【日本語教師の本棚7冊目】「新 コーチングが人を活かす」を読んで授業で使うには
今週、仕事の関係で語学教師とコーチングについて伺う機会がありました。一度コーチングの本を読み直してみたいと思っていた時、こちらの本がKindleで読み放題に入っていたので、週末読み直していました。以前、この本の旧版は読んだことがありましたが、新版では新しい内容に改定されています。
前回読んだときは、一般論として読んでいた気がします。今回はあくまで「日本語教師としてこの知識を活かすには」という目線で読んでみました。いろいろ学べたので、個人的に授業に活かせそうな内容に絞ってアウトプットできればと思います。
生徒をどう「ほめるか」
生徒が自分のできている点に気づけるよう、どう褒めればいいのでしょうか。この点で、コーチングスキルから学べることがたくさんありました。
”私”の立場から承認する
承認し続ける
”私”の立場から承認する
教師の側のフィードバックは、先生の評価ではなく、「自分がどう感じたか」を伝える機会にすることができます。
逆に「あなたはこうですね」と「あなた」目線でほめると「今日はたまたま調子がよかっただけ」、「実はそんなに言いたいことを言えてなかった」と、教師の評価を否定しようとするかもしれません。特に、受験競争の中で「自己否定」型の教育の影響を受けた生徒についてはそういう傾向が強いように思いました。
しかし、「私はこう感じました」と言うと、それは教師の側の評価ですから、生徒も否定できずストンと相手の中に落ちます。
「〜さんのスピーチ、(私は)安心して聞けました!」
「〜さんの話は(私は)わかりやすくて、とてもおもしろかったです!」などと、自分の感想を述べるようにすることで、生徒は教師の承認を受け止めてくれると思います。
承認し続ける
教師の側からのフィードバックは、言い間違いの訂正やよりわかりやすい表現に言い換えるなど、否定的なフィードバックが多くなりがちです。もちろん、こうしたフィードバックは必要ですが、生徒が教師の「矯正」を意識しすぎるようになると、積極的に話せなくなってしまうように感じます。
一方で、教師が進歩している点をきちんと細やかに評価しているとどうでしょうか。
例えば、
前回よりも発音がよくなりましたね
話している時に、表情が明るくていいですね
この前言えなかったこの表現を使えるようになっていましたね
このように、細かいことでも「反応し、承認し続ける」ことができます。
教師が教室で「あなたの進歩を知っているよ、気づいているよ、見ているよ」という温かいメッセージを出し続けることで、教室の雰囲気も良くなり、生徒ものびのびと話せるようになると思います。
生徒がいまひとつ伸び悩んでいる時
目標についてとことん話す
not want(したくないこと)を話す
とんでもないリクエストをする
目標についてとことん話す
生徒たちはそれぞれ日本語を勉強する「理由」を持っています。「資格をとりたい」、「留学したい」、「日本で仕事がしたい」などいろいろなニーズがあります。
ただ、その「日本語を勉強する理由」や「ニーズ」が本人自身の目標と同じかと言えばそうでもありません。
ただ、生徒の側がなんのために勉強しているのかが明確でないなら、当然学習の成果にも影響がありますから、一度時間をとって「どんなことがしたいのか」目標を明確にする必要があると思います。
not want(したくないこと)を話す
また、本人もしたいことがはっきりしないこともあります。「留学したい」ということは明確でも、「留学してどんなことを勉強したいのか」、「留学して何を学びたいのか」といった具体的な点は不明確の場合もあります。
その場合は、「何がしたくないのか」をについて聞いてみることができると思いました。そうすると、たとえば「自分の国で他の人と同じ勉強を続けたくない」というNot Want(したくない)が見えてきて、次の積極的なステップを意識するようになります。
とんでもないリクエストをする
日本語能力試験(JLPT)を勉強している学生たちは、次N4その次はN3と、1級ずつ目標を持って進んでいく生徒が多いように思います。中にはN1まで取ることを目標にしていても、N2まで取れてしまうと安心してしまう学生もあります。せっかくできる生徒なのに、「自分にはN2くらいまでが限界」と自分で自分に限界をもうけてしまっている場合もあります。
そんなときは「大学在学中にN1まで取ろう!」と言ってみることもできます。たとえ、今はN3レベルだとしても、一瞬でもN1を意識してみることで、視界が開けるような感覚を味わえます。「やってみるか」と自分の限界を打ち破るような力が出てきます。
まとめ
あらためて本書を読んでみて、コーチングは日本語教師が使える知識の宝庫だと思いました。
また、学校が行う教師のトレーニングという観点でも、コーチングを取り入れることができそうですね。
(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)
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