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部屋を片付けると幸せになる、の本当の意味

フランス人作家ドミニック・ローホー(Dominuque Loreau)さんのシンプル主義シリーズを、最近本棚から引っ張り出して再度読んでみました。

初めてこちらの本を手にしたのは、日本でも話題になった7~8年くらい前の記憶ですが、その頃の私の部屋と状況は、というと「シンプル主義」とは程遠い状態。もちろん自分なりに片付けを実践してはいたけれど、ドミニックさんがおっしゃっているような、生活の中に招いて大切にしていくものたちを厳選していくということや、そのためには必要のないもの・いらないものたちと勇気をもって決別する、というところまでは実践できていませんでした。

街に出れば購買意欲を掻き立てられる状況に流されながら、「なんとなく」心惹かれるものに出会ったら購入してしまったり、そんな風にして増えたモノたちを、「使える状態」であるかぎり処分することに罪悪感を感じてしまったり。

それが変わったきっかけは、1年イタリア行きを決めたときです。借りていた部屋を引き払って、日本においていくものは実家の家族の迷惑にならないように最小限にする必要がありました。

イタリアから1年でほんとうに戻ってくるのかも、当時はすべてが未定で方向性が定まっていない状態でしたので、イタリアに持って行くものも、置いていくものも、真剣に選ぶ必要がありました。

イタリアへは、生活に当面必要なもので、衣類にいたっては秋・冬・春までまかなえるもの(出発は秋でした)。そして、最悪失っても良いもの(笑)。日本に置いていくものは、イタリアに持ってはいけないけれど、取っておきたいもの。だけど、こちらもしばらくはお別れすることになるので、最悪家族に使われたり、紛失してしまったりする覚悟も必要で・・・。

結局、このときに自分が抱えていたものと向き合い、スーツケースひとつですぐにイタリアへ出発した経験が、当時所有していたほとんどのモノへの執着心をごっそり拭い去ってくれたように思います。また、その後イタリアで生活していく中で実感した、「生きるのにどうしても持ち歩かなくてはいけないものはそう多くはないのだ」ということも。

但し、イタリアでは、「生活を彩る物は美しくなくてはいけない」という感覚は強く心に根付いた感じがしています。それは言い換えれば、機能的にも視覚的にも自分が美しいと思えないものを「とりあえず」持つくらいなら、ない状態で我慢すればいいし、それも可能なのだ、という気づきに繋がっています。

日本帰国後に、アーユルヴェーダの予防医学を学ぶセミナーでスリランカ人の先生にお話しを伺った際、「健康になりたければ、まず部屋を掃除してください。」とおっしゃったのがとても印象に残っています。

日本では断捨離ブームや、風水の考え方だったり、また最近はミニマリストの生き方についての本やブログが人気なので、なんとなくスピリッチャル的にとか、精神論的に受け入れてしまう理屈なのですが、参加していた欧米人からは、「なぜ健康になるのに掃除が必要なのか?」と質問もあがっていました。

その際の先生の説明は、「余計なものを処分してその分のスペースが空くことで、余計なところに向かっていたエネルギーの滞りが解放されるから」というような内容だったように記憶しています。

エネルギーとか、スピリッチャルとかではなくても、かつてそれなりに多くのモノに囲まれて暮らしていた自分と今の自分の感覚の違いで私が言えることは、確実に心が健康であること。

モノを処分できない、というその状態の心理を紐解くと、決められない優柔不断さと執着心、自分自身や人生において目を背けたくなるような部分と対峙する勇気のなさ、多くを所有することで偽りの満足を得ている虚栄心やエゴなど・・・たくさんの不健康な感情がからみあった結果だったと振り返ることができます。

そして何より、「失うことへの恐怖」がそこにはありました。

たとえば、「もったいない」という言葉には、どことなく廃れゆくものへの捨てられない愛着とか憐みがあるように思うのですが、今の私は、まだ十分に使えるものでも気持ちを過去にばかり向かわせるものとはお別れすべきだと考えています。

だからこそ、大切な物はつねに「いま」を感じられるように、手入れをして長く現役でいさせてあげること、が大事なように思います。

過去の自分がモノに対して抱いていた執着心や決断力のなさ、いらない見栄やプライドというものがどれだけ「本来の自分であること」から自身を遠ざけていたかを思うと、部屋を掃除することは心の整理と同じである、というのは理にかなっていると思うのです。

私は物欲はわりとある方なのでミニマリストとは程遠いですが、お部屋を片付けてシンプルにすることで見えてくることはたくさんあるように思います。生活の中でほんとうに大切な物がわかり、そしてそれがほんとうに愛着が湧く大好きなもので数少ないほど、注げる愛情や手入れの時間の質は高くなります。

世間では流行のモノでも、自分のライフスタイルや価値観に必要がないものは購入しないのと同時に、本当に必要で気に入ったものにはその分投資もできます。

結果的に、自分のことをよく知っていくことで、自分の心と身体を満足させることになると思うので、人生を前に進める上でも良い考えやインスピレーションが湧きやすくなるのです。

コロナショックはしばらく続きそうだという説もある中で、この機会に部屋の片づけをして、人生と向き合ってみるのもいいのではと思います。



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