夫婦別姓 制度導入の問題③ アンケート結果

・出典:「家族の法制に関する世論調査」(内閣府)https://survey.gov-online.go.jp/r03/r03-kazoku/2-2.html

NHKでの報道の通り、夫婦別姓制度を支持する国民性は多数派であるという話はよく聞く。

しかし、その調査結果なるものは、本当に国民の実態を忠実に反映し得たものなのであろうか?

内閣府が公表している意識調査の結果を実際に見てみると、その定説に疑義を挿みたくなるような項目が幾つか目に留まることも事実である。(上記リンク先参照、以下一部引用)

例えば、

「現在の制度である夫婦同姓制度を維持すること、選択的夫婦別姓制度を導入すること及び旧姓の通称使用についての法制度を設けることについて、どのように思うか」と、訪ねたところ、

「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」
と答えた者の割合が27.0%、

②「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」
と答えた者の割合が42.2%、

③「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」
と答えた者の割合が28.9%となっている。

……とのことである。

ここで、上記の②は、①の「現行の夫婦同姓制度維持」をあくまでベースにした上で、必要に応じて便宜を図るべく法を整えるべし、という主張なので、①の範疇内とも言える。

つまり、夫婦同姓を導入すべし、という主張は③のみなので、こちらの調査結果からは、夫婦別姓を支持している国民は3割にも満たないという結果しか見えてこない。これは、NHKが行ったものとは真逆と言ってもいいほどの調査結果である。

また、実際に姓を変えた人に、
「何らかの不便・不利益があると思うか」と尋ねたころ、

「何らかの不便・不利益があると思う」と答えた者の割合が52.1%

「何らの不便・不利益もないと思う」と答えた者の割合が47.5%

であるという。

実際に姓を変えた人の中で、不変・不利益があると実感している人は過半数に登るものの、実態としては、ほぼ拮抗しているという状態であることが判る。

更に、

「何らかの不便・不利益があると思う」と答えた者に、何らかの不便・不利益があると思うとの意見の中において、不便・不利益になると思うものを具体的に尋ねたところ、

「名字・姓を変更した側のみに名義変更の負担があるなど、日常生活上の不便・不利益がある」を挙げた者の割合が83.1%

「仕事の実績が引き継がれないなど、職業生活上の不便・不利益がある」(34.5%)

「実家の名字・姓を残せなくなることなどから、婚姻の妨げになる」(27.9%)

「自己喪失感が生じたり、プライバシーが公になったりすることにより心理的負担が生ずる」(13.5%)

の順となっている。(複数回答)

また、

「何らかの不便・不利益があると思う」と答えた者に、

婚姻をして名字・姓を変えても、不便・不利益がなくなるようにするため、婚姻前の名字・姓を通称として使えばよいという考え方があるが、このような考え方について、どのように思うか聞いたところ、

「通称を使うことができれば、不便・不利益がなくなると思う」と答えた者の割合が37.1%、

「通称を使うことができても、それだけでは、対処しきれない不便・不利益があると思う」と答えた者の割合が59.3%となっている。

……この結果を素直に見ると、通称・旧姓使用が認められても、姓を揃える為に姓を変えることには、変える側には、依然として負担・不利益が少なからず存在する現実があるということであろう。

実際、苗字を変える為に手続き上の負担が生じることは事実であるし、知人や関係者に周知する手間、そしてそれらを夫婦の内の一方だけが負わなくてはならないという不公平さは確かに存在している。

ただし、

婚姻によって、自分の名字・姓が相手の名字・姓に変わったとした場合、どのような感じを持つと思うか聞いたところ、

①「名字・姓が変わったことで、新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」
を挙げた者の割合が54.1%

②「相手と一体となったような喜びを感じると思う」(39.7%)

③「名字・姓が変わったことに違和感を持つと思う」(25.6%)

④「何も感じないと思う」と答えた者の割合が11.1%となっている。(複数回答)

とのことで、
複数回答が認められているとは言え、上位の割合である①②は、共に肯定的な回答で、ネガティブな回答である③を遥かに上回っている。

つまりまとめると、「改姓する側に不利益、不便、負担、不公平さはあるものの、夫婦同姓の為の改姓には、概ね肯定的な意義があると感じている人が少なくない」事実が調査結果から見てとれる。

なお、

A「夫婦・親子の名字・姓が違うことによる、夫婦を中心とする家族の一体感・きずなへの影響の有無について、どのように思うか」聞いたところ、

「家族の一体感・きずなが弱まると思う」と答えた者の割合が37.8%、

「家族の一体感・きずなには影響がないと思う」と答えた者の割合が61.6%

ということなので、仮に家族の中に姓が異なる者が居たとしても、ネガティブな心理的影響があると考えている人は多くはないということは言えそうである。

だがその一方で、

B「夫婦の名字・姓が違うことによる、夫婦の間の子どもへの影響の有無について、どのように思うか」聞いたところ、

「子どもにとって好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69.0%、

「子どもに影響はないと思う」と答えた者の割合が30.3%

と、子どもに悪影響を及ぼすと考えている人が7割にも登るという結果が出ている。

上記A、Bの質問で、一見すると矛盾とも言える結果が出るのは何故であろあうか?

思うにAは、心理的な影響を受ける主体が、自分もしくは大人であり、Bの主体は子どもである、という違いがある。

Aの質問を、「あなたは、苗字が異なるパートナーや子どもを、それだけの理由で愛せなくなるか?」というように言い換えれば、恐らく大半の人が「ノー」と答える。

これに対して、Bの質問を「自分と子どもの苗字を違えるようにした場合、そのことに対してあなたの子どもはネガティブな思いを抱かないと断言出来るか?」と言い換えたとき、大抵の人はどう答えるであろうか。

「いや、わが子の立場になって考えてみれば、苗字を変えても問題ないとは決して言えない」と、多くの人が答えるのではないか?

その違いが上記のアンケート結果となって出ているということなのであろう。

いずれにしても、特に最後に取り上げた回答結果である、親子と苗字を変えることで子どもに悪影響を与えると考えている人が7割も居ることは、夫婦別姓制度を導入するに際して重要事項であるはずである。

にもかかわらず、NHKなどの「夫婦別姓制度を支持する人が多数に登る」という報道で、上記のような人々の声が拾われることは、決してない。

これらのことが意図的に行われていたとしたら、事態は深刻である。

即ち行政側に、国民の意見にかかわらず制度導入を強引に進めようとする勢力が居た場合、その思惑通り制度導入が実現した曉には、ただでさえ手続きに負担が伴う改姓の為のハードルが、更に引き上げられる。それによって、夫婦同姓を希望する人達のモチベーションは著しく低下することが容易に想像出来る。そして、「夫婦が結婚後も別姓を維持することは、国民の総意である」という、事態に見合わない既成事実だけが積み上げられることになる。

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