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怪談噺をひとつ

 (自分のそーゆー体験を文章にまとめるのに触発されて、ちょっと書きたくなっちゃいました)
 私、勘が良い自覚は大いにあるんですが、いわゆる幽霊が見えるだのの霊感は全くありません。が、霊感の強い人が近くにいると影響で~っていうことが実は一度だけありまして・・・。

 社会人になってもずっと仲良くしている、中学来からの友人MちゃんとYちゃんとでお泊り会をした時のエピソードです。

 両親が旅行でいなくて家に一人だけになっちゃうし泊りに来ない?とMちゃんがある日誘ってくれました。高校生の頃から数回そういうお泊りはしていて、都合のついた私とYちゃんでお邪魔することになりました。
 じゃあこの日で!と予定を立てていましたが「ごめーん私の勘違いで一週間違えてたから両親いるけど、それでもいいなら」とMちゃん。ご迷惑でなければ久々に遊びたいから、という理由でそのまま続行。

 Mちゃんの家は、二世帯住宅タイプと言ったらいいのでしょうか。もう今はいらっしゃらない祖父母さま方が使用していらした部分と、現在Mちゃん親子が使用している母屋とが繋がった広い造り。
 廊下で繋がっていますが離れがあるかんじです。
 一つ屋根の下に台所は二つありまして、私達はその離れを貸し切らせてもらったような状態。
 確かあの日はMちゃんとYちゃんの仕事終わりに合流して食材を買いに行き、鍋を作ったんだったかな。仕事の話に始まり鍋をつつきながら延々と女子会トークをし、わいわい片付けをし、交替でお風呂も入り。だいぶ夜更かしをしていい加減、眠気も限界に。
 Mちゃんは自室のベットに戻るのではなく、その離れのおばあさまが使っていたというベットで。私とYちゃんはお布団を並べて眠ることに。
 お布団を敷いた側には「南無阿弥陀仏」と手書きされた掛け軸がありました。

 限界まで喋り倒していたので、三人とも割と早く寝入ったように覚えています。
 が、廊下に人の気配を感じてふと深夜に目を覚ましました。
 その廊下の先にトイレがありますので、男の人の気配を感じた私はぼんやり『あーそっか、お父さまがお手洗いに来られたんだ』と思いました。予定では私達三人だけのところ、ご両親の旅行はまだ来週だったのでこの屋根の下にいらっしゃいますからね。
 で、寝返りを打って廊下側に背を向けて再びまどろもうとしたんですが。
 お父さまがこちらの部屋の障子を開いたんです。そして「あ!人が居る!」と驚いたような気配。
 不思議ですが、背を向けていたし終始目をつぶっていたんですが、手に取る用に様子を肌で感じていました。
 『娘の友達が泊まりに来てることうっかり忘れてあったのかな』と寝たふりを私は続けていたんですが「おかしいな~」といった様子でそのままこちらに入って来るではないですか。
 そして私とYちゃんの布団の間を通って足元側にあるあの掛け軸の前まで進むと、何故か、そのままそこでお経を唱え始めたんです!

 『は?いやいやいや。ナイナイ。あー、アレだ。私が寝る前にへ~こんな掛け軸置いてあるって思ったからこんな変な夢見るんだわ~。うん、寝よ』
 お経をBGMに私はそう考え、気にせず眠りにつきました。

 翌朝。
 引き続き三人だけで離れで朝食を済ませ、それから私とYちゃんは帰宅することに。
 私はMちゃんに不気味な思いや嫌な思いもさせたくないので昨夜の夢の話はしませんでした。
 Yちゃんも特段変わった様子もありません。私が自宅まで車で送ったのですが、その間も普通に「お泊り会楽しかったねー。次はどこで遊ぼうか」なんて喋ってたと思います。

 友達の家に泊まった夜に変な夢見た。
 私の中ではそう結論付けていました。

 が、そうでもないとわかったのは、次にMちゃん達と飲み会で集まった時です。
 中学来の友人、実は私を含め五人組でフルメンバーです。その日の飲み会にはお泊り会に来れなかったKちゃんSちゃんもいて。なんでか流れでMちゃんが「そういえば、私のおじいちゃん『もーそろそろ死んでしまう。Mの花嫁姿を見れないまま死んでしまう』とかずーっと言いながら、めちゃ長生きしたからね~」という話を始め。
 福祉系の仕事をしている友達もいるので「あるあるだよね」みたいな笑い話をしていたんです。
 そしたら「でも亡くなる前には、信仰深くなってか夜の寝る前とかにお経とか唱えてたから、子供の頃はおじいちゃんの部屋の前を通ってトイレ行くの怖かったんだよね~。ホラ、この前三人で寝た部屋だけど」とMちゃん。
 私、鳥肌と寒気でゾクゾクしながら笑い返すしか出来ませんでしたよ。

