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声から踊りへ

先史時代の原初的な身体表現のひとつに、歌や踊りがあります。

ここでは、音の認識と発声に着目してみます。というのも、物理的に音が出るということは、運動している状態がエネルギーとなり、振動という形でエネルギーの状態を表現し、発せられるからです。私たちは音を聞くとき、具体的には聞こえない音を心象として知覚しています。「ツルツル」「ザラザラ」といった擬音語、「ニコニコ」「ワラワラ」といった擬態語は、具体的には耳に聞こえない音として、心的イメージとして認識しているからでしょう。

work1: 声にならない声
1, 低い声を出す。どんどん音を下げていって声にならないところまで下げる、さらにさらに下げていくこと。体は無意識に喉を大きく開け低い姿勢となる。
2, 次に出せる限りの高い声を出す。どんどん音を上げて、裏声も通り過ぎて音が出ない位高いところまで上げていく、体は無意識に上に伸び上がったり、少し体をひねった姿勢になる。


この最低音の最高音を練習しておくと、声になる音域がスムーズに出るようになり、低音から高音のスリープがきれいに出るようになります。

低い声を出そうとすると低い姿勢になるたり、高い声を出そうとすると伸び上がったりすることから、多くの人は高い音は上に登るイメージ、低い音は下へ下りるイメージを感覚として持っています。
これは逆さまに捉えると、上昇する動きを途繰り出したい時は高い声お出し、重く沈むい動きを作るときは低い声を出しながら動けばいいということになる。
声に直接出さなくても、声にならない音域と音量で声帯をわずかに揺らしながら試してみると、声帯を揺らしている時と揺らさない時とで身体の反応は変わるでしょう。

Work2: 声のスイープと歩行
1, 低い音から高い音に向かって「 u 」の音で発声する。
2, 低音の時は姿勢を低くしたまま後ろへ歩き、高音の時は姿勢を高くしたまま前へ進む。腕の動きも加えてもよい。
3, 仲間がいる場合は、手をつないで輪になり、音の高さに合わせながら、低い音は外側に大きく開き、高い音は閉じて歩くとよい。

声を出すには予備動作として息を吸う必要があり、音の切れ目に素早く息を吸う必要があります。
音は声帯の振動によって作られますが、メロディーは声門の緊張をコントロールすることで表現され、その人の喉の大きさによって出せる音域は異なり、最低音と最高音の間で表現することができるます。
また、舌や唇を使うことで音のニュアンスを変え、さらに口から出すのと鼻から出すのとでは音質を変化できます。
これらを組み合わせることで、さまざまな表現が可能にしています。

Work3: 変な動物
動物園にいるよく知っている動物でもいいし、想像上の動物の鳴き声を真似してみる。
挨拶のように、はっきりとした声で行うこと。
高い声、低い声、長く伸ばす声、リズミカルな声など色々試す。
何人かの友達と一緒にやる場合は、個人で少し練習してから、その音で対話をしてみる。

声と身体のワークの先駆者の仕事を紹介しよう。野口三千三は人間の潜在的に持っている可能性を最大限に発揮できる身体作りを目的とした野口体操を提案する運動研究者です。野口が提唱する「原初音韻論遊び」という遊びを見てましょう。

ことばの実感を追求する
文字や意味の辞典的先入観の東縛を、バッサリ断ち切って、原初生命的自己の自由奔放 な世界を創り出し、その中にひたる。そこで、 いろいろな音をひとつひとつ取り出して、 何回でもくり返し発声してみる。そのとき、まるごと全体の自分のからだの中身の微妙な 変化が、その音をどのように感じとるか......素朴素直 ・勝手気儘 。無責任無秩序 ・線にし ようとしないで点のままで片 っ端からメモする。それを改めて新しく検討して、自分の実 感の方向を直感する。このような遊びを 「原初音韻論遊び」と名づける。
か」― 開放的。明るい。歯切れがいい。すみきっている。均質。湿度 ・粘度は低い。 温 度 は 適 温 (時 に 低 く 時 に 高 い こ と も あ る )。 明 度 。 純 度 は 高 い 。 空 間 的 位 置 は や や 高 い 。 時 間 的には短いが、忙しくはない。
「か」― 開放的。明るい。歯切れがいい。すみきっている。均質。湿度 ・粘度は低い。 温 度 は 適 温 (時 に 低 く 時 に 高 い こ と も あ る )。 明 度 。 純 度 は 高 い 。 空 間 的 位 置 は や や 高 い 。 時 間 的には短いが、忙しくはない…
「ら」「だ」と続く
「原初生命体としての人間」野口三千三
Work4: 「か」「ら」「だ」を身体で味わう
1., 原初音韻論遊び「か」「ら」「だ」という音を一文字ずつ発声してたいけんしてみる。
2, 友達と意見を交換する。

普段使っていることばの中にも語源をたどると、そのことばにまつわる運動のイメージからできていることばが多くあります。「うごき」という語源はなんでしょう?「うごき」「うごめき」など「うご」とい音は先史時代の日本人はどうのように「うご」ということばを決めたのでしょうか?
狩を団体で行う際に鹿が動くと同時に槍を投げたりといった状況を表現するために使ったのでしょうか?

