やじま りこ | 小説

映画と漫画好き。小説を書いてます。 ◻️長編小説 「ギブンアップ」「シャークス・ラブ」 …

やじま りこ | 小説

映画と漫画好き。小説を書いてます。 ◻️長編小説 「ギブンアップ」「シャークス・ラブ」 ◻️短編小説 「5秒先への賭け」 「グレイとの恋」 「ビジターズ」「10MIN」

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  • やじまりこの長編小説

    長編小説 「シャークス・ラブ」 恋愛コメディ ◻️喫茶店で、村上が友人の佐藤に自身の恋愛感を相談するが、余りの内容のくだらなさに呆れる佐藤。その時村上の電話に電話が鳴り… 「愛とは何か?」を問い続けながら生きていく1人の若者のお話。

  • やじまりこの短編小説

    やじま りこの短編小説集 ◻️ミステリー、ドラマ、コメディなど様々なジャンルを掲載。 ◻️不定期連載中

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短編小説 「5秒先への賭け」 【全編】

 アメリカ、ユタ州。月明かりに照らされた暗い田舎道を二つの光が進んで行く。  五月蝿い程のエンジン音と、ラジオから流れている音楽が交じる車内では、薄汚れたシャツにジーンズを着た中年の白人男性がハンドルを握っている。  助手席に座る、同じく拠れた服を来た黒人中年男性が、安そうな腕時計を気にした様子で確認している。  助手席の男は、徐にラジオを消し、「なぁ、マイク。今夜は金曜の夜だ。そろそろいつものアレやらないか?」と、悪戯っぽく笑いながら言う。  「ああ、そうだな。でも

    • 小説 「ギブンアップ」 01

       マンションの一室のドアの前に帽子を被ったピザの宅配員が立っている。宅配員は自身の腕時計を見て時間を確かめた後、インターフォンを押した。  暫くして、ジャージ姿のヤクザがドアを開け、宅配員を睨みつけた。  ピザの宅配員は怯む様子も無く、「お待たせしました〜。スペシャル・ハワイアン・ピザです〜」と軽い調子でと伝えた。  「ピザ?そんなもん頼んでねぇぞ。それにハワイアン? そんな気色悪いピザなんか頼む訳ねぇだろ」  「え?そうなんですか? でも、美味しそうですよ、ほら」と言

      • 小説 「シャークス・ラブ」 【全篇】

        第一章 「ジョーズ'87 復讐篇」 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」  「1985年12月7日」  「スター・ウォーズ」 「1978年6月30日」  得意げな顔で男が質問に答えていく。 「じゃ、ニューヨーク1997は?」  「1981年7月10日。あの映画はーー」 「いいよ、映画についての解説は。村上、その特技凄いんだけど、いったい何の役に立つのさ?」と喫茶店の席の向かいに座っている佐藤が呆れた。 「意外と役に立つもんだよ。合コンとかの席で、いいきっかけ作りにはな

        • 小説 「シャークス・ラブ」 第五章 【VOL.24-27】[完]

           村上は夕暮れの公園で一人肩を落とし、ブランコに乗りながら佇んでいる。  頭の中では先ほどレンタルビデオ店で細田に言われた事がぐるぐると頭の中を駆け巡っている。  どこを見つめているのか分からない視線で、目の前の情景を見つめていた。  砂場では男の子が一人、一心不乱に目を輝かせながら、砂で城の様なものを作っている。 「なんだよ、それぇ」その周りで遊んでいた子供たちの一人が、男が砂遊びなどをしていることが気に食わなかったのか、馬鹿にしたような目つきで子供の元へやってくる

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        短編小説 「5秒先への賭け」 【全編】

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        記事

          小説 「シャークス・ラブ」 第四章 【VOL.17-23】

           田舎町の小さな駅の脇に設置されている公衆電話。公衆電話の硝子から漏れる薄暗い光が辺りを照らしている。その光を目指し一人の少年が何かを呟きながら、必死に自転車を漕ぎ向かっていた。  少年は公衆電話の横へ無造作に自転車を止め、中へと入る。ズボンのポッケから取り出した百円玉を取り出し、受話器の上に載せると、今度は一切れの紙を取り出し見つめた。そこには電話番号が書かれている。  番号を見た瞬間、自信がこれから行おうとしている行為を想像し、恥ずかしさの余り逃げ出したくなったが、こ

          小説 「シャークス・ラブ」 第四章 【VOL.17-23】

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.27 [完]

          春の日差しが喫茶店の窓から差し込み、その光がテーブルの上のアイスコーヒーの氷を溶かし「カラン」と小さな音が鳴る。 村上が、灰皿においた吸いかけの煙草の火が消えかけるのにも気づかず、机の上の原稿に向かって悩みながら必死にペンを走らせている。 入り口のドアベルが鳴り「マスター、こんちは。アイスコーヒーね」と軽い調子で佐藤が入ってきた。 いつもの様に佐藤は村上が座るテーブルに向かい合って座るが、村上はそれに気づかない程集中して書いている。 佐藤が煙草に火をつけ「どう?終わり

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.27 [完]

          一年以上かけて少しづつ書いてきた小説「シャークス・ラブ」ですが、次回やっと完結できそうです。よかったら、読んでみて下さい。

          一年以上かけて少しづつ書いてきた小説「シャークス・ラブ」ですが、次回やっと完結できそうです。よかったら、読んでみて下さい。

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.26

          「君への気持ちは本当だ。葵と浮気した事は悪かったとしか言いようがない。ただ気持ちは君にある。それは神に誓って本当だ。ただ、いまはそれ以上に、映画なんだ。葵への時間も、君への時間もいまの俺には無いし、時間をかけたいのは映画なんだ。それがやっと分かったんだ。だから、俺と別れてくれ」 まなはしばし呆然と村上を見つめた後、深い溜息をつくと、笑みを浮かべた。向かいに座り、その笑みを見た佐藤は、これほど恐ろしく冷たい笑みを人生の中で見たことは無かった。 「あなたが何に時間をかけたいの