 『あれって、Mちゃんのおじいさまだったわけねーっ!!』

 まさか、こんな楽しい飲み会の席で怪談話の確証を得ることになるとは・・・。
 しかし納得です。
 気配は間違いなく男性だったし。「誰か居る」とむこうが驚くのも当然ですよね、見知らぬ孫の友達が勝手に寝てるんだし。
 きっとご本人さんはいつも通り、掛け軸の前で極楽浄土のためお経を唱えに来ただけだったんですね。

 ゾクゾク鳥肌になりつつ、もう一つ気になるのが一緒に泊まったYちゃんの様子。
 実はYちゃんというのが、めちゃくちゃに霊感強い子なんです。怪談大好きな私にいつもとんでもないエピソードを聞かせてくれるガチの子。
 ”零感”の私が気付いてYちゃんが気付かないはずがない。
 でも、この場で聞けないっ!
 とりあえず、帰宅して自分の家族には「この前、夢だと思ってたのが本物の心霊体験だったぽくて、すごくない⁈」と大興奮で喋りまくりましたが・・・。

 そしてまたさらに後日。
 やっぱりいつもの5人組で出掛けることになり。
 仕事などの都合から、他二人とは午後からの合流。休みの私とYちゃん及びSちゃんとで一足先にランチしよ~となり。
 Mちゃんは幸いいないし、こんなチャンスはないぞ!と私はパスタランチを食べながらYちゃんに尋ねました。
「もう何ヵ月か前になったけど、Mちゃん家に泊まった日の夜、おじーさまの幽霊?が来たよね」
「えっ、りばるちゃん、気付いてたの?!」
 気付いてたの、と言われてまた私は鳥肌。
「いや夢かな~ってスグ寝たんだけどさ。この前の飲み会でMちゃんがおじーさまの話するから、ソレかー!!ってめちゃくちゃ驚いて」
「あ、寝れたんだ・・・」
 苦笑いするYちゃん。
 え、どゆこと?
 とりあえず私はこんな風に気付いたけど、余りにもオカシイから信じてなかったということを説明しました。そしたらYちゃんが答え合わせをしてくれたんですが・・・。
「んー、実はね、Mちゃんの家に到着して夕飯の準備してる時から、あ~これは来る気配だな~嫌だな~って思ってたの。でもお泊り楽しかったし、その気配も悪霊系の感じじゃなかったから大丈夫って自分に言い聞かせて」
 流石のYちゃんでした。まさかの到着時点で嫌な予感がしていたとは。
「夜中に入って来たし、唱えてたけどさ。私たちの布団の周りをぐるっぐるしつこく回って覗き込んでたから、私はあんまり寝れなかったんだよ」
「え、えぇー・・・、寝てよかった・・・ウン」
 温かいパスタを食べてるのに悪寒が止まらない私、苦笑いしか出来ない。
「Mちゃんの家ってお寺も近いし、なんの霊かもわからないし、言って二人に怖い思いさせるのもなってずっと黙ってたの。でも、飲み会の話で納得だったよね」
 Yちゃんはそのお寺の前を通って”憑れて帰った”エピソードもあったりしたな、とか思いながら私は話を聞いていました。
 で、いくらおじいさまの霊であろうが、めちゃくちゃ怖がりのMちゃんに聞かせるのはちょっとね・・・と。
 
 ええ実は、それから10年近く経つ気がするけど未だにMちゃんには言わずじまいなのです。それこそ墓場まで持って行ったほうがいいのか。近しい話題になった時に暴露していいものか。
 今更ながらに迷いますね。

 いかにも幽霊の登場するような心霊体験的なものは、後にも先にもこれだけ・・・と言いたいところですが、この文章をまとめるにあたり、神社での不思議体験とかを他にいくつか思い出しました。ので、またそれも後日語ろうかななんて思ってます。

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