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民法#26 代理⑥

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資格融合説


→無権代理人の地位と本人の地位が融合して、本人がした行為と同じとなる。当然に有効となり、相手方も取り消すことができない。

資格併存説


→無権代理人の地位と本人の地位が併存する。つまりは、本人として追認や追認拒絶もできれば、無権代理人として責任追及を受ける立場でもある。無権代理行為は不確定無効であり、相手方が催告や取消をすることにより、有効無効が確定的になる。

Case.1 S40.6.18
無権代理人が本人の土地を相手方と売買契約した。その後に追認や追認拒絶をせず本人が死亡して無権代理人が単独相続した。
→資格融合説をとり、代理行為は当然に有効となる。無権代理行為は本人がしたのと同一となる。
→禁反言もしくは信義則のため、無権代理人は追認拒絶することができない。

Case.2 H5.1.21
無権代理人が本人の土地を相手方と売買契約した。その後に本人が追認又は追認拒絶しないで死亡した場合、他の相続人と無権代理人が共同相続した。※共同相続人はこの二人とする。
→判例は資格併存説をとり、すなわち、当然に有効とはならない。
→①共同相続人が追認する場合は無権代理人は信義則より、拒絶できない。
→②共同相続人が追認拒絶する場合は追認権の不可分のため、代理行為は有効とはならない。ただし、相手方は要件を満たせば、無権代理人に責任追及できる。
※まったく関係のない共同相続人が不利益を被らないよう、共有しないように判断されているのがポイント

【復習 無権代理人の責任追及】
以下の要件が必要であり、無過失責任である。したがって、表見代理よりも立証が容易である。
①本人が追認しない
②代理権がない
③相手方の善意無過失
④無権代理人が制限行為能力者ではない
なお、相手方が表見代理を主張するか、無権代理人に責任追及するかは自由に選択できる。無権代理人が、表見代理から先に追及するよう抗弁することはできない。

Case.3 S49.9.4
無権代理人が相手方と土地の売買契約をした。その後、無権代理人が死亡して本人が単独相続した。
→判例は資格併存説をとる。
→すなわち、追認拒絶をしても信義則には反しない。
→しかし、同時に無権代理人の地位も引き継ぐため、損害賠償請求は免れない。

類似の場合


Bに債権を有するAは、Bとの間でB名義の土地につき、代物弁済の予約をしたが、一向に弁済しないため、予約完結権を行使した。しかし、当該土地はBの子Cが真の所有者であり、Cがこのことにつき知らなかった場合、CがBを相続した場合も土地の引き渡しを拒むことができる。

Case.4 H10.7.17
無権代理人が本人の土地を相手方と売買契約した。本人は追認拒絶して死亡した後に無権代理人が本人を単独相続した。
→追認拒絶が確定したものを相続しているため、代理行為は無効である。

Case.5 S63.3.1
①無権代理人が無権代理行為で相手方と土地の売買契約をした。
②無権代理人が死亡して本人である父と、母が相続した。
③追認や追認拒絶をしないまま本人である父も死亡した
④父を単独相続した母は無権代理行為を追認拒絶できるか。
→②で父は本人と無権代理人の資格が併存した状態で、母は包括承継により、無権代理人と同じ立場である。
→③追認や追認拒絶をしないまま死亡したため④それを相続する無権代理人の地位にある母はCase.1と同じ立場であるといえる。
→したがって、無権代理行為は当然に有効となるので、追認拒絶はできない。

【無権代理人と法定代理】
家裁の審判を受けていない者(事実上の後見人)が法定代理人がするべき無権代理をした後に、正当に審判された場合、無権代理行為を取り消すことは許されない。信義則のためである。S47.2.18

Case.6 S44.12.18
代理権のない妻が夫の土地を売却した。この場合に日常家事債務が適用されたり、適用される場合は権限外の表見代理が適用されるか。
→日常家事債務とは夫婦が日常の生活に係る債務は連帯債務となる法定代理である。761条
→日常家事債務は法定代理であるため、110条の基本代理権となりうる。
→110条については類推適用している。正当な理由を善意無過失ではなく、日常家事債務だと信じるにつき正当な理由であると読み替えている。
→さすがに不動産の売却が日常家事債務だとは思えないので、110条は類推適用されない。

【復習 110条と基本代理権】
 判例より、法定代理権も基本代理権となる。そもそも表見代理は代理権授与に係る本人の帰責性が要件であるが、判例は帰責性がなくとも権限外の表見代理は成立するとしている。
 なお、公法上の行為は基本代理権とならない(印鑑証明下付申請など)が公法上かつ私法上の行為はなりうる(登記など)。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①無権代理人が本人を他の相続人とともに相続したときは、無権代理を追認する権利はその性質上相続人全員に不可分に帰属する。

→◯

②事実上の後見人が無権代理行為を行った場合、その後に正式に後見人となった場合、追認を拒絶できる。

→✕ 信義則に反するため、取り消すことができないというのが判旨である。

③夫婦は日常家事にかかる債務を互いに代理するが、それを逸脱して代理行為をした場合はそれを信じるにつき正当な事由がある場合に第三者の保護がなされる。

→◯ 権限外の行為の表見代理の規定の類推適用となっている。

④無権代理人の損害賠償責任は不法行為ではなく法が特別に認めた無過失責任である。

→◯ したがって、相手方は無権代理人の故意や過失を立証する必要はない。

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