刑法#47 犯人蔵匿罪・証拠隠滅罪・偽証罪・虚偽告訴罪
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犯人蔵匿罪(隠避罪)
→保護法益は国家の刑事司法作用
→罰金以上の刑にあたる罪を犯した者や拘禁中逃走した者をかくまったり逃がしたり(隠避罪)すると成立する。※罰金刑以上の犯罪であることを知らない場合や、嫌疑がかけられている場合でも成立する。
→なお、犯人蔵匿についても、犯人自身が身を隠すことは犯罪ではない。しかし、犯人が他人を教唆した場合は教唆犯として成立する。
犯人隠避罪
→犯人を逃がした場合(罰金刑以上)に成立する。
→抽象的危険犯であり、真犯人に頼まれて警察に出頭したが、それを警察が信じなかったような場合でも成立する。
→捜査段階で隠避しても成立する。
→真犯人逮捕後の身代わり出頭であっても成立する。
証拠隠滅罪
→他人の刑事事件に関する証拠を隠滅した場合に成立する犯罪で、国家の刑事司法作用が保護法益である。
→捜査段階においても成立する。
→物的証拠だけでなく人的証拠においても成立する。
→なお、民事事件や懲戒事件に関する証拠の隠滅は本罪に該当しない。
【コラム 親族相盗例と刑法105条】
窃盗など一定の個人的法益に関する罪は一定の親族関係(配偶者、同居の親族、直系血族)にといては、必要的に刑は免除される。これは法律は家庭に入らずが原則だからである。しかし、保護法益が国家の刑事司法作用であればそうとはいかない。ただ、親族の情も考慮して、105条において任意的に刑を減免できるようにしている。
偽証罪
→国家の審判作用の安全が保護法益
→その主体は法律により宣誓した証人に限られる身分犯である。よって、民事事件の原告として宣誓した場合などは除かれる。
→虚偽の陳述とは、自己の記憶に反する証言すること(主観説)が判例、通説である。主観説の根拠としては裁判官の自由心証を重視することがあげられる。
→偽証罪が成立するのは陳述が終わるまでであり、陳述中に訂正すれば罪には問われない(未遂罪の規定がない)。
→しかし、既遂となった後においてその裁判が確定する、または懲戒処分が行われる前に自白した場合は任意的に刑を減免できる。
※必ずしも裁判所に直接自白する必要はない。
【コラム 主観説と客観説】
偽証罪は法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をした場合に成立するが、判例および通説である主観説とそれに対立する客観説が学説上の議論としてある。
前者によれば証人が自己の記憶に合致する事実を陳述すればそれが客観的事実に反していて、証人が事実ではないと思うものであっても偽証罪は成立しない帰結となる。
これに対して後者にたつと客観的事実に反している陳述にはなるが、証人が事実だと思う陳述をした場合には故意がないので偽証罪は成立しないし、そもそも客観的事実に合致する陳述をした場合にはそれが自己の記憶に反するもので、証人が真実でないと思うものであっても、虚偽の陳述にら当たらないので偽証罪は成立しないことになる。
虚偽告訴罪
→人に刑事罰または懲戒処分を受けさせる目的で虚偽の告訴や告発すること。その保護法益は国家の審判作用と被告訴者の私生活の平穏である。
※被告訴者の承諾があっても成立する。
※受理された段階で既遂となる。
→なお複数の虚偽告訴があればその分罪数としてカウントされるが刑は観念的競合となる。
→申告内容が虚偽であると信じて申告しても申告内容が客観的に真実であれば虚偽告訴罪は成立しない。この犯罪は主観説に立脚しない。
演習問題
次の設問に◯か✕かで回答せよ。
①裁判官が交際を求める意図で、自己が担当する事件の女性被告人を、夜間、被害賠償の件で会いたいとして、電話で喫茶店に呼び出した。この場合、公務員職権濫用罪が成立する。
→◯ 職権を濫用して女性に義務のないことを行わせている。
②犯人が逮捕勾留された後に被告人が他の者を教唆して身代わり犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせる行為は犯人隠避教唆罪を構成する。
→◯ 犯人隠避罪は犯人以外の他人による行為であることが要件ではあるが、犯人本人につき、教唆罪が成立することはある。
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