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.26

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.25

          いつもの喫茶店のいつもの席に落ち着いた様子で村上は、タバコを吹かす。ただ、その向かいの席にはいつもの親友の佐藤の姿は無く、元カノの葵がいる。 マスターが葵の前にアイスティーを置き、村上にはホットコーヒーを差し出した。いつもなら「サンキュー、マスター」の気軽な一言があるはずだが、村上からは何も発せられない。マスターは二人を一瞥すると店の奥へと去っていく。 重い沈黙が流れる中、村上の背後の席には村上を背合わせするように佐藤の姿があった、何が起きているのか分からず、挙動不審な表

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.25

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.24

          村上は夕暮れの公園で一人肩を落とし、ブランコに乗りながら佇んでいる。 頭の中では先ほどレンタルビデオ店で細田に言われた事がぐるぐると頭の中を駆け巡っている。 どこを見つめているのか分からない視線で、目の前の情景を見つめていた。 砂場では男の子が一人、一心不乱に目を輝かせながら、砂で城の様なものを作っている。 「なんだよ、それぇ」その周りで遊んでいた子供たちの一人が、男が砂遊びなどをしていることが気に食わなかったのか、馬鹿にしたような目つきで子供の元へやってくると、唐突

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.24

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.23

          細田は抱えたビデオのパッケージを太田に渡すと、細い目を見開き、村上を指差した。 「お前がイラついたのはまなちゃんに疑われたからだけじゃないだろ?ポイントは台本が書けていないって事だ。お前はいい客だし、いい友達だ。少なくとも俺はそう思って接している。だからこそ言わせて貰うけど、どうでもいいんだよ、彼女ができたとか、振られたとか。東京来てからのお前しか知らないけど、まず何をしに東京に来たんだ?」 細田は周囲に置かれている数々の映画を見て、村上の反論を受け付ける間も与えず続けた

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.23

          短編小説 「グレイとの恋」 【全編】

          「どうやら、目の前のこの美少女は異星人らしい」 男はずり落ちそうになった眼鏡を直し、目の前に突如現れた女性を呆然と見つめた。 この世界に異星人が現れて、早数十年が経とうとしている。侵略する訳でもなく、彼らは友好的に現れた。友好的とは言え、彼らはその異形から中々受け入れられる事が難しかったが、変身する<能力>を使い、人間の容姿を真似た事で次第に社会へと溶け込んいった。やがて、人類は彼らの<能力>でそれまで以上に発展していった。中には正体を明かし<能力>を使う事で各分野でスタ

          短編小説 「グレイとの恋」 【全編】

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.22

          むしゃくしゃする気持ちを落ち着けるのは映画しかないとばかりに、村上はビデオレンタル屋「スマッシュ・ヒッツ」に来ていた。しかし、映画を選ぶことさえ集中できず、パッケージを手にしては戻すことを繰り返している。 「万引きは犯罪ですよ。ちょっと事務所まで来て下さい」 背後からの突然の声掛けに慌てて声を荒げ「いやいやいや、万引きなんて」と振り向いた先には店員の太田と細田の二人がいた。 「そんな慌ててどうしたんだよ。冗談に決まってんじゃん」 「冗談に付き合ってる余裕なんてないんだ」

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.22

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.21

          村上が自身の部屋で、鉛筆を持ち、机の上に広げたノートを睨んでいる。ノートには白い空間が無限に広がり、村上はそれを見つめただけで目眩が起きそうになっていた。 背後のベッドに座り、本を読んでいたまなが「そう言えば、この前の水曜って何してたの?」と不意に声をかけた。 水曜は葵と会っていた日だとすぐに察したが、動揺を隠すように聞こえない振りをする。 「電話全然出なかったでしょ?」 「ん? なに? 集中してた」と村上は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティの父親の様に惚け

          小説 「シャークス・ラブ」 VOL.21

          小説 「シャースク・ラブ」 VOL.20

          村上と葵が付き合っていた当時通っていた、こじんまりしてはいるが、お洒落な雰囲気のイタリアンの店で料理を待ちながら、まず会話を始めたのは葵だった。 「ごめんね、突然呼び出しちゃって」 「いや、こっちも一度話しておきたかったからいいよ。それはそうと綺麗になったな」 村上の突拍子も無い発言で葵は目を丸くする。 「あはは、どうしたの急に?」 「振られたのは認識しているし、今更口説いても仕方ないのは承知しているが、昔から嘘は言わないだろ? 今の素直な気持ちだよ」 「ほんとだ。 目

          小説 「シャースク・ラブ」 VOL.20

          短編小説 「グレイとの恋」 #7(最終話)

          「何で撃つんだ!」と叫ぶ慎也に「もう情が移ったのか? 忘れるな、こいつらは異星人だ。可愛い顔していても一皮剥けば醜い事は知ってるだろ?」関口は冷酷に告げた。 悟は悔しそうに涙を浮かべる。 「見た目が酷かったら、ダメなんですか。中身は見てくれないんですか?」「…当たり前だ」 「ふざけるな!」血を流し床に倒れているエリが突如発する大声と口調に関口が驚く。 「見た目が違ったって、それが何だっていうんだ! エリちゃんはエリちゃんだ! それが何だって言うのさ。人間だって嫌なやつは

          短編小説 「グレイとの恋」 #7(最終話)