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刑法#8 未遂

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未遂


→実行に着手してそれを遂げないこと。反対概念に既遂がある。実行の着手とは実行行為の端緒である。
→未遂はあくまでも条文上に明記されている場合に罰することがてきる。

障害未遂


→実行に着手してそれを遂げない場合。
刑は任意的に減軽することができる。
ex.①住居侵入して金目の物を探したが、めぼしい物がない。
 ②住居侵入して金目の物を探していたが、家人の物音がしたので逃げた。

中止未遂


→自己の意志で犯罪を中止した場合。
刑は必要的に減免される。
※ちなみに、刑を免除されたとしても、それは有罪であることに変わらないことには注意。
→自由意思により、すなわち犯罪をしようとすればできるのに、しなかったという点が重要。
ex.①住居侵入して金目の物を物色したが、故郷の母を思い出して改心。
 ②住居侵入して金目の物を探したが、別日の方が実入りはいいだろうと、盗まずに去った。→動機はともかく、とりあえず自由意思により犯罪をしなかったため、一応中止未遂となる。
 ※障害未遂及び中止未遂の上記①②において、いったん金品を取得したが、やっぱりやめておこうと、住居に戻ってそのまま物品を返した場合は窃盗既遂になることに注意。

【コラム 刑の免除】
刑が免除されても有罪ではある。構成要件に該当して違法かつ有責だからである。しかし、刑は免除するというだけである。

着手未遂


→犯罪の実行行為を開始したが成し遂げていない。例えば殺人のために拳銃をかまえたが思うところがあり、改心して中止した場合。
この際は自らの意志で犯罪をやめれば中止未遂となる。

実行未遂


→実行行為が終了して、かつ結果は未遂となった場合。たとえば、殺人のために拳銃を発泡したが、傷害にとどまった場合。中止未遂が成立するためには着手未遂より厳密になる。
→たとえば上記のケースで、傷害に驚愕して救急車をよんで逃げた、くらいでは中止未遂とはならない。救護隊員に事情を説明する、被害者が救急車に乗るところを見届けるくらいの「真摯さ」が必要とされる。
※上記のケースにおいて「真摯に」行動したが、被害者が死亡した場合、結局は殺人既遂となる。

中止未遂を必要的に減免する理由


①犯罪を防止するため
※未遂だけをなぜ減免するのかという批判
②違法性の減少
※結果無価値論にたつと、法益侵害の結果やその危険性にて断罪されるべきという批判
③非難可能性の減少
※ならなんで、自己の意志で行動した結果、既遂となったら罪を減軽しないのかという批判

共犯による中止未遂


AとBが共謀してCを殺害しようとした場合、Aが自己の意志で中止したとしてもBが実行既遂してしまえば、Aも共同正犯となる。Aが中止犯として認められる場合はBの実行を止めるところまでいかないといけない。この場合、Aは中止未遂、Bは障害未遂となる。

予備罪・準備罪


→一定の重要犯罪につき、その準備の挙動でその行為がとがめられる場合がある。
ew.殺人予備、強盗予備、通貨偽造等準備など。ちなみに詐欺や窃盗で予備罪はない。
→予備罪は未遂とは別枠の存在であり、たとえば殺人予備の未遂などはありえない。あくまでも、予備罪はその挙動で既遂となる。

法条競合


→殺人のために準備をして、それを既遂した場合、殺人罪のみが成立し、予備罪は成立しない。

未遂と不能犯


→刑法の法益保護機能により、既遂はもちろん、法益侵害惹起の現実的な危険性のある行為を処罰するところにより、未遂犯処罰の根拠がある。

未遂は相対不能
→状況によりできる場合とできない場合がある。
不能犯は絶対不能
→どんな時でも決してできない。

実行の着手


→実行行為の端緒である。構成要件を該当する行為、又は構成要件該当に密接に関係する行為である。前者は拳銃弾丸発射、後者は拳銃の標準をあわせる行為などが典型である。

→実行の着手の例
①あるものを毒殺しようと毒要りまんじゅうを郵送する。
※あくまでも相手が受領してから実行の着手。
②窃盗目的で住居の鍵を壊す。
※器物損壊にはなるだろうが窃盗の実行の着手とはならない。
③窃盗目的で蔵の鍵を壊す。
※金目のものに近づいたとされるので実行の着手が認められる。タンスやレジ、金庫に近づくなども同様。
④すりの目的でポケットの外側にふれた。
※窃盗の実行行為が認められる。
⑤財布の有無を調べるためポケットにふれる、いわゆるアタリ行為
※ある意味で準備行為ではあるが、窃盗の準備罪は存在しない。窃盗の実行の着手にもならない。
⑥強制性交の目的で女性をダンプカーにひきづりこんだ。
※強制性交等罪の実行の着手が認められる。
⑦強制性交の目的で家まで女性を送るとダンプカーに乗せた。
※強制性交等罪の実行の着手が認められない。

