刑法#13 正当行為
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正当行為
「法令又は正当な業務による行為は罰しない」
→法令行為
死刑執行人の行為や私人の現行犯逮捕など、本来構成要件に該当する場合も、法令行為として違法性が阻却される場合がある。
→正当業務行為
医師による手術
※ただし、事前に患者に説明し、了承をもらうことを要する。また、緊急対応は緊急避難として違法性が阻却される余地がある(本来は傷害罪の構成要件を満たすので)。
ボクシングの競技
※ルール内なら暴行や障害の違法性が阻却されるが、蹴り出す、武器をもつなど、ルールを逸脱すると違法性が阻却されない。
【コラム エホバの証人輸血拒否事件】
宗教上の事由により、あらかじめ輸血を拒否する意思表示をしていたにも関わらず、医師が輸血をして治療行為をした。
→輸血を拒否する、自己決定権は人格権の一部として肯定される。
被害者の同意
住居侵入
→正当な理由に承諾が入るため、犯罪不成立。ただし、実は強盗目的など、隠していた目的がわかれば被害者がそうしないだろうと推知できる場合はその限りではない。
→行為の時に、被害者がそうするだろうと予見できる場合は違法性が阻却される。※推定的承諾
国家的法益
※偽証罪、虚偽告訴罪、公務執行妨害罪、封印破棄罪など
→このような国家的法益を保護法益とする犯罪は、国家作用の確実性や信頼を担保することを目的とするため、被害者が承諾をしても違法性が阻却されない。
同意殺人罪
→殺人罪とは別の犯罪類型である。
→窃盗や横領につき、同意があることにより犯罪成立はありえない。
傷害罪
同意のある障害につき、違法性が阻却されるには社会的な相当性を有するというのが判例である。
→やくざのゆびづめ
相当性を欠く
→保険金詐取のため故意に事故を起こして相手に傷害
相当性を欠く S55.11.13
承諾の態様
13歳未満との性交
→合意があっても強制性交等罪
意思無能力者の承諾
→無効
事後の承諾
→既遂であるため無効
推定的承諾
→行為の時に被害者が承諾するであると推定できる場合は違法性が阻却される。
演習問題
次の設問に◯か✕かで回答せよ。
①甲は乙の承諾により、甲を犯人とする虚偽の告訴をした場合、虚偽告訴罪につき違法性が阻却される。
→✕ 被害者の承諾により違法性が阻却されるのは個人的法益侵害に関する犯罪のみである。虚偽告訴罪の保護する法益は国家的法益(司法権や裁判の適切な運営)である。
②同意殺人同様に、同意のある傷害罪も違法性が阻却されることはない。
→◯ 同意殺人という犯罪類型は刑法条文にはあるが、同意障害という犯罪類型はない。したがって、被害者の承諾があれば違法性が阻却される余地がある。ただし、社会的に相当であることを要する。
③ある者は強盗目的で、対象の家へと赴き、こんばんは、と言った。家人は、お入り、と言った。ある者は家人の住居に入った場合、住居侵入罪が成立する。
→◯ 家人が目的を知っていれば住居に招き入れることはなく、真意に基づかない承諾であるため。
④ある者は友人の家に遊びに行った。たまたま友人が不在であったため、部屋の鍵が空いていて何度も訪ねたことのあった場所なので、部屋の中で友人の帰りを待った。住居侵入罪となる。
→✕ 推定的承諾のため、構成要件に該当しない。
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