MATSUMOTO
普段あまりリアルタイムのテレビは観ないのだが、その日たまたまつけたテレビでやっていた『世界仰天ニュース』は、最後まで見入ってしまった。
オウム真理教による”松本サリン事件”を追った特集だった。
再現ドラマや当時の映像を交えながら、Xデーに向けて進んでいく狂気に、目を奪われてしまった。
サリンやVXを製造する理由も、松本市で凶行に及ぶ理由も、その後に”地下鉄サリン事件”を起こす理由も、どれもが信じられないくらいに身勝手な、そして理解不能なものだった。
その理不尽な事件によって、多くの方々の命が奪われ、また多くの方々が今も苦しんでいる。
そして番組の最後に、江川紹子さんが話していた言葉が強く心に残った。
「自分は大丈夫と思わず、こういうものに容易に心をからめとられるかもしれないと自覚しておくことが一番の教訓なのかもしれない。」
自分がなぜこの番組に釘付けになってしまったか。
それはおそらく、自分自身は絶対にそんなものは信じないと言う圧倒的な自信を持ちながら、怪しい新興宗教の異常性に対しては怖いもの見たさのような強い関心を持っているからだ。
だけど江川さんの言葉を聞き、その怖いもの見たさを大いに恥じ、さらに恐怖も感じてしまった。
自分が、もしくは自分の子供が、今後何か尋常でないものに心を囚われてしまう可能性はゼロではない。
番組でも流された当時の映像の中には、子供達が集団で修行をしているシーンもあった。そしてサリン事件を起こしたメンバーも、誰もが望まれて生まれてきた子供達だったのだ。彼らの親の気持ちを思うと(修行している子供達は二世だとは思うが。。)心が本当に痛くなった。
『MATSUMOTO』 原作:LF・ボレ 作画:フィリップ・ニクルー
今回紹介するのはフランス人の原作者と作画者によるコミック。
まさに”松本サリン事件”をベースにした作品で、団体名や個人名などは変えられているが、明らかに”かの教団”の”かの男達”が出てくる。
被害者の立場や名前も当然変えられているが、ほぼほぼ事実に沿っている内容だ。
教団の異常性と事件の理不尽さ。そして冤罪や警察の怠慢。そしてそこから史上最悪の事件である「地下鉄サリン事件」への繋がりまでが描かれている。
当時のことは小学生だったのであまり覚えていないが、それでも2023年現在よりも、日本は元気だったように思う。
阪神淡路大震災があったり、この事件があったりしても、だ。
2023年。
コロナがようやく終わりを迎えようとしている今、それでも政治の不審や物価の高騰、困窮する生活、、まさに何かにすがりたくなるような世の中になってしまっている。
だからこそ、身近に潜む危険には一層注意せねばと思うし、子供達のために、強い親でありたいと、本書を読んで改めて思った。
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