刑法#45 文書偽造の罪③
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私文書偽造罪
→客体は下記である。
①権利、義務に関する文書
※領収書、債権証書
②事実証明に関する文書
※履歴書、鑑定書
余談だが、私用文書毀損罪の客体は権利義務に関する文書
→旅行記は①②にもあてはまらないので、他人名義を用いても、当該犯罪とはならない。
→なお、警察官や司法警察権のある公務員の供述書に他人名義で記名することは、本人了承を得ていても無効であり、当該犯罪が成立する。
→他人の印章や署名を利用した偽造の方がそうでないものよりも罪が重い。
→属人主義をとる。
虚偽私文書作成罪
→虚偽公文書作成罪とは違い、私人が自己名義でデタラメを書いても犯罪ではない。
→その例外が医師が虚偽で診断書、検案書、死亡証書を書くと犯罪となる。
→なお、公営病院の医師など公務員が上記を犯す場合は虚偽公文書作成罪となる。
通貨偽造罪及び行使罪
→行使罪は、あくまでも通貨を流通におくことであり、例えば偽造通貨をみせて自己の資力が十分であると相手方に誤信させることは当該犯罪とならない。
→通貨を偽造して、使用し、つり銭を騙しとる場合、偽造罪と行使罪の2罪である。偽造通貨の行使は詐欺行為を内包する。
→すぐにつきかえしたとしても、偽造通貨を相手方が受け取った時点で犯罪は成立する。
→事情を知る者に偽造通貨を渡すと、偽造通貨交付罪が成立する。
有価証券偽造罪及び行使罪
→有価証券とは、財産上の権利が証券に表示されてその権利行使につきその証券の占有を要するもの
※公債証券、株券、手形、小切手、乗車券、宝くじ、馬券、商品券、貨物引換券など
※貯金通帳や無記名定期預金証書はそれがなくても権利が行使できるため、有価証券ではない。
→偽造有価証券をみせて己に資力が十分であると相手方に誤信させることは犯罪である。
※ただし、単に預けるだけでは行使とはなされない。
→有価証券を偽造して、これを使用して相手方から財物を詐取した場合、有価証券偽造罪、その行使罪、詐欺罪の牽連三罪である。
→他人はもちろん、架空名義においても有価証券偽造罪は成立する。
偽造私文書の行使
→偽造私文書を公正役場や司法書士事務所で呈示など
通貨偽造準備罪
→通貨偽造のために器械や原料を準備すること。よって、インクはあてはまるが、偽造工場の賃貸借はその限りではない。
【コラム 偽造と背任】
たとえば株式会社の代表取締役は会社名義の小切手などを振りだす権利がある。したがって、私用のために、会社名義の小切手を振り出したとしても、それは偽造ではなく背任である。一応は小切手を振り出す正当な権利があるからである。
演習問題
次の設問に◯か✕かで回答せよ。
①刑法は、私文書偽造罪については、日本国外においてこの罪を犯した日本国民に対しても適用することとし、いわゆる属人主義を採用している。
→◯
②市立病院の医師が、公務員に頼まれ公務所に提出すべき診断書に虚偽の内容を記載した場合、虚偽診断書等作成罪が成立する。
→✕ 医師は公務員であるため偽造公文書作成罪が成立する。
③偽造した株券を見せて自己の資力が十分であると相手方に誤信させた。この場合に偽造有価証券行使罪が成立する。
→◯ 偽造有価証券はそれを使用すれば行使罪が成立する。
④偽造した通貨を見せて自己の資力が十分であると相手方に誤信させた。この場合に偽造通貨行使罪が成立する。
→✕ 偽造通貨の行使の意味は通貨を流通におくことである。
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