingbird」が好きです。スパイダーバースシリーズの、ストリートカルチャーを重視した作風や、スパイダーマンの抱える責任と偉大なパワーというテーマが、Metro Boominのどこかダークで、それでいて力強い作風とリンクしていて見事なサウンドトラックであると思いました。

Sadajyo & Jeff Loik - Golden Virginia

ラッパーSadajyoとプロデューサーJeff Loikによるファーストアルバム。QN、Ariel 未来とともにMusashi Villageのメンバーとしても活動する彼ら。Sadajyoは「ラップスタア誕生」や「RASEN」への出演でも確かに爪痕を残しました。2000年代のヒップホップに影響を受けたという、Jeff Loikのタイトなビートにのせて、Sadajyoの確実なラップスキルが光る作品。流行に流されず、自分たちに合ったスタイルで挑む姿勢が本当に格好良い。「Cake」が特におすすめです。

3House - SWING A SOUL

AOTLに所属する3Houseのファーストアルバム。語りかけるように歌うスタイルが光る非常にムーディーな作品。「FEELING」をはじめ、メロディラインが印象的な曲が並びます。昨今1曲あたりが短い楽曲が増えてきましたが、それが返って短く感じられ、もう少し聴きたいと思わせる楽曲の数々。今後の国内R&Bシーンを牽引していく存在になることに期待します。ツアーを経て、Billboard Live TOKYOで行われたバンドセットでのパフォーマンスも素晴らしかったです。Billboardのような少しラグジュアリーな空間が一層彼の良さを引き立てるな、と感じました。

クボタカイ - 返事はいらない

クボタカイのソングライティング能力には驚かされます。"返事はいらない"と冠する、したためた思いを吐露するような13曲。それは面と向かって言えないことであったり、もう伝えられないことであったり、或いは伝えてはいけないことでもあるかもしれません。まるで短編集のような歌詞もそうですが、根底にあるポップさがもたらすサウンドも一層、楽曲としてのレベルを引き上げています。トリッキーな歌詞とメロディのハマり具合が気持ちの良い「ナイトイーター」をよく聴きました。

LANA - 19

もう"LEXの妹"という肩書きは野暮なくらい、今年はLANAの年だったと言えるのではないでしょうか。国内シーンの主要プレイヤーを巻き込みながら、出す曲出す曲ヒットに変えていくチカラ、飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍でした。持ち前のハスキーボイスとこぶしの効いた歌唱力、SNSでバイラルヒットに繋げる拡散力、どれをとっても強いです。さらに、19歳の等身大のリリックも、10代〜20代に特に支持されている理由でしょう。躍進を象徴するようなEPでした。

JJJ - MAKTUB

国内ヒップホップシーンで確かな存在感を放つJJJによるサードアルバム。MAKTUBとはアラビア語で"それは書かれている"という意味で、物事は起きるべくして起きており、 それを感じるか感じないかはその人次第、という意味を持つそうです。国内外の多数のゲストを加え、実験的なサウンドも光る今作。一方で「Jiga」は離婚の経験を受けて作られた楽曲ということで、悲哀に満ちた雰囲気もあり、人との出会いも別れも、起こるべくして起こっているのでは、ということを感じさせる作品でした。

cero - e o

ceroとしては5年ぶりとなるアルバム。ベストに入れたは良いが難解な作品だったので紹介するのが恐縮です・・。前作からの間、断続的にリリースされたシングル曲も収録されており、アルバムとしてのコンセプトとしては希薄な作品であるよう。5年の間、3人は個人での楽曲制作も行っておりますが、そんな個々/グループの制作スタイルが消えたcとrにも繋がる部分があるのか?と推察するなどします。部屋の中で静かに聴いていたら、いつの間にか大海原に出てしまっていたような、静かでもあり、別の面ではダイナミックなアルバムです。

JUMMADIBA - 上り

ラッパーJUMADIBAの新作で、ミックステープという位置付け。荒削りでどこか空間的な(奥行きを感じる)、アンビエントの要素を感じるビート。時に幻想的で時に不穏なムードを醸し出すサウンドと、すっと通るJUMADIBAの声質が癖になる作品。UKサウンドに影響を受けているということも要因としてあるのかもしれませんが、そのスタイルは国内アーティストの中でも異彩を放っています。

grooveman Spot - Lie-Sense

DJ/プロデューサーのgrooveman Spotによる、8枚目のアルバム。国内外からゲストを多数迎え、ボーカルが際立つ楽曲群となっています。KzyboostとDaichi Yamamotoを迎えた爽快感のある「Get Off」や、西海岸サウンドを感じられる「Get It Back」、Aki Ellaの歌声が軽やかに響く「Hold My Hands」がおすすめ。grooveman Spotの得意とする浮遊感のあるベースサウンドが心地良く、メロディラインとユナイトする至極の1枚です。

あとがき

昨年のあとがきを読み返して同じようなことを書きますが、Apple Music調べで今年は296枚のアルバムを再生したみたいです。なんと昨年の半分・・!全然聴けてない。新譜チェックは行なっていたものの、徐々に知っているアーティストしかチェックしなくなってしまっていたように感じており、それが結構ベスト選出にも表れたな、と思います。人によってそれが必ずしも音楽ではないと思いますが、自分の視野/枠組みを拡張する取り組みはいくつになっても行なっていきたいものですね。

関連:2022年編

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?