見出し画像

刑法#7 因果関係に関する判例

本気で合格目指すなら❗オススメ資格スクール


Twitter

構成員の検討

実行行為→結果→因果関係

因果関係

→条件説
「あれなければこれなし」裁判所判断はこれに基づくが、基準としては緩い。
→相当因果関係
条件説に基づき、さらに社会通念により相当であるかを確認する。
※危険の現実化と併せて、法的因果関係という。

米兵轢き逃げ事件 S42.10.24
米兵が人をはねて逃走した。被害者は車の屋根に乗り上げて失神。助手席の連れ合いがそれに気づいて、ひきずりおろして、アスファルト道路に叩きつけられた。被害者は打撲により死亡している。業務上過失致死で起訴された。
→被害者の致死原因は、車で轢いたことか、ひきずりおろしたことかは確定的ではない。
車で轢いたことと被害者の死亡においては条件説においては肯定されなくもないが、相当因果関係説を鑑みると、介在行為であるひきずりおろしは相当性を欠く。よって、車で轢くということと死亡の間には因果関係を肯定できず、業務上過失致死にとどまる。

H18.3.27
被告人は自動車に被害者を監禁していた。後ろからトラックに追突されて被害者は死亡した。
→直接的にはトラックの過失運転により被害者は死亡したわけだが、被告人の監禁行為は死亡という結果に因果関係がある(監禁致死)。

大阪南港事件 H2.11.20
被害者は飯場で被告人に暴行を受けて障害を受けた。その後別の場所で被害者は置き去りにされ、結果的に死亡に至る。しかし、死亡に至るまでに第三者にて暴行を受けて死因が早められていた。
→この状況でも被害者の暴行行為と被害者の死亡には因果関係がある。

H4.12.17
海中潜水の夜間指導があった。指導者、指導補助者、受講者で実習がされていたが、指導者は不用意に受講者から離れ、その歳に受講者は酸素ボンベを使い果たして溺死した。補助者は経験が極めて浅い者であった。
→受講者や補助者が不適切な行動をしていても、指導者の行為と被害者の死亡には因果関係がある。

S53.3.22
熊狩りをしていた被告人は熊と間違えて被害者を撃って重症を負わせた。目撃者もいないので、被害者を殺して逃げようとしたのでさらに銃を発射して被害者を殺した。
→被告人の第一行為は業務上過失傷害、第二行為は殺人であり、併合罪となる。
→判例上は第一行為と第二行為の因果関係を否定したとされるが、第二行為には相当性が肯定されるとして、第一行為と結果に因果関係を認めるべきとする意見もある。

S63.5.11
医師の資格のない者が誤ったアドバイスで被害者を死なせた場合
→本来ちゃんと医師の診察を受けるべき過失が患者にあるとしても、アドバイスと死亡には因果関係がある。

H15.7.16
執拗かつ激しく暴行を受けたものが、極度の恐怖感を抱いて、高速道路に侵入し、自己で死亡した。
→この状況での被害者の行動には相当性があり、暴行と死亡の間には因果関係がある。

H1.12.15
被告人が被害者の13歳の少女をホテルに連れ込み覚醒剤を注射し、その後少女は死亡。被告人は救護行動をせず逃亡。
→被害者は若く、基礎疾患もないため、救護を受けていれば十中八九助かっていたため、被告人の行為と被害者の死亡には因果関係がある。

H46.6.17
被告人が暴行を加えた。被害者は心臓に疾患を抱えていたので、死亡してしまった。
→暴行と致死には因果関係を認めるべき余地がある。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①殺人は結果犯、住居侵入罪は挙動犯である。

→◯ 前者は結果がでてはじめて既遂となる。したがって、殺人の故意をもって人を刺して、死なないのであればそれは殺人未遂となる。後者は実行行為のみで既遂となる。

②甲は乙に致死量の毒入り饅頭を食べさせた。その後、乙は毒が回る前にバスに乗り、交通事故により志望した。甲は殺人罪の既遂となる。

→✕ 死亡という結果を生じさせたのは交通事故であり、因果関係が断絶されている。甲の行為は殺人未遂となる。

③甲は殺人の故意をもって乙を刺した。障害を負った乙は病院へ赴こうとしたが、その道中で交通事故によって死亡した。甲の行為は殺人未遂となる。

→✕ 確かに甲の行為がなければ乙は病院にはいかなかったのだが、条件説の中でも交通事故により因果が断たれると考えられる(因果関係の中断)。甲の行為は殺人未遂となる。

④甲は自動車運転中に過失により人をはねた。はねたれた被害者はそのまま屋根にはねあげられ、同乗者が被害者をひきづりおろした。なお、甲と同乗者は意志疎通がない。同乗者の行為によって、被害者は死亡した。判例は甲の行為と被害者の死亡には因果関係があるとした。

→✕ 因果関係を否定している。最高裁判決昭和42.10.24の判例であり、行為と結果の因果関係に相当性がないとして否定している。すなわち、相当因果関係説を採用した判決であるとされる。

#司法書士 #行政書士 #宅建 #公務員試験 #法学 #講座 #聞き流し



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?