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「恋の病」を治すために「熊野」へ(熊野旅その1)


【後輩の恋の病】


今から3年前の年末、見るからに落ち込んだ様子の後輩に、「なんでそんなに暗いんだ」と問うと、「恋の病です」と言われたことが熊野へ行くきっかけだった。
予想外のワードに固まっていると、後輩はさらに語る。
「彼女とデートしている時に目についたゴミを拾ってゴミ箱に捨てたんすよね・・・そしたら彼女からなんでデート中にゴミ拾うんだ、ってケンカになって・・・結局別れちゃいました・・・」
それは「恋の病」ではなく「破局」「失恋」と言うほうが正しいのではないか、と言っても「恋の病なんです」と言い張る。
ゴミを拾うなんてむしろ立派な感じがするし、それだけが破局の原因とは考えづらい。おそらく彼女側にも今まで溜まったものがあるのだろう。
誰かを悪者にしても解決しないし、どうしようかと思っていたら、ふとひらめいた。
「年始に熊野に一緒に行かん?駅のポスターに蘇りの地・熊野って書いてあったんよね」

あとあと調べたら音楽祭のポスターだった

 もうどこでも連れて行ってくれという雰囲気の後輩が即座に賛成し、車も出してくれることになった。
これにて年始の男二人旅が決まった。
 そのスケジュールは仕事もあるしで、2日で熊野三山を巡るという無茶苦茶なものだったが、まだその無謀さには気づいていなかった。

【京都駅に停まる観光バス両面宿儺号】


1月4日、京都駅で合流した男二人。駅前には「両面宿儺号」という正月気分を吹き飛ばす名前のバスが止まっている。

京都駅前に停車する両面宿儺号

両面宿儺は日本書紀に、仁徳天皇の治世にあらわれた凶賊として記録されている。二人の人間が背中合わせになったような奇怪な姿をしており、顔は2つ、手足は4本ずつあったため、弓と刀を同時に使いこなすなんて離れ業が出来たようだ。

千光寺に所蔵される両面宿儺像

なんでも岐阜での両面宿儺は、袈裟山千光寺を開基したりと日本書紀と異なり、地元の英雄として伝承されているそうだ。
「呪術廻戦やん・・・」
後輩は両面宿儺を有名にした人気マンガ名をつぶやくが、バスにラッピングされた画像は、デフォルメされないガチの両面宿儺で文字フォントも何やらおどろおどろしい。これは観光に資するものなのだろうか・・・

とにかく時間は限られているので、後輩の車に急いで乗り込み高速道路で和歌山へ南下を開始する。

最初の目的地・和歌山県白浜町まで結構ある

【安定しないアクセル踏み】


ここで後輩の運転があまり上手くないことに気づく。
アクセルを安定して踏めないのか、エンジン音が「ウーン・・ウン・・・ウワーン・・ウン」となる。走行スピードが一定にならないためにいきなり酔いそうになる。
「代わりに運転しようか?」と聞くも、後輩の車のため拒否されてしまう。

「ウーン、ウワーン、ウーン、ウワーン」

と高くなったり、低くなったりするエンジン音に焦りながら、なんとか和歌山県入を果たしたのだった。

後輩の安定しないエンジン音に文句を言っていたら、自分もペース配分間違えていたようです。第一回は和歌山に入らないのに終わります。

(その2へ続く)



【後輩のライフポイント】


🔴🔴◯◯◯◯◯◯◯◯ 2/10
※結構限界・・


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