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もう一度、あの味が欲しい #013

『喫茶店の日』。

明治21年(1888年)、4月13日に、東京・上野にて日本最初の喫茶店 "可否茶館" が開業したことに由来したらしい。

当時は、1杯1銭5里。そば1杯の値段の2倍もしたという。

当時は、日本には珈琲文化がなく、世にも奇妙な飲み物だったそう。

昨今は日本人にも合うブレンドも増え、人々が好む飲み物となっている。


『喫茶店の日』

学生の頃を思い出す。

私が最初にアルバイトをしたのも喫茶店だった。

"パントマイム"という、古い店構えの喫茶店。

ハンバーグがとても美味しくて、喫茶店というよりもそれを求めてやって来る人の方が多かった。

食事時になると、大勢の人がそれを求めて連日繁盛していた。

店の中を立ち込めるその香り。

私はそれが好きだった。

なぜなら、その香りが過ぎると待っているのは、挽きたての珈琲の香り。

忙しさの後に味わう、サイフォンで淹れたあの珈琲が好きだった。


あれから大人になり、色々なものを忘れていく。

何年過ぎただろうか、偶然見付けた"産寧坂"という喫茶店。

昔からあり、営業しているかどうかも分からないほど狭くて古い店内。

年配の男性が3名で経営しているそう。

どうやって採算が取れているかは謎だが。

期待はせず、ウィンナー珈琲を注文する。

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私は、このウィンナー珈琲に衝撃が走ったのを覚えている。

なんと言っていいか、程よい酸味の中に調和のとれたクリームの味。

飲み進め、混ざるごとにまろやかで心温まるような深みが増していく。

世の中に、こんなに美味しい珈琲があったとは。

それから事あるごとに立ち寄った。

マスターも私を覚え、何も言わずに"いつもの"を出してくれるようになった。


ここの昔ながらのナポリタンも絶句するほど美味しい。

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ほぼ私しか居ない店内で、あのウィンナー珈琲と共に読書をするのが好きだった。

時を過ぎれば居場所も変わる。

あれから何年もあの店に行っていないが、今もあるだろうか。

もう一度、あの味が欲しい。


昨日の嵐のような風が吹き荒れる空と一変、穏やかな春の夕暮れの景色を眺めながら、珈琲を啜る。




皆様に素敵な出逢いがありますように。


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