刑法#16 共同正犯①
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共犯
二人以上が伴って犯罪をすること。
→必要的共犯
賄賂罪など、二人以上いなければ犯罪類型を満たさないもの。例えば、賄賂罪は贈賄する者と収賄する者がいて成立する。他には騒乱罪がある。
※賄賂罪は対向罪、騒乱罪は多衆罪ともいう。
→任意的共犯
単独犯として予定されている犯罪を複数人で行うこと
単独犯
一人で販売をすること。
共同正犯
正犯とは、犯罪の実行行為をすることである。互いを利用しあって犯罪の実行行為をするのが共同正犯である。
→一部実行全部責任の法理
たとえば、一方が被害者を押さえつけ、もう一方が殺害を実行すれば、二人とも共同正犯として殺人罪の構成要件を満たす。
→共同正犯は
①共同実行の意思
②共同実行の事実
が要件である。
近代法の原則論としては、自己の行いにしか責任は追及されないからである。
なお、暗黙の了解やある人物を間接的に介した場合でも①②を満たしうる。
自首
→事件が捜査機関に発覚していない、又は犯人がはっきりしていない段階で、犯人が警察に赴き、犯罪を認めること。
※捜査機関がピンときてあたりをつけたら自首とはならない。
首服
→親告罪を犯した場合で、告訴することができる者に犯罪の事実を告げ、措置をゆだねること。
※親告罪とは被害者などが告訴しなければ公訴できない犯罪
自首や首服をした者は刑を減軽することなできる。必要的減軽である。また、免除はできない。なお、親族を通じて警察に犯罪事実を伝えるなども自首として認められる。
【コラム 自首の方式】
自首の方式は決まっていないため、自ら警察すなわち捜査機関に赴いて犯罪事実を告げることもできるし、他人すなわち友人や親族を介して伝達することもできる。なお、予備罪や準備罪にも自首の適用がある。
共同正犯と共謀共同正犯
→前者は実行行為の一部を共犯者が行っている。
※AがとりおさえBが殴る、など。もちろん共同実行の意思、事実があれば、一部実行全部責任で両者とも暴行の共同正犯となる。
→後者は共犯者が犯罪の実行行為をしていない。つまり現場におらず、共謀だけしている。
※Aが見張りをしていて、Bがその間に犯罪を行うなど。
共謀からの離脱
①犯罪実行行為前
→共犯者が犯罪を実行する前に離脱の意思表示をして、共犯者が了承すること。
→ただし、首謀者が離脱する場合は完全に犯罪共謀がなくなる程度まで周知徹底を要する。
②犯罪実行後
→首謀者でなくても犯罪の遂行の恐れを消滅させなければ離脱が認められない。
結果的加重犯
→ある犯罪の故意しかないとしても結果により罪刑が重くなること。
→たとえば、暴行の故意しかなくても結果により、傷害罪、傷害致死となる。
→また、強盗の故意しかなくても結果により強盗致傷、強盗致死となる。最初から傷害や殺害の故意があれば強盗傷人、強盗殺人となる。
財産犯としての重なり合い
Case.1
AとBが共謀してある住居に侵入して窃盗を試みた。Aが窃盗行為をしている時にBは家人を脅迫し盗みを行った。
→窃盗については共謀があるが、強盗まではない。したがって、Bは強盗罪であるがAは財産犯として重なりあう部分で罪責をおう。この場合は窃盗罪となる。
Case.2
AとBが傷害を共謀した。しかし、Bは対象者の殺害を胸に秘めていた。Aが見張りをしてBが実行役で対象者を殺害した。
→Bは殺人罪であるが、Aは傷害の結果的加重で傷害致死の共同正犯となる。
Case.3
AとBは殺人を共謀した。実行役Bは対象者を誤って殺害した。
→Bは殺人の故意をもって人を殺めたため、殺人罪の構成要件に該当する。Aも法定符合説にたち、殺人の共同正犯となる。
同時犯
共謀や意思の疎通がない場合においてAとBがCを殺そうとして拳銃の引き金を引いた。Cは死亡した。
→Aの弾はあたり、Bはそれた場合
Aは殺人罪、Bは殺人未遂
→どちらの弾が被弾したかわからない。
疑わしきは被告人の利益として、両人とも殺人未遂
同時傷害の特例
同時犯であり、どちらにより被害が生じたかわからない場合は、疑わしきは被告人の利益となるのが原則である。しかし、刑法204条の規定により、二人以上で暴行を行い、傷害に至った場合で、傷害の軽重やどの加害者の行為により被害を受けたかわからない場合は共犯の例によることになる。
→すなわち、通常は検察側が罪責を証明するが、被告側が自己の行為により生じたか結果でないことを立証しなければ、共同正犯となることになる。
過失の共同正犯
→過失犯に共同正犯は成立するかという論点だが、判例は肯定している。ただ、共謀や実行肯定の意思の疎通は本来故意犯特有のものであり、過失犯にあてはまらないという意見もある。
→例えば酒屋を経営しているABが、危険物メタノールを仕入れ、検査や確認をせずに販売した。この場合に過失の共同正犯を認めている。
演習問題
次の設問に◯か✕かで回答せよ。
①甲と乙は丙を殺害する計画をした。乙は丙の体をおさえつけ、甲は丙をナイフで刺殺した。
この場合、甲は殺人既遂となるが、乙はその限りではない。
→✕ 甲と乙は共同正犯となる。一部実行全部責任の法理により乙も殺人罪の既遂となる。
②甲は乙が留守宅に盗みに入ろうとしていることを知り、乙が現金を盗み出している間に乙が知らないまま外で見張りをしていた。この場合甲には窃盗の共同正犯が成立する。
→✕ 共同実行の意思が認められないため、片面的従犯となる。
③ある作家は特定人の名誉を毀損する事実を文章にし、新聞社に投稿した。新聞社の編集人はその投稿文が特定人の名誉を毀損することを認識しながら、新聞紙上に掲載した。作家と編集者には名誉毀損の共同正犯が成立する。
→◯ 編集者には共同実行の意思がある。
③犯罪事実または犯人が誰であるか、わからない時点で犯人が自首をすれば刑を減軽することができる。
→◯ 任意的に減軽することができる。なお、自首の方式に特別の定めはないため、本人が警察に出頭しなくても親族を介しての犯罪事実の申告も自首となる。
④親告罪を犯した者が、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも自首をしたものと同様に刑を減軽することができる。
→◯ なお、このようなケースを首服という。
⑤自首の規定は未遂罪及び予備罪についても規定がある。
→◯
⑥窃盗における見張りなど、直接窃盗に関わりがない行為でも、窃盗の共同謀議があれば見張りにも共同正犯が成立する。
→◯ 共謀共同正犯の論点である。
⑦数人が順次に連絡しあうことによって共通した犯罪意思を形成する形態の共謀については、共謀共同正犯の理論は適用されない。
→✕ 意思の連絡があれば共謀共同正犯が成立する。
⑧甲が丙を殺害しようとし、また、これと意思の連絡のない乙が丙を殺害しようとし、たまたま同時に発砲した場合、丙が死亡してどちらの弾が命中したか不明の場合、甲と丙の罪責は殺人未遂罪となる。
→◯ 疑わしきは被告人の利益となる。
【コラム 同時傷害の特例】
二人以上が暴行を加えて人を傷害した場合、それぞれの暴行による傷害の軽重がわからず、傷害を生じさせた者を特定できない場合は暴行者はすべて傷害罪となる。
→犯人が傷害罪でなく暴行罪を主張する場合は犯人な側に立証責任がある。
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