■ 塔本絵画教室の魅力について
塔本絵画教室は地元の団地近くにあるプレハブ小屋の一角で毎週木曜日に開いてました。四歳はなれている兄が最初に通いはじめ、それが楽しそうでぼくも釣られていっしょに通いはじめました。
当時を知る母親に言わせると ぼくはあんまり楽しそうではなかったらしいです。けれど本人的には それは創作の難しさを噛み締めていたからで むしろ真面目に楽しんでいたと思ってます。
教室のあった学区は東小学校圏内でしたが、ぼくは他校に通っており、あまり知ってる人がおらず創作に向かう現場でいちいち友達づくりに精を出すのもちがうと踏んでいたので、アウェーで創作に勤しんでました。
結果的に静かな環境を好みました。ガヤがうるさい先生の周りはうろつかず、ちょっと離れた教室の隅っこがぼくのテリトリーでした。
特に写生が好きでした。みんなと離れてずっと遠くのほうで描くもんだから帰りに忘れられそうになったりもしました。
そんなぼくを先生はどう思っていらしたのか。
亡くなってしまった今となっては聞きようがありませんが、気にしてくれていたのは その後の付き合い方でわかってます。話し相手もおらず暗い感じだったから ちょっと心配かけていたかもしれません。
とても懐かしいです。
さて そんな塔本絵画教室の魅力なんですが やっぱり先生お二人の独特のオーラに尽きます。
ひろこ先生は朗らかな性格でいつも笑ってらした印象がある。ソバージュかけた明るめのヘアスタイルで気高く気品に満ちた綺麗な方でした。
一方、賢一先生はこちらも常ににこやかではあるんですが、子どもながらにちょっと怖いというか内に秘めた並々ならぬ闘志を感じる方。一筋縄では自分の意志を曲げなさそうな強さを感じていました。
そんなお二人の性格は作品からも読み取れました。
ひろこ先生の作品はとても、メルヘンな女性の理想を追いかけたような花いっぱいの明るい作風。
賢一先生の作品はいくつか紹介させていただいたようにとても実験的でアバンギャルドな作風。
このまったくちがう作風が逆にコントラストを引き立たせており、互いに互いの世界を尊重し合いながら 夫婦であられるのだなぁと 特に既婚した今だからこそ 改めてこのお二人の関係性に強いオーラを感じます。
逆に ほとんど描き方なんてものは習いませんでした。ただ描いて 見せて飾ってもらったりしただけで そこから得られるものというより お二人の生き方関係性に惚れていったのだと思います。
おわかりいただけると思うのですが、この二人は子どもに対して媚びるようなマネは絶対にしませんでした。
自分の絵は自分の絵として きっちりと棲み分け区分し、子どもに媚びた絵など描かない。そこに一番 信頼を感じていた気がします。
子どもながら、先生たちの絵のスゴさはよくわからなかった。とくに賢一先生の絵になるとちょっと怖いくらいでした。
でもそれがよかった。
そんなワケわからない絵を描きながら先生は全面的に子どもにやさしかった。本当に子どもが好きなことが見てとれた。
子ども好きなのと子どもの創作と 自分の好みと自分の創作。どれも別個のものであり 同じであっては 逆に媚びてて失礼だ。どれも本気なのだとすれば そのどれもが譲れぬはず。
もしこどもアトリエ「ごっこ」をはじめられたとしても きっとぼくも変わりません。たとえ変な目で見られようとも ぼくはこのまま ぼくを貫きながら 先生たちのように 子どもにも本気であり続けようと思ってます。