マガジンのカバー画像

創作小説

8
リコテキが書いた小説のまとめ。不思議、心理的なホラーのおはなし。
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】 目覚めてもそれは夢の中で

 夜中に目覚めると、肌寒くて、私は飼っているインコのゲージが気になった。薄いシーツで覆っただけのゲージでは、インコは寒かろう。

 あたたかい毛布をかけてあげようと私は身を起こした。インコのゲージに向かった。

 不思議な感覚だ。うちの間取りはこんなだっただろうか。

 違う。ああ、これは夢だ。夢の中だ。現実ではない。

 うちの間取りはこんなではない。それだのに、間取りをちゃんと把握できている。

もっとみる

[小説]可哀想なチューリップ

チューリップが枯れていたので、わたしは、そのチューリップに言いました。

「枯れてしまって、可哀想。あなたは、可哀想なチューリップだね」

すると、チューリップは言いました。

「私は枯れているけれど、可哀想ではないですよ」

チューリップが強がっているので、わたしは慰めました。

「無理をしなくていいわ。本当は、枯れてしまってツラいんでしょう。チューリップさんの気持ち、わたしには、痛いほど分かる

もっとみる

[小説]殺しとこ

「ねぇ、心ってどこにあると思う?」

心?えっ?
うーん、心臓かな?

「わたしはね、
心はみっつあると思っているの」

みっつ?

「ひとつは、そう、心臓。
感情は、心臓に支配されてるの。
だから緊張すればドキドキしたり
苦しくなるの」

そうだねー。幸せな時は
胸のあたりがほわほわ~って
するもんね。

「ひとつは脳。
思考はここ。表面心理はここ。
わたしの心を、言葉に変換して
外の世界へ送り

もっとみる

[小説]坂の上の白い蛇

学校を出て、歩道橋を越え、降りたとこから三つ目の角を曲がり、そのまま歩いた半ばあたりの左てに、小さな脇道がある。その脇道は大通りから外れているものの、近道になっており利用する人は多い。

「でもナベちゃん。気をつけなくちゃね。あの道は、たまに坂道になるんだ」

とマッキーが言ったので、ナベちゃんは返事をした。

「まさか、マッキー。あそこは平らな道さ。」

「本当だよナベちゃん。」

「どういうこ

もっとみる

[小説]階段スライダー

「なあ、誰が下駄箱まで一番か競争しようぜ」

って小坂くんが言い出して

「いいよ」
「おっしゃ負けねぇぞ!」

と内藤とよっしーも乗り気になったから

ここは4階で、下駄箱までは遠くて正直めんどくさいなぁ、と思っていた俺だけど、お調子者の血が騒ぎ、

「よーい、スタート!」

と先陣を切って走り出しちゃったりして。

「あいつマジになってるぜ!」

みんなケラケラ笑いながら走っていたけど、階段へ

もっとみる

[小説]ぼくの首を探しに

ぼくは、首を切られ殺された。

正直
ぼくを殺したやつのコトは
もう、どうでもいい。

ぼくは、首を切られ殺された。

ぼくはただ、欲しい。
ぼくの首。

首のないぼくは、
斧を持ち、
通りがかりの人間の首を狩りとっては
自分の体に乗せてみる。

この首じゃない。
これじゃない。
欲しいのは、これじゃない。
ぼくはただ、首が欲しい。

「こんにちは、わたしは君の首です」

なんだって!?

ある日

もっとみる

[小説]孤独の花嫁

花に囲まれて
花を繕ったドレスを着て。

わたしは花嫁。

「おめでとうございます。今日、あなたは結婚をするのです」

「…。
あの、わたしは。
あの…
こんなこと言うのは
自分でもおかしいと思いますが
あの、わたし、まだ、

わたしの結婚相手を
知らないんです。」

「はい、その通りでございます。
それが何か問題なのでしょうか?」

「え!?いえ…
それは問題では無いのですか?」

「当り前じゃ

もっとみる

[小説]マンション

何気なしに空を見ていた。
僕は空が好きだ。
だから、それを見つけたのは
偶然だった。

飛び降り自殺、しようとしてる人。
高いマンションの、屋上。
柵を乗り越えたこちら側に
人が立ってる。
下を見つめて、動かない。
まさに…、って感じ。

心臓が、ゾクッとなって
体に変な力が入った。
人が死ぬ、かもしれない恐怖。
止めなければ、という正義感。
目が、離せない。

そして、
期待していた。

人が死

もっとみる