江國香織さんの新刊、感想
江國香織さんの新刊『シェニール織とか黄肉のメロンとか』を読む。
細やかに登場人物の日常が描写されていて、やぱっり好きだ。
母の薫と静かに暮らす作家の民子、イギリスでの仕事を辞めて日本に帰国して、民子の家にしばらく居候させてもらう自由奔放な理枝、専業主婦の早希の3人が物語の中心を担う。
3人は学生時代からの友達。(今は、50代の女の人たち)
「シェニール織」や「カンターロープメロン」という言葉は、彼女たちが学生時代所属していた読書サークルで読んだ本に出てきた。
シェニール織は、白か生成りの繊細な織物だと思っていて、
カンターロープメロンは、まくわうりのようなつるんとしたメロンだと想像していた。黄色い果肉の・・・
ところが30数年後に実物を知って、憤慨してしまうという・・・
「あたしたち、誤解だらけの人生だわね」
その言葉どおり、あの頃描いていた未来とは、思いもよらなかった人生をそれぞれが歩んでいる。仕事にしても、男にしても、日常も。
それでも3人集まれば、学生時代に戻ったかのような時間が流れる・・・
物語にはスカートをはく男子高校生や、競艇が出てきたりして、自分の日常に出てきたら、近寄らないんだろうけれど、江國さんの物語の中のそれは、むしろ好ましく思えた対象だ。いちばん好きな登場人物でさえあった。(朔とあいり)
わたしの日常も江國さんが描写してくださったら、もっと素敵な物語に見えるのだろうか?
そう思うと、煩雑な日常のひとこまも、なんだか鮮やかに輪郭を帯びてくるような気がする。
江國香織さんと同じ時代に生きていて、新刊が読めてよかったな、と思う朝でした。
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