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刑法#9 実行行為に関する判例

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実行の着手


→物色のために金品がおいてある場所に近づくのは窃盗の実行の着手となる。
※タンスに近づく、手提げ金庫に近づく、レジに近づく、スリのためにポケットに手を入れるなど
→スリなどをするために、財布があるかどうかを他人のポケットにふれる、いわゆるアタリ行為は窃盗の実行の着手ではない。
※いわば窃盗の予備行為ともいえるが、そんな構成要件はない。
→強制性交のために強引に被害者をダンプカーに連れ込む行為は、強制性交の実行の着手である。
※ただし、強制性交の目的を内心に秘めていても、家に送るなどの声かけにより、対象者を車中に入れる行為は実行の着手とは言えない。
→毒要り飲食物を相手に送って殺害しようとした場合、相手がそれを受領したのが実行の着手となる。宅配業者に預けただけでは実行の着手ではない。
→自殺に見せかけ保険金を詐取しようとして、被害者に暴行や脅迫により畏怖させて自殺を命じた場合、そのようなことは殺人の実行の着手となる。

窃盗罪の間接正犯


→他人の所有物を自己の物と偽って第三者である業者に買い取りのための引取をさせたことは、窃盗の間接正犯となる。

不作為による殺人 H.17.7.1
シャクティ治療なる独自療法の信奉者である被告人が、病院に入院している父をホテルに移し、当該療法を受けさせた。その際、通常の医療が受けられないことによる未必の故意があった。
→被告人には治るかどうかわからない療法のために通常の医療を受けられない状態にしているため、通常の医療を受けさせる作為義務があった。そのため、不作為による殺人が構成された。

不作為による放火 S33.9.9
自己の過失により机に引火して燃焼しはじめているのを昼寝から覚めて気がついたが、このままでは建物が燃えてしまうことを認識しながら何をすることもなく逃走した。
→この場合、条理にもとづき、先行行為に対して適切に処置をする作為義務があるとされる。したがって不作為による放火の責任をおう。

不能犯


不能犯はその行為に対する結果が絶対的に起きないことを要する。起きる可能性がある場合は相対不能であり、不能犯は成立しない。
※硫黄を食品にまぜようとした
→硫黄では絶対的に殺人はできないため、傷害罪。
※一般的に致死に至らない程度の空気注射
→致死の結果がまったくないわけでないので相対不能。したがって、殺人未遂。

中止犯


着手未遂の場合はそのままやめれば中止未遂となるが、実行未遂の場合は結果が発生しているため、中止未遂となるためには真摯な行動により、結果発生の阻止に努めなければならない。
→中止犯は内部的要因により自己の意志で実行の中止や実行後の結果の発生を防止した場合に成立する。自己の意志とはやろうと思えばやれたけどやらなかったということ。
※実行しようとしたが、故郷の親を思い出して改心したり、相手に請われて中止することが典型である。また、窃盗しようとしたが別日の方が実入りがよさそうだと中止した場合もあてはまる。
→予備罪には中止未遂を観念できない。予備と未遂は別概念であり、基本的に予備罪とは挙動犯である。
→実行未遂において中止犯が成立するためには結果発生を防ぐための真摯な行動が必要であり、他人任せで自分は逃走した場合などには認められない。

【用語解説 着手未遂と実行未遂】
着手未遂
→実行の着手まではしたが犯罪を完了していない未遂。
実行未遂
→実行行為をおえたが犯罪が完了していない未遂。

共犯と中止犯


共謀して犯罪の実行の着手があった場合、一方が離脱しても犯罪が成立すれば共同正犯となる。
中止犯が成立するためにはもう一方の犯罪をやめさせなくてはならない。この場合、やめさせた方は中止未遂、やめさせられた方は障害未遂となる。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①ある者が友人の家にいき、無断でテーブルの上のティッシュペーパーで鼻をかんだ場合、一応構成要件に該当するため、窃盗罪が成立する。

→✕ 一応、ティッシュという財物を盗んだことにはなるが、違法の程度が低すぎるため違法性が阻却される。これは可罰的違法性の論理である。戦前に一厘程度のタバコを盗んだタバコ畑の耕作者に可罰的違法性が認められないとして違法性が阻却された判決がある。

②訴訟詐欺の実行着手は訴状を停止したときである。

→◯

③保険金詐欺の目的で家屋を放火したり船舶を転覆や沈没させた場合には、まだ保険会社に保険金支払の請求をしていなくても、詐欺罪の実行の着手が認められる。

→✕ 保険金を請求をした時に実行の着手が認められる。

④為替手形を偽造、行使して割引名下に現金を詐取しようとした場合、相手方に嘘を言って偽造手形の割引を承諾させたとしても、まだ偽造手形を相手方に示すなどをして行使していなければ詐欺罪の実行の着手は認められない。

→✕ 偽造手形の割引の承諾をさせるための嘘は詐欺罪における欺く行為に該当する。

⑤ブロック塀で囲まれ、警備員により警備された敷地内にある倉庫に侵入し、中のタイヤ二本を倉庫外に搬出したところで敷地内で当該警備員に発見された場合、窃盗罪が成立する。

→✕ 警備員により警備された敷地内であればまだタイヤの占有を自己に移転したとは言えない。

⑥殺人の予備を行った後にその実行に着手したときら殺人罪(既遂や未遂)が成立し、殺人予備罪は成立しない。

→◯ 法条競合である。

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