民法#43 時効取得と登記
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時効前の第三者
→ある占有者が取得時効を完成する前に所有者が売却や贈与、相続などにより別人に所有権が移転した場合、時効完成後に時効取得者は登記なくして対抗できる。
→この場合、買い受け人や譲受者、相続人は当事者であり、177条における第三者ではないため、対抗関係とはならない。
【条文】
民法第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
登記請求権と債権者代位
①→②→③と所有権が移転した場合、登記が①のままの場合につき、①が登記移転に協力してもらえない場合、②は登記移転請求権をもつ。
しかし、②も協力してくれない場合はどうか。③は①とは売買契約はなく、前主後主の関係だから、第三者でもない。しかも、①→③の中間省略登記も認められない。
この場合は、③は②への登記請求権を被保全債権として、②の①への登記請求権を代位行使することができる。
なお、①→②→③→④と所有権移転がされたが登記が①のままである場合、代位をさらに代位することもできる。
時効完成後の第三者
→時効取得した後に、元々の所有者が売却や贈与を第三者にした場合、民法177条が適用される対抗関係となる。したがって、登記の先後で所有が決する。
※ちなみに、上記の場合で時効完成前に第三者が所有権を得て、時効完成後に登記をした場合は時効取得者は登記なくして、第三者に対抗できる。
→さらには、第三者が時効取得者が多年にわたってその不動産を占有していることを知り、登記の欠缺を主張するのが信義に反する場合は背信的悪意者となる。すなわち、登記なくして対抗できる。
→上記みていたように時効取得者にとっては第三者が時効取得前にあらわれてもらった方が有利である。
うまいことそうなるように起算点を調整できるかという論点があるが、裁判所はそれを否定している。あくまでも、時効の基礎たる事実が開始した時を起算点とするとしている。
→時効完成後に第三者がでてきて、第三者が先に登記をとなえて所有権を得た後に、時効のため占有を続けていたものがさらに占有を続けて取得時効の要件をあらためて得た場合は登記なくして時効取得を主張できる。
※なお、あらたな時効の起算点は第三者の登記の時点である。
抵当権が絡む場合
→時効完成後に元の持ち主が抵当権を設定した場合で、先に抵当権者が登記を備えた場合は、時効取得者が所有権をもちそれに抵当権がつくかたちとなる。
この場合、さらに抵当権の登記を起算点として、あらたに取得時効が成立した場合、時効取得者は抵当権消滅を請求することができる。
→しかし、上記の事例で、抵当権登記の後に、時効取得者が取得時効による所有権を登記してしまうと、確定的となり、さらに取得時効の要件をあらためてそろえても抵当権の消滅を主張できなくなる。二度時効取得はできないという司法判断となる。
新たな時効の起算点について
→取得時効のための占有をさらに続けた場合、新たな取得時効の起算点は、その所有権やその他の財産権を第三者が登記したときである。
→二重譲渡の際に、引き渡しを受けたが登記をしていない場合、相手方に先に登記を備えられてしまえば所有権は相手方にうつるが、占有を続けて要件を満たせば時効取得は可能である。この時は引き渡しの時が時効の起算点となる。
【コラム 登記請求権と中間省略登記】
A→B→Cと所有権が移転した場合に登記がAのままの場合、AとCには直接の契約関係はないが、前主と後主の関係となるため、民法177条の第三者とはならない。
CはBに、BはAに登記請求権をもつが、Bが登記請求権を行使しなかった場合でも、中間省略登記は原則としてすることはできない。
したがって、AからB、BからCへの段階を経た登記を要する。この場合、Cは債権者代位権の行使によりAからBへの登記を実現させることができる。なお、中間者が複数いる場合に代位の代位をすることもできる。
最後に、中間省略登記について補記するが、前述のように原則的にすることはできない。ただし、中間省略登記は債権的登記請求権であるため、中間者も含めた当事者全員の同意があればすることができる。同意をしていない中間者は代金の支払を受けていないなど抹消を求める正当な利益がなければ抹消を請求することはできない。
また、中間省略登記がされた場合、それが現在の権利関係に合致していればその登記は有効であり、第三者はその抹消を請求することができない。
演習問題
次の設問に○か✕かで回答せよ
①不動産の時効取得者は、時効完成前にその所有権を取得し、時効完成後に移転登記を完了した者に対して、登記なくして所有権を対抗することができる。
→○ 所有権を有した後に、単に登記が遅れているだけの話。
②甲が時効取得した不動産を、時効完成後に乙が原所有者から譲渡を受けて所有権移転登記をしたときに、乙が甲が多年にわたってその不動産を占有していることを知っており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するときは、乙は背信的悪意者である。
③AがBの所有する甲土地の占有を継続し、時効取得が完成した後にBが死亡し、Bの相続人であるCが甲土地を単独で相続してその旨の登記がされたときは、Aは時効取得を援用してもCに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
→✕ Cは第三者ではなくBを包括承継しているBと同じ立場にいる当事者である。したがって、Aは登記なくしてBに時効取得を対抗できる。
④取得時効の援用によって不動産の所有権を取得してその登記を有する者は時効完成後に設定された抵当権に対抗するために設定登記のときを起算時とする再度の取得時効の援用をすることができない。
→○ すでに時効取得して自らの所有となった不動産を、再度時効取得するということはあり得ない。
⑤乙は甲から土地を買い受けて引き渡しを受けたが未登記だった。その後、丙が甲からその土地を二重で譲り受け、その旨の登記をした。その後、その土地の占有を継続した乙は丙に対してその登記の時を起算点とする時効取得を主張することができる。
→✕ 乙が当該土地を引き渡しされた時より時効取得を主張することができる。丙の登記の時ではない。
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