既遂と未遂


①スーパーマーケットの商品がレジの外に移動した時、窃盗既遂となる。
②家宅侵入して窃盗の既遂は盗品を勝手口まで運んだ時になる。
③他人の遺留物を領得する目的で隠匿した場合は窃盗の既遂となる。
④自転車を領得する目的で数メートル移動させると窃盗の既遂となる。
⑤ブロックに囲まれ、警備員までいる倉庫に侵入して窃盗が既遂となるのは倉庫外ではなく、敷地外においてである。

可罰的違法性
→あまりにも軽微な罪は可罰的違法性がなく、処断できないとされる。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①一定の重大な犯罪において実行の着手前の行為が処罰される場合がある。典型例としては、殺人予備罪、強盗予備罪、通貨偽造等準備罪、および窃盗予備罪、詐欺予備罪がある。

→✕ 窃盗予備罪や詐欺予備罪という犯罪類型はない。 

②犯人は対象者に殺意をもって拳銃を構えたが、考え直して、なにもせずに去った。この場合、殺人未遂罪が成立する。

→◯ 銃を構える行為は構成要件に該当する行為、またはこれに密接する行為として認められる。なお、中止未遂となる。

③犯人は拳銃を発砲し、被害者は倒れた。犯人はとどめをささずに逃げ出したが、被害者は一命をとりとめた。この場合は中止未遂が成立しない。

→◯ 中止未遂の中でも実行未遂にあたり、とどめをささなかった程度では中止未遂として認められない。

④犯人は拳銃を発砲し、被害者は倒れた。犯人はその後救急車を呼び、自らは逃走した。この場合、中止未遂となる。

→✕ 実行未遂であり、救急車が来るのを見届け状況を説明し、自らも付き添うくらいのことをしなければ中止未遂として認められない。

⑤犯人は拳銃を発砲し、被害者は倒れた。その後、犯人は自分で被害者を病院に運んだが、結局治療の甲斐なく被害者は死亡した。この場合でも、中止未遂が成立する。

→✕ 未遂ではなく、もはや結果が生じてしまい、既遂となる。

⑥犯人二人が共同して殺人の実行に着手した。そのうちの一人が勝手に離脱し、もう一人が殺人を既遂した場合、前者は殺人未遂、後者は殺人既遂となる。

→✕ 中止未遂(実行未遂)が認められるためには、上記の場合、もう一方の犯行をも中止させなければならない。そうでなければ両人とも既遂となる。なお、犯行を中止させたなら、させた方が中止未遂、された方が障害未遂となる。

⑦共同正犯者の中止未遂が認められるためには着手未遂の場合は他の犯人に犯行をやめさせ、実行未遂の場合は実行による結果を阻止したことが必要である。

→◯

⑧予備罪は一種の挙動犯であり、未遂が認められない。

→◯

【コラム 法条競合】
殺人の予備を行った後にその実行に着手したときは殺人の未遂罪や既遂罪のみが成立し殺人予備罪は成立しない。

⑨犯人は拳銃の引き金を引いた。しかし、第三者の手により弾が抜き取られてきた。この場合は不能犯として不可罰である。

→✕ たまたま弾が入っていないだけで拳銃で人を殺害することはできる(相対的不能)。したがって、不能犯ではなく未遂犯(障害未遂)となる。

⑩受取人を殺害するため準備した毒入り饅頭入りの菓子箱を郵便局にもっていった。殺人未遂罪が成立する。

→✕ 実行の着手は郵便を相手方が受け取った時である。なお、本件は殺人予備罪となりうる。

⑪窃盗目的である邸宅の入り口の鍵を壊した。この場合窃盗罪が成立する。

→✕ 実行の着手とはいえない。ただし、邸宅ではなくて金庫や土蔵の鍵を壊したなら窃盗の実行着手である。

⑫車中で財布の有無を確認するために乗客のポケットの外側に触れた場合、直ちに窃盗の実行着手となる。

→✕ 犯人にすりの目的で触れたのであれば実行の着手となるが、その準備として財布の有無を確かめるにとどまる場合は窃盗の実行着手とはならない。なお、窃盗の予備罪や準備罪はない。

⑬詐欺罪の実行の着手は欺罔行為、強盗の実行の着手は暴行や脅迫である。

→◯ 詐欺罪であれば欺罔行為があり、相手方が詐欺に気づいたが犯人を憐れみ、金員などを渡した場合は既遂とはならないが未遂となる。
詐欺罪は欺罔された状態で財産的処分を被害者がすることにより既遂となる。

⑭ブロック塀で囲まれ、警備員により警備された敷地内にある倉庫に侵入して、中のタイヤ二本を倉庫の外に搬出したところで警備員に発見された場合、当該行為は窃盗の既遂となる。

→✕ 警備員のいる敷地内にいる限りはまだ窃盗物を自己に移転されたとはみなされない。

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