Work5:  「うごき」ということばを新しく作くる
1, 原初音韻論遊びを応用して、「うごく」「うごめく」の「うご」の語源を体験してみる。2, 次に、あなただけの現代的な感覚で新たに再現してみる。例えばヒューゴットチョロなど
3, ことばを生み出そうとする自分の体をよく観察してみましょう。多くの人が身体が自然に動き出すはずです。たとえ大きく動かなくても、緊張している部分は変化しているはずです。
4, ことばが決まったら、紙に一本の線で描いてみます。左から右へ流れるように、高い音は上に、低い音は下にと、一本の線で単語を描くのが一般的ですが、ここでは自由に線を引いてみる。
この作業の目的は、いつでも同じ動きを取り出せるようにすること。
5, 描き終えたら友人と交換し、なぜそのような動きをしたのか意見を交換してみる。

「うごき」の「うご」の音は、昆虫の動きからきていると言われています。ひっくり返ったカメムシが手足を動かす様は、確かにウゴウゴという音に聞こえそうです。ただしこれは昔の日本人のコモンセンスです。現代人はどんな感覚で動きを捉えているのでしょうか?同じワークショップを行ったとき、「もっこりむほーす」ということばが生まれました。
身体はどうなっていたのでしょうか?
表情も動いているのではないでしょうか?
顔の表情は、音声表現と親和性が高いのです。

類人猿が人間に進化する過程で二足歩行になり、体毛が薄くなって顔の皮膚が露出し、顔と顔を使ったコミュニケーションが始まりました。顔は人の感情を表す流ために特別に進化したので、犬のしっぽよりも多くを語ることができるのです。

Work6: 表情筋を動かす練習
1, 表情筋をを使って、上下、右左、前後それから円を描いてみる。
2, オノマトペを顔と声を使って表現し、その音の移動も加えてみる。

創造した動きや感じている事を表現するなら、顔と声が自由自在に動くはずです。自分では見えていませんが自分の顔は心情が滲み出ていますから、今更恥ずかしがることはありません。
小さく顔で方向性を作ってから声をだしてみます。手や腕を使って細かい表現をかしてうごのニュアンスを細かくしていきます。最後にダイナミックに方向性をやリズムを表現するためにするため全身を使いましょう。

Work7: 出来事を声と音で表現してみる
これまでのワークでは単語を練習してきました。今度は文章に挑戦してみましょう。
1, 「朝起きてからすること」というテーマを声で表現してみましょう。まず、普段の日本語で文章を作ってみましょう。
2, 次にそのことばをオノマトペに変換します。
3, その次に読み上げながら動きを作っていきますが、パントマイムにならないように、動作の本意を自分の感覚に照らし合わせながら作業します。動きを作るために使う音は、元の音と異なっていてもかまいません。
全身で少し大げさに表現しましょう。
4, 完成したら、音の線画を書き込んでください。結構難しいので、忘れないように自分用のメモとして描いておきましょう。
例文: 
蛇口をひねり水を出して顔を洗い蛇口を閉めて水を止める、タオルで顔の水滴を拭き取る。
例オノマトペ: 
きゅっ、しゅわーーうううっわしゃ!ううわしゃ!きゅっ、、、もっふもっふもっふ
表現することが難しい場合もあります。ことばを入れてみましょう。ことばの語尾を伸ばしたり、繰り返しながら音をメタモルフォーゼしてみましょう。

子どもは手に持った人形になりきりながら遊びます。風車を持って走り回っているときは、自分が風車になりきっています。私たちは全身でイメージになりきることができるのです。そして、その身体感覚を改めて観察することで、まだ世の中に存在しないことばを生み出すことができるのです。

ダンスを習うときは全身運動から、
歌を習うときはフレーズを声に出して歌うことから始めるのが普通ですが、
表情を勉強した記憶はないですね。
動きの成り立ちや、表情が自分の体の中から生まれてくることを観察することから始めると、それぞれのオリジナルの表現ができるようになるのでしょう。そして小さな動きからも始められるので、周りに気づかれずに、どんなときでも踊り出せるようになります。

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