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小さな勇気(卒業式の話)

大学の卒業式が無事に終わりました。学士の学位が授与され、めでたく卒業と相成りました。親をようやく心から安心させることができたのと、17年間に及ぶ僕の学生生活にやっとピリオドが打たれた。人生が小説ならこれで一つの章が終わったということ。感慨深いねえ。本当はまだ学生でいたいが。

今はこうやってしみじみしているけど、卒業式の日は色々とブルーな気持ちにもなった。式典自体は良かったけど、その後のみんなでわちゃわちゃするあの時間がとても苦痛だった。本来僕は去年に卒業したはずの人間なので、この場に友達や知り合いと呼べる人がいない。ゼミの同期は元々後輩なので一緒にいるだけで気まずい。向こうはどうでもいいかもしれないが、こっちはかなり気にする。結局、ゼミメンバーと写真は全く撮れず、密かに抱いていた「卒業袴の女子と写真を撮る」という夢はついに叶わずに終わった。一人ぐらい向こうから写真をお願いされてもよかったのによ、、

でも僕にはサークルという心の拠り所がある。あそこに向かえば、みんないるはず・・・そう意気揚々と向かうと、誰もいない。あれれ?例年ならここでみんな溜まっているのに。部室に行っても真っ暗。え?ひどくない??去年ここで集合写真を撮ってたよね??あいつもあの子もいたよね??今年もちゃんと卒業生いるのに、卒業生をほったらかしにしているの??泣

こちらに関しては僕の責任ではないとはいえ、これでまた一段と孤独を深めてしまった。周りを見渡せばどこもかしこも男女の集まりがあって、楽しそうに談笑していたり写真を撮っている。
こんな日にまで僕は何をしているんだ・・・

一応、同期でまだ在学中の友達2人に連絡してみた。一人は留学中で海外にいて、もう一人は卒業式に来ているはずなのに返信が遅く会えそうにない。もはやこれまでかと思い、最後に図書館で何か借りようと思い図書館へ。こんな日でも開いてるんだね。

館内は疎らで、さすがに卒業生と思しき人は見当たらなかったw
適当に興味のあるコーナーへ向かい、2冊の本を選んだ。これが最後だ。いつもは読み終わらずに返却期限を過ぎてしまうことも多いけど、今回ばかりはちゃんと読了します。今までありがとう、図書館。

サークルは戻ってももう何もないので一人寂しく夜飯を食べることにした。選んだ店は、一年生の時から通っている大学前のラーメン屋さん。この日もいつも通りとっても美味しかった。最後に「4年間お世話になりました」と大将に御礼を伝えた。本当は5年だがw

店を出て、駅前へ向かう。結局、友達からの返信はない。その程度の関係だったってこと。キャンパスに戻ることもできたが、会う相手もいないし一人で歩き回っても空しいだけなので、帰ることに。

駅のベンチに座ると、隣に卒業生と思しき女子がいた。そういや今日、女子と写真どころかまともに話してもない。(男もそうだけど)
話しかけていいかな。写真撮ってくださいって。いや全然知らない女の子に話しかける男ってどう考えてもヤバい奴だろ。同じ卒業生でも。どうしようって考えあぐねているうちに電車が来てしまい、彼女は乗っていった。

でもこのまま帰ったら後悔しそうな気がして、電車には乗らず引き続きベンチで待った。いつもの僕なら諦めてしまうところなのに、この日は第六感みたいなものが働いた。何本分か待っていると、男女4人衆が近くに来てそのうち女子2人が隣に座った。持ち物からして卒業生だ。

この人たちに賭けようか。いや、やっぱり迷惑だよな。いきなり写真撮ってくださいって話しかけるのなんて、変な人確定じゃん。でもそんなこと考えたら何もできない。今この瞬間だけ恥をかけ。全てを捨てる覚悟で僕は横の彼女に話しかけた。

"実は僕、留年していて、友達とか全然来てなくて。今日ほとんど誰とも写真撮ってないんです。よかったら一緒に撮ってくれませんか。皆さんで。"

※実際はこんなに流暢には喋ってません

ずっと心臓がバクバクしていた。向こうも何だこの人みたいな表情できょとんとしていて(そりゃ当然だが)、緊張が止まらなかった。

彼女の反応は薄かったが、男の方に行って呼びかけてくれた。改めて事情を説明すると、彼は「ぜひ撮りましょうよ~!!」と肩をポンポンして快諾してくれた。やった、ノリのいい人で良かった・・・!が、ちょうど電車が来てしまったので、ひとまず乗車して、乗り換え駅に降りる時に一緒に撮ることになった。とりあえず、OKしてくれて本当によかった~!!こんなこと、あるんだ・・・!!

電車では普通に皆さんで雑談した。思ったよりちゃんと(?)話した。彼らはみんな同じサークルの仲間で、この後は飲み会に行くらしい。やっぱり普通はこうやってサークルで集まるよね。
向こうからも積極的に話や質問を振ってくれたし、僕も彼らのサークルと共通する話題を出したりして、結構楽しく話せたんじゃないかと思う。コミュ力があって、いい人たちで良かった。

乗り換え駅に着いた時は、女の子たちも含め僕のことを下の名前で呼んでくれてて、一緒に5人で写真を撮った。まるで僕も仲間みたいだ。初対面なのにいいのかなw
でもこういうことしたかったんだ僕は。やっとできた。。
話しかけてよかった。うるうる。。

撮った後、女の子の一人から「やりたいことを口にするのは大事」と言われて、本当にその通りだなって思った。今までの僕の性格なら、こんなことは絶対に言えなかった。シャイで、臆病で、受け身で、自分の気持ちを素直に打ち明けられない。noteに書いてることはリアルの知り合いには絶対バレたくない。しかも、実質「卒業式で友達がいない僕と写真を撮ってください」というお願いなんだから、余計に恥ずかしい。。でも言っちゃった。ここで言わないと、ずっと後悔してしまうって思ったから。勇気を出して話しかけて本当によかった。そして、話しかけた相手がこんなに素晴らしい方たちで本当によかった。僕のわがままに付き合ってくれて、ありがとう。

ノリのいい気さくな彼とは何とLINEも交換し、撮った写真を送った。まさか卒業式で友達が増えるとはw
こんな人たちと、最初から繋がれていたらなぁ。僕の学生生活、どうなっていただろう。

たまにこうやって自分のサークル以外の人たちと交流すると、自分のいる世界がいかに異質かよくわかる。僕も含めて、そういう人間ばかりが集う世界なんだなって思う。だから、もう1つ"まともな"サークルに入ればよかったなって今になって思うよ。そうすれば、普通に彼女できてたかもしれない。

でも終わったことはどうしようもない。
僕なりに幸せな時間は少なかったけど確かにあった。ねっ?

ともかく、勇気を出して知らない人の輪に入れたこと、最後に大学生らしい時間を過ごせて、本当によかった。寂しい卒業式のままでは絶対に嫌だったから。これで、学生生活を振り返る時の思い出が一つ増えた。

ほんの小さな勇気が、自分の未来を切り開くかもしれない。
新しく大学生になる君にはそう伝えたい。

またお会いしましょう。

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