愛の神秘と死の神秘

愛の神秘が死の神秘より大きいと言うなれば、なぜ我々は先立った死者に祈り、念じ、傍らにいる者を粗末に扱うのだろう。

死人に口なし。死人に花あり。生者は口を持って花を語れる。

念じたところで返されるのは風の音のみ。その風は神様の吐息だとでも言うのかね。傍らを一時も離れる貴方を愛さぬ訳にはいかない。その神秘を知った上で西日の差す頃、幾度となく死を想う。


そう、幾度となく死を想う。愛を持って死を知るなれど、丑三つ時にも眠れぬ夜に鉛のように押し掛かるのは、愛の不安か死の不安か。

貴方を愛そう、死ぬまで愛そう。

などと抜かしたお前に花をくれよう。いつの時代にも枯れては咲いてを繰り返す、その執念のように執拗に愛されようとする一輪の花をお前にくれてやろうではないか